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第二話 エルフの里

「ユート、あれが里だよ」


 クリスが指をさす方向あったのは、超巨大な〈結界(シールド)〉に覆われた自然豊かな集落だった。

 里には、木造の家があちこちに建てられている。そして、里の中央には超巨大な大樹があった。


「ここがエルフの里か……結構いいな」


 長閑な田舎のような雰囲気が、最近疲れ気味だった俺の心を癒してくれる。老後の生活は是非ここに住みたいと思った。(俺に老後のくそもないと思うが……)

 そう思っていると、〈結界(シールド)〉の外にる剣を持ったエルフ二人が、こっちに駆け寄ってきた。そして、クリスの前で跪いた。


「「クリスティーナ第二王女様。ご無事で何よりです」」


「ええ、心配をかけましたね。申し訳ないです」


「いえ、謝るのは私たちの方です。私たちの油断が、あのような事件を起こしてしまったのです」


「いえ、あの時は私も油断してましたからね。しょうがないです。そして、この方、ユートさんが、私を助けてくださったのです」


「こ、この人族の子が……あ、ありがとうございます」


 二人は今度は俺に跪いた。何というか……気恥ずかしい。


「い、いえ、俺はやるべきことをやっただけです」


 俺は指で頬を掻きながら言った。


「ふふっ では、直ぐにでも家族と顔を合わせないと。きっと心配してるでしょう。特に父上は」


「はい。第二王女様がいなくなってからというもの、王はずっと部屋で祈りをささげております。食事も飲み物も口にされない為、そろそろ危ないです。我々の方でも、そろそろ強硬手段に出ようか話し合っていたところなのですが……」


「な、なんですって!? 早くいかないと! ユートさんもついて来てください。家族に紹介したいので」


「わ、分かった」


 俺は、クリスの父親が死にかけている事実に戸惑いつつも、クリスの後をついていった。


「それにしてもこの木でかいな……」


 中央にある大樹を眺めながら、そう呟いた。


「はい。あれは世界樹と言います。ハイエルフを生み出した木と言われており、私たちの間では神様のようなものですね」


「なるほどな……」


 冷静に頷きつつも、内心、「これが世界樹か。スゲー」と、興奮していた。


「それで、王族であるハイエルフは、世界樹のすぐ横に家を作っております」


 そう言いながら、クリスが指さした先には、貴族の屋敷の木製バージョンがあった。使われている木材も、そこらへんに生えているようなただの木ではなさそうだ。


「そうか。てかさ、ハイエルフって飲まず食わずだと何日生きれるんだ?」


 クリスが誘拐されてからの移動を考えると、明らかに、人間の生存限界である「水、三日間」と、「食べ物、三週間」を超えているように見える。


「そうですね……ここには力の源である世界樹があるので、二ヶ月は持つと思いますよ。まあ、あの父上のことですし、根性でさらに生きれそうですけどね」


「クリスの父何者だよ……」


 俺はクリスの父が親ばかであることを確信しつつも、ちょうど到着した屋敷の中に入った。

 屋敷に入ったところで、クリスは家族と再会した。


「あ、母上、姉上、兄上!」


 屋敷に入って、直ぐのところにいた美形の男女三人を前にして、クリスはそう叫んだ。


「よく帰ってきたね……」


「もう、二度と心配させないでね」


「ああ、もう連れていかれるんじゃないぞ」


 三人は目に涙をためながらそう言うと、クリスに抱き着いた。


「感動の再会だなぁ……」


 俺は感動の再会シーンを目の当たりにして、思わず一粒の涙を零した。


「ふふっ それでね。ここにいるユートさんが、私を助けてくださったの」


 クリスがそう言うと、三人は一斉に俺の方を向いた。だが、三人は俺の方を向いた瞬間、目を見開いた。


「あの、クリス。人族の子供が、あなたを連れ去るような強者から助け出せるのはおかしいと思わないのかしら?」


 母上と呼ばれていた女性は、俺のことを警戒しながら言った。


「ええ、確かにそう思うのも無理はありません。ただ、ユートさんは私の〈鑑定〉でもほとんど見ることが出来ませんでした。そして、僅かに見えたところだけでも、普通ではないと確信できるほどですよ」


 クリスがそう言うと、今度は兄上と呼ばれていた男性が口を開いた。


「じゃあ、それを見せてくれよ。俺はそれを見て、真か偽か決める」


 その言葉に、クリスは俺の方をチラリと見てきたので、俺は首を縦に振った。あまりステータスは見られたくないが、疑われているし、別にあれくらいなら見せても問題ないと思ったから、俺は見せることを許可した。


「では、許可が下りたので、見せますね」


 そう言うと、クリスは〈鑑定〉で俺のステータスを出した。

 そして、俺のステータスを見た三人は、目を見開いて、驚愕した。


「おお、マジで見えないんだな。そして種族が……なるほど、不老人族か。そんな種族、何万年と生きている俺でも分からないな」


「ええ。ただ、見た目通りの年齢ではないということはよくわかりました。それに、正確な強さについてはおじいさまに見てもらえばいいですしね」


「そうね。父上なら色々分かるでしょう。では、ユートさん。娘のクリスティーナを助けて下さり、ありがとうございます」


 そう言うと、三人は頭を下げた。


「まあ、気にしないでください。ところで、クリスの父親には会わなくていいんですか?」


 俺がそう尋ねた時、みんな氷漬けにされたかのように固まった。

 そして、その氷を最初に溶かしたのは、クリスの兄だった。


「やっば。父さん。あのままだと餓死するぞ。ハイエルフで一番最初に死ぬのが父さんなのは、流石にマズいだろ!」


 こうして、俺たちは猛スピードで、クリスの父親の元へ向かった。

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