第三十五話 バレた…だと
「さらわれた時、私は里の周辺で、二人の護衛と共に狩りをしていました。ただ、狩りを終え、弓を護衛に渡した瞬間、木々に隠れていた黒いローブの男たちに襲われました。そして、気が付いたら手足を縛られ、口を塞がれた状態で馬車に乗せられていました」
「……辛いのなら、無理に話さなくてもいいぞ」
俺は辛いことを思い出し、俯いているクリスを気にかけた。だが、クリスは首を横に振ると、「大丈夫です」と答えた。
「その後、私はいくつものアジトを転々としまし、数日前にあの場所に送られました。そして、あの場所であいつらは私の魔力と生命力を古代遺物で吸収しました」
「古代遺物?」
俺は聞きなれない言葉に首を傾げた。
「あ、はい。古代遺物というのは古代文明の遺跡から掘り起こされる特別な魔道具のことです。今では再現できないものもあるので、人族では基本的に貴族の家宝、国の国宝となっていると聞きました」
「まじかよ……」
流石は歴史ある犯罪組織だ。まさかそんな貴重なものを持っていたなんて……
(他にも貴重なものがありそうだし、アジトの中をあさっておけばよかったかな?)
だが、今頃は衛兵たちが捜索しているので、もう手を出すことは出来ない。この時。俺は心の底から後悔した。
「では、話を戻しましょう。それで、私から魔力と生命力を奪っていた理由はよく分からなかったのですけど、『我等が神の復活の為』と、呟いていましたね。これで、私からの話は以上です」
「なるほどな……」
神の涙の連中が言っていた”我等が神”とは一体何者なのだろうか……まあ、それを調査するぐらいなら、やつらを滅ぼした方が良いだろう。
「ん? てか魔力はまだしも生命力を吸収って……大丈夫なのか?」
生命力とは、名前から察するに人の命のことだろう。つまり、それを吸収されるということは、寿命を減らされているような気がするのだが……
「それについては大丈夫です。エルフならヤバかったのでしょうが、私はハイエルフですからね。貴方と同じように寿命はないのですよ」
「そうなのか……ん?」
今、クリスはなんて言った?俺には、貴方と同じように寿命はないと聞こえたんだが……
「クリスって〈鑑定〉を持っているのか?」
秘密を知られたことで、動揺した俺は、思わず威圧感を出しながら聞いてしまった。
「ひ……は、はい。そうです……す、すみません」
LV.130もある俺の威圧をまともにくらったクリスは涙目になって怯えてしまった。
「あ、すまない。ちょっと動揺してしまった」
「わ、私も……すみません。ただ、私の〈鑑定〉はLV.MAXなのですが、それでも見ることが出来たのは種族と、二つのスキル、三つの属性のみでした。なので、LVやステータスの値は見えていなかったので安心してください。あと、これが私のステータスです」
クリスは早口で謝ると、ステータスを見せてきた。
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名前 クリスティーナ・ワールレン ハイエルフ LV.61
体力 7100/7100
魔力 15900/15900
攻撃 5100
防護 6200
俊敏性 12100
スキル
・鑑定LV.MAX
・弓術LV.MAX
魔法
・水属性
・風属性
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「ほう……何かずいぶんと偏りのあるステータスだな」
魔力と俊敏性はかなり高くなっているが、他はかなり低くなっている。
「まあ、エルフも同じなのですが、私たちの種族はどうしてもこんな感じのステータスになってしまうの。あと、寿命の長い種族ほど、LVが上がるのが遅いのよ」
俺はここで、「クリスは今何歳なんだ?」と聞こうと思ったが、流石にレディーに年齢を聞くのはマナー違反だと思い、口をつぐんだ。
「それにしてもハイエルフに寿命がないなんて……不思議だな……」
「そう? 私からしてみればあなたの方が不思議な種族よ。不老人族だなんて聞いたこと無いわ」
「まあ、俺でもよく分からないな。ていうかさ。クリスが見た俺のスキルと魔法ってなんだ?」
「え~と……スキルが〈剣術〉と〈身体強化〉 魔法が火、水、風よ」
「ああ、分かった」
俺は闇属性がバレていないことに安堵した。一応、神様からは秘密にしとけと言われているので、ここでバレてしまったら、神様に何といわれるか分かったもんじゃない。
「ん? と言うかその言い方からだと、他にもスキルや魔法があるってことよね? でもそんなに持っている人は勇者ぐらいしか……も、もしかしてあなたは勇者様なのですか?」
俺の発言から、変な誤解をされてしまった。
「いや、俺は勇者ではない。と言うか、勇者と言う存在を知ったのが、一ヶ月ほど前だ」
「あ、そうなのですか……すみませんでした」
クリスは恥ずかしそうに頬を赤くすると、頭を下げた。
「いや、大丈夫だ。まあ、俺のステータスは誰にも言わないでくれ。頼むぞ」
「ええ、元よりそのつもりです」
「分かった。ありがとう。じゃ、俺は昼食を食べに行くか……ノア、行くよ」
「……分かった」
話しが長すぎて、ウトウトしていたノアと共に、俺は衛兵の詰所を出た。
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