昔あなたから貰った木苺。ぼくからもあなたへ
過去シリーズ第二弾始まります。
※注意※今回は二話同時投稿します。こちらは一話目です。
※注意2※一話目冒頭に水難事故があります。全体にその様子が書かれていますので、苦手な方は二話目からお読みください。
二話目冒頭に一話目のあらすじ書きました。
「最悪」
最悪な日だ。天気予報は晴れの穏やかな旅日和なはすが、夜中の突然の大雨と暴風。川は荒れるし、水中から突然現れた大きな亀の甲羅に船が当たって、ちょうど避難ボートの用意をしていたぼくだけ川に落とされるとか。しかも、揺れから子ども達を庇って別の部屋に居たはずのたてこうはぼくが落ちたこと知らない。今頃は知ったかもしれないけど。つまり、追って来ていない。
「ほんっと最悪」
最悪だ。咄嗟に張った防御壁のおかげで濡れも怪我もしていないけど。“力”で水中から酸素を補給しているが、僅かな量だ。いつまで持つか。
「水面がどっちか暗くて分からない」
真夜中の水中ってやだね。方向が分からないと上がりようがないじゃないか。
「はぁ、それでも旅に出なきゃ良かった、とは思えない事は、救いかな」
少なくともあの町で死ぬよりは、この暗くて冷たい水の中のが良い。ふーん、ぼく、けっこうあの町嫌いだったんだな。うん、嫌いだね。見て見ぬ振りをするやつらの町なんて、嫌いだよ。
「さて、どう死のうか」
きっと、たてこうはぼくを捜すだろう。指一本でも見つけようとするだろう。その見つけた部分に傷がついていたら、たてこうはきっと同じ傷を自らに付けるだろう。見つけたのが指一本なら、同じ指を切り落とすだろう。だからきれいに死なないとね。でも。
「想像したくないな」
あのガタイだけ良いやつが怪我するところなんて。ふん、ぼくをこんな気持ちにさせるなんて。死ぬの中止。たてこうに文句言わないと。
「さて、どう生きようか」
まずは酸素と温度だ。“力”で酸素を水から回収する量を増やす。体には“保温”をかける。“灯り”もつけたいが、“力”を温存したい。いま水の流れは下に向かっている。つまり、地下だ。地下で光っても仕方がない。
「待てよ、確かこの川はオン村の地下に繋がっているはず」
オン村には地下街があるらしい。うまく地下街に流されれば。
「運なんて信じられない状況だけど、ぼくの運、頼むよっ!」
祈り、目を閉じた。体力の温存の為に。生きて還る為に。
「流れが……緩やかになった?」
どれだけ経ったか分からない。体に伝わる振動が弱くなったことに気付いた。目を開く。
「え?水面が明るい。朝になった?ううん、酸素が持たないから……オン村の地下街だ!」
ぼくは慌てて水面へと、水を掻き分けて上がって行く。あぁ、緊張と期待とで“力”がぶれて、うまく水を掻き分けられない。
「落ち着け、落ち着け。落ち着け、“力”を制御するんだ。落ち着け、落ち着けしゅゆ。行くぞ、生きるぞ。生きてたてこうに文句言ってやるんだから」
自分自身を宥め、鼓舞し、水面へ向かう。気を遠くへやりそうになりながら、ようやく防御壁の天辺が水面から出た!
「出た!」
そこからは早かった。防御壁ごと水面へ飛び出したぼくは、見つけた陸地へ水面を弾んで向かう。
「着いた!」
ぼくは防御壁を解いて地面に転がった。
「はぁ……はぁ……生きてる」
仰向けに寝転ばれば、舗装された天井に均等に並ぶ蛍光灯が。やった、整備されている地区だ。見回りか何かで人が居るはず。
「はあー、助かった、かな?」
問題は、人、だからね。
オン村の噂はなかなか流れて来ない。名称は村なのに小さな市より大きいとか、村中が遺産で溢れているので観光や入居には届け出が必要であり、取得にはかなり手間や時間が掛かるとか、そんなことしか分からなかった。だから、満月の市で情報収集をしようとたてこうと話していたのだ。観光ですら手間取ると言うのに。
「ぼく、不法侵入してるし」
事故とはいえ完全なる不法侵入だ。それにしては。
「静かだねぇ」
警報器が鳴っていない。人も来ない。何処かから監視している可能性も―――。
「無かったかな?」
早いもので、ぼくはいま地上に来ていた。人を探して歩いていたら、昇降機があった。ので、昇った。ら、地上に出た。
勝手に歩き回っているぼくが言うのもなんだけど。
「防犯対策、ちゃんとしなよ」




