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そらのうた~ことばあそび編~   作者: はねいわ いみゆう
過去編・しゅゆ
82/140

昔あなたから貰った木苺。ぼくからもあなたへ・十

※注意※流血ありです。

物語を約五等分した、五分の二と、五分の四の辺りに出て来ます。

苦手な方はご注意ください。後書きに該当箇所のまとめを乗せたので、もしかすると、そちらを読んでから本文を見ていただくといいかもしれません。

 

 ぼくの周りではいま、“力”の解放と展開が繰り広げられている。

 おおねは防御と攻撃の混合、しじょうは防御と状態異常無効化をそれぞれ独立で、せいは探知かな?白い手袋の人からは感じた事の無い波長の“力”。

 主にぼくの体に圧をかけるのはそれだ。初めて出逢う種類の“力”につい胸が高鳴ってしまう。


「君、こちらが言うのもなんだが、もう少し目の輝きを抑えてはどうかね?」


 白い手袋の人に何故か呆れ顔で注意をされた。


「これがぼくだもの」


「羨ましい自由さだな」


「羨ましがってる時間があるなら、あなたもすれば良い。まだあるんだから」


「何がだ」


「いのち。ぼく、昨日死にかけた時に思ったよ。誰かを憎んだり嫌がったりする時間を、もっとぼくの為に使えば良かったなって。もっと、ぼくが居たい人との事を考えたかったなって」


 白い手袋の人は目を僅かに開いてからスッと伏せた。口元は固い一文字。思う所があったらしい。が、すぐにその目は鋭く尖る光を宿してぼくを射貫く。そして開かれた口からは、腹に響く、意志を携えた深い声。


「オン村地区保護機構より最後通告を行う! 全員、速やかなる“力”の施行停止及び協力体制への移行をもって従うべし! さもなければ敵対と見て相応の対応を行う!」


「笑止! 三緒地区長おおねが命じる! 緊急事態宣言発令! 総民避難及び機構への敵対行動を許可する! 周辺地区への協力、応援を依頼する!」


 おおねが叫ぶと、窓や引き戸の向こうが真っ赤に染まった。


「緊急事態宣言で地区の警報器が発動したのよ」


 にりんがコソッと教えてくれる。

 ありがとう、けど下がっていて。“力”には“力”でないとぶつかれない。狭い室内で巻き込んでは危ないから。

 たてこうですらぼくの前へ出てこない。“力”を使えない者が無闇に出てはいけないと理解しているからだ。たてこうがぼくを庇う時は、二人共に散る時だけなのだ。


 全員が前傾姿勢を取った。その時だった。


『たすけて』


「え?」


 脳に響いた音。声?


「いかん! 窓を覆え! 戸を閉めろ! 来るぞ!」


 らいあが逼迫したように叫んだ。

 あの人でも取り乱す事があるんだな、とぼんやり思いながらもぼくは戸へ走り、にりんとたてこうが窓のカーテンへ手を伸ばすのを横目で見て。


『たすけて』


「フェッ?」


 突然耳元で囁かれた驚きで喉から変な音が出た。左肩を見るとそこには、透明な、水の塊のような。


「しゅゆ!」


 誰かが叫んだ。誰かがぼくの方へ必死に駆けてくる気配がして、ぼくは誰かに右腕を掴まれて。


「しゅゆ!」


 叫んでいる。誰が?


「お願い助けて!」


 懇願している。誰が?


 目の前が一面濃い桃色になった。それは一枚一枚が淡く光る花弁が大量に飛んでいるからで。


 この花びら何処かで見た気がする。


「しゅゆ!」


 誰を、呼んでいるのだろう?


 そんなに必死に、どうして?










 ……ろ!


 なんか、体が動かない。


 ……きろ!


 金縛り?やだなぁ。しかも何処かで誰か叫んでいる。


 ……み!……きろ!


 あー、うるさい。まだ眠い気がするし、もう一回寝ちゃおう。


「起きろ小僧!!」


「誰が小僧だあああああっ!!!」


 ぼくは体の重さも忘れて飛び起きた。誰だ!?ぼくを小僧と言ったやつは! お前か! って白い手袋の人じゃん。


「ぼく小僧じゃない!」


「クッ、知って、いる」


 白い手袋の人は苦悶に満ちた表情をして、天井を支えているみたいな格好でぼくの太もも辺りを跨いで立っていた。


「どうしたの?一人芝居?」


「阿呆」


 さっきまでは、疲れが溜まった頭のお堅い人って感じだったけど、体裁を取っ払うとこういう人なんだな。ちょっと悪だけど上品で仕事出来る人みたいな?よくわかんないけどさ。


「天井落ちて来てるの?上に何も無いというか全方向何もないけど、え?床も無いじゃん。下暗っ! こわっ!」


「それだけ、元気、なら、問題、ないな」


 ニヤリと笑う白い手袋の人からポタポタ溢れて来るもの。汗もだけど、血だ。右手の怪我から絶え間なく血が流れ、ぼくの左肩に降り注いでいた。

 たてこうどんだけ馬鹿力なのさ。あんたも戸を開けようとどんだけ痩せ我慢したのさ。


「いやいや、パッと見、問題だらけでしょ。何ここ?みんなは?」


「君と、私、だけ、だ。クッ、いかん、“力”の、差が、あり、すぎる」


 片目を瞑ったのウィンクじゃないよね?汗が目に入ったんだよね。そっちの目を瞑ると「こんにちは好き」じゃなくて、「こんにちは嫌い」になるらしいからね。気をつけてね。


「何と?」


「私の、上」


「あんたの上?……あっ! そらのうた!」


 白い手袋の人の上。透明な板でも挟んだかの所にポツンと浮かぶ、小さな水の塊のようなもの。


「君、を、連れて、行く、つもりだ」


「え?あんた守ってくれてるの?」


 正直物凄く驚いた。機構は土地だか“力”だかにしか興味無いんじゃ?あ、ぼくの“力”に興味あるのか。


「オン村の、者を、守るのは、仕事の、内だ」


「そりゃどーも。ねぇ、そらのうた、“力”弱めてくれない?ぼくとお話ししよう。さっき『たすけて』って言ってたでしょ?理由聞かせてよ」


 しばしの沈黙。


 聞こえてないか、無視されているのかな?と考え出した時、白い手袋の人の膝が崩れ落ちた。


「ウッ、ハァ……ハァッ、ハァ……ハァ……」


 地面と膝に手を着け全身で荒い息をしているが、視線はそらのうたへ鋭く向けている。

 良いね、その闘争心の高さ。嫌いじゃないよ。


「大丈夫?うーんと、あ、おにゃもーら!」


「クソッ、新たな化け物か!?」


 武器を作り出すその反応、おおねと同じって教えたらどんな嫌な顔をするのかな?しかも何それ、宙に浮く銃?近所の子が見たら人気者になれそうな武器だね。


「あんただよ」


「ハッ!?」


「あんたの声、室内で『おにゃもーらおにゃおにゃもーら』って聞こえたの。どうせ名前聞いたって名乗んないでしょ?勝手に呼ぶよ」


「……………………もうどうでもいい」


 そんな全身全霊で投げやりにならなくても。嫌なら変えるよ。……えっと、手袋……は制服なら他の人もしてるかな?じゃあ、引き戸の人とか?


『たすけて』


「っ!」


 上を見る。そらのうたも、こちらを見ている気がする。


「言葉に気をつけろ。こちらと等しい価値観とは到底思えない。どう解釈されるか分からないぞ」


 小声で注意を受ける。まっとうな注意だったので頷いて返す。


「たすけてって割りには強引だね?現れたらすぐに警戒されちゃうから仕方ないかもしれないけど、せめて説明はほしいな」


「言った矢先に煽るなっ」


 怒られた。煽ってないよ。ちゃんと分厚いオブラートに包んだよ?


『かれてしまう』


 枯れる?


「何が?せいの庭の木?」


『ちがう』


「水場?」


『ちがう』


「木?」


『うん』


「三分待ってね。……ぼく、木を癒す“力”なんて使えないよ。はい、ハンカチ」


 小声の早口で話すぼく。おにゃもーらからも小声の早口が返ってくる。


「……いい。血に染まって返せなくなる。この空間からして並の木ではないのだろう」


「だよね。ぼくの“力”、普通なんだけどな。そんなの分かってるから使いなよ。失血して倒れられても困るから」


「……済まない、使わせてもらおう。君の“力”は並ではない。波長が私よりだ」


「それ自分自慢になってるって気付いてしてるの?なら質悪いよ。どういう“力”?」


「干渉力が高い。自慢などするような“力”ではない。制御するまで苦労した。君、早い内に似た性質の師を見付けて制御を学べ。この“力”は下手すると干渉される」


「される??する、じゃなくて」


「されるんだ」


 おにゃもーらの顔から感情が抜け落ちた。


「いまのおにゃもーらみたいに?うっすらだけど、心臓?になんか巻き付いて見える。この空間だからかな?“目”がクリアに使えるよ」


「……」


「話せないんだね。分かった、これ以上聞かない。アドバイスありがとう、らいあに相談するよ」


「零輪の地区長と知り合ってしまったか」


「いけないみたいな言い方だね」


「平生ならば問題ない。だが……あれは有事に鬼になる」


「それはどんな人間でもなるよ。平生でも鬼な人もいるんだから」


「……それも、そうだな」


 表情が戻って何よりだけど、そんな、しぶしぶ無理矢理同意した、みたいな言い方されても。……らいあ、鬼神にでもなるの?


『いこう』


「三分経った?条件付きなら行って良いよ。その前に、さっきの家にこの人だけ安全に確実に生きて帰してくれる?」


「君!?」


 うわっ、耳元で叫ばないでよ。


『だめ』


「ぼくだけじゃ“力”足りないの?」


『そう』


 おにゃもーらは「その割りには扱いが雑で攻撃されていたのだが?」と不満そうだ。


「なるほど、なら、ぼくたちの身の安全を確保して。絶対に、さっきの家に、一日以内に生きて健康に帰して。断るのなら、ぼくはここで自害する」


 隣で息を呑む気配。だってそりゃそうじゃない?帰れないのなら生きてなくても同じだよ。ぼくはたてこうに会って文句を言う為に生きているのだから、たてこうが追って来られない場所で生きる気は無い。


『いこう』


「ぼくたちを生きて帰してくれる条件を叶えてくれるってことかな?」


『うん』


「よし、行こう。おにゃもーら、当たって砕けろだよ」


「砕けてはいけないだろうが……。ハァ、明日から未消化の有給全て使ってやる」


「良いね! お見舞いに行こうかな」


「来るな。過労で死ぬ」


「いやいや、お見舞いだってば」


『てを』


 手?と返す前に、おにゃもーらがぼくの手首をガッチリ掴んだ。そのすぐ後。


「まさかここへ来る事になるとは……。今日から有給を使っておくべきだった」


「残念だったね。ここ何処か分かるの?」


 ぼくたちは空の上に立っていた。うん、誤字じゃないよ。空の上に立ってるんだ。頭の上には川がある。逆?ぼくたちが逆さなのか?


「『逆境の地』……別名『死地の砦』だ」


 物騒な名前だこと。

~二ヵ所まとめ~

五分の二の場所では透明な子から放たれる“圧”から、おにゃもーらがしゅゆを守っています。

怪我を悪化させながらもおにゃもーらが自分を守っている事と、天井も床もない不思議な場所に居る事に驚くしゅゆ。

おにゃもーらは透明な子とのあまりの“力”の差で身動きが取れません。

しゅゆは透明な子へ「“力”を弱めて。話をしよう」

と声をかけます。透明な子はそれに応じ、圧を消しました。


五分の四の場所では、透明な子から救助を頼まれたしゅゆとおにゃもーらが話し合いをしています。

しゅゆはハンカチをおにゃもーらへ貸しました。

おにゃもーらはしゅゆへ、「私と“力”の質が似ている。制御に苦労するから、似た質の師匠をつけ学べ。でないと干渉される」と忠告します。

しゅゆはおにゃもーらの心臓に何かが巻かれている事を指摘。おにゃもーらは答えられませんが、しゅゆは「話せないならこれ以上聞かない。師はらいあに尋ねる」と返します。

「零輪の地区長と知り合ってしまったか。あれは有事に鬼になる」とおにゃもーら。しゅゆは「誰でも有事には鬼になるよ」と返します。

しぶしぶ同意するおにゃもーらに、しゅゆは、らいあは鬼神になるのかな、と考えていました。


お読みいただきありがとうございました。

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