昔あなたから貰った木苺。ぼくからもあなたへ・十七
ぼくがにりんとたてこうとせいから濡れ布巾や白湯などをもらっている間、ずっとおにゃもーらへ加護を与えていた、そら。おにゃもーらは何度か止めていたけど、止まらなかったんだ。うーん、と唸ったおにゃもーらは「そら、私はまだ人間でいたい」と言った。
ああそっか、加護を受けてから巨大になった話があるものね。あの大きさは亀の域を越えていたし……。けど、ぼく昨日荒れた川でかなり大きな甲羅見たよなぁ。じぃほど大きくはなかったと思うけれど、あれはどんな亀だったんだろう?
『おにゃもーらにんげん』
「それは良かった」
加護を止めたそらはおにゃもーらの周りを旋回。怪我の有無を調べているかのようだった。
「多重の加護のおかげで君は、過労から疲労になったようだねぇ。これだけかけねばならなかったなんて、かなり過労だったようだよ。長めの休養を勧めるよ。しゅゆはどうかな?怪我はないね。うん、疲労はあるね。今日と明日はしっかり休みなさい。二人とも、手を握るよ。先生の“力”を流すからね。ゆっくり息を吸って、吐いて」
しじょうの温かい“力”が体中を駆け巡り、ぽかぽか温かくなった。そこへ『しゅゆんんぱーかごんぱぱー』とそらが温かい加護をかけてくれたので、もうぽっかぽかだ。
「わあ、ありがとうそら。そらの“力”もあったかいね」
『そらあったかい』
そらはぼくのおでこにまた引っ付いた。ああ、さっきは慌ててて気付かなかったけど、見た目と違ってそらはふわふわあったかいんだね。
「はて?しゅゆ、何か食べたかい?君もだが」
しじょうは白い髭がふわりと生えた顎を撫でながらぼくとおにゃもーらの胃の辺りを診ている。
「ん?ああ、なんか木の実食べたよ。光るの」
「ほお」
「それがどうかしたの?」
「いや、もしかすると、らいあに良さそうかと思ってね」
「本当?しまったぁ、もらっておけば良かったぁ。あ、そら、さっきの木の実、一つもらえないかな?」
『あげるいいらいあきかない』
「え、あげるのは良いけど、らいあには効かないの?」
『らいあたべた』
「そうなんだ……って、そらとらいあ知り合いなの?」
『らいあわるいものなぎたおしたそらぶじ』
「へぇ、らいあに助けてもらったんだね」
しかもただ倒したんじゃなくて、薙ぎ倒したんだ。見たかったなぁ。
『らいあこない』
「ここへ?そこに居るから呼ぼうか?」
たてこうの斜め後ろに居るよ。元気に見えて良かったよ。
『らいあこないそらいくらいあこない』
「?」
仲が悪い?いや、らいあがそらを避けてるの?そんな感じしないよ?
「……向こうへ来てほしいのに、零輪の地区長が行かない、と言うことか?」
おにゃもーらは当たったらしい。そらがぶいんぶいん上下に飛行した。
『らいあくるいきるもどれない』
「あーそっか。らいあ、向こうで生きられるけど、戻れなくなるから行かないんだ」
ん?戻れなくなるの?なんで?
「そらと随分と仲良くなったようだな。特にそちらの御仁?」
らいあ、登場の仕方が悪役そのものだよ。
おにゃもーらが体を強張らせたのが分かる。
大丈夫だよ、おにゃもーら、ぼくが居る限りは守るよ。けどたぶん早く寝ちゃうから、後は頑張ってね。
「らいあ、体調大丈夫?」
「ん?ああ、おかげさまで安定している。君こそ大冒険だったようだな」
「まあね」
ぼくの服は破れてこそいないけれど土草まみれだし、おにゃもーらは全身ボロボロで靴まで切れてる。こんなに激しい旅は初めてだよ。
「さて、では二人は先生の医院へ入院しようね。“力”の枯渇からは回復していないからね。先生の医院は“力”が均等に調整してある。一日安静に過ごせば前より元気になるよ」
しじょうは機構に見えない様にぼくとおにゃもーらにウィンクをした。
あ、建前をつけてくれてるんだ。
「そうなんだ。じゃあ、行こう。おにゃもーら」
「待ちたまえ! 機構は機構で診ると言って」
「先生の患者となった以上は先生の医院で診ると言っている。聞こえなかったのかな?」
殺気出したしじょうこっわ。機構の人、足震えちゃってる。良いの?おにゃもーら。え?直属の部下じゃないからほっとく?そうなんだ。直属の部下どうしたの?来ないよう伝えておいた?らいあ居るから?いまとなれば賢明な判断だったね。
『そらあったかい』
そらがポツリと言った。確かめるような言い方だった。
「うん、そらはあったかいよ」
『しゅゆあったかい』
「そう?それは良かった」
『おにゃもーらあったかい』
「そうだね、おにゃもーらもあったかいね」
『んぱ』
そらは嬉しそうに言うと、ふわりと浮かんで、再びおにゃもーらの頭にぺしょりと引っ付いた。




