物を得るときは仕舞いまでを、箱に入る時には出る時の事まで考えよ・side隠れん坊やニ
オレとせいちゃんはまだ手をつないでいる。「せいを家まで送ってあげてくれる?」ってかあちゃんにたのまれたのだ! まかせて! せいちゃんはオレが守る!
「せいちゃん、大丈夫だよ。オレが居るからね」
「うん、ありがとう。心強いよ、隠れん坊やくん」
お、せいちゃんのきちょーな笑みゲットだぜ。せいちゃん、いっつもガチガチだからな。それにオレのヒーロー名しってたんだ。なんかうれしいな。
うら口から出てほそ道をとおって〈にりんの煮物〉の表まで来た。
「ん?」
せいちゃんが不思議そうな声をあげて止まった。
「どったの?せいちゃん」
「なんだろう、これ。なんか変だ」
ガチガチに戻ってしまったせいちゃんの手のひらがじっとりして来た。今日は暑くないのにな。そうだ、オレねつが出たとき、手のひらにあせかいたかも。
「せいちゃんおねつ?にりんちゃん呼んで来る?」
「あ、だ、大丈夫おれじゃないから。うん、にりんの所行こう」
「うん?」
せいちゃんじゃない?
「にににりん」
せいちゃんはあっさりとにりんちゃんの所まで行った。さっきのオドオドがうそみたいだ。もちろんオドオドがうそじゃないのはすごい分かるよ。いまはガチガチだけど。
「あら、せい。めるさんから聞いたわよ。ありがとう。食べられるものからしゅゆと食べてね」
「あ、うん、こちらこそありがとう。あの、その」
言おうかまよってるせいちゃん。言っちゃえ。言った方が良いよ。「もしせいから話しかけてきたら手を止めて聞いてあげて。せいから話すなんてよっぽどだから」ってみんな言ってるもん。
「なぁに?」
「なんか、なんか来る気がするんだ。あっちから」
せいちゃんはオレの家の方を指差した。なんかって?
「零輪の方ね。悪いもの?」
一しゅんでしんけんなかおになったにりんちゃんは、小皿に入ってたこぜにをザラッと一気にレジに入れて表へ出て来た。風がうまれたぜ。
「悪いものじゃないと思うけど数が多いかな……。あの、間違ってたらごめんなさい。先頭は“何か”で、後ろの大群は猫かもしれない。まだ零輪に居る」
え?れいりんってオレの家のもっと向こうでしょ?そんなの分かるの?
「シャッターを閉めましょう。ろわさーん! シャッター下ろすわー! お客さんたちー! しばらく店内に居てくれるー?!」
「あ、でも間違ってたら」
「間違ってたら笑えば良いのよ。せいもここに居てくれる?かくれくんと居てほしいの」
「かくれくん?」
「オレだよ。本名はかくれ。かくれぼうやってのはオレのヒーローめい」
「ヒーロー名……かっこいい」
「ありがと!」
オレとせいちゃんはレジのうしろの二人用いすにすわった。その間におきゃくさんたちは店のおくへ行ってる。首をかしげているけど、にりんちゃんの言うことだからと聞いてるみたい。にりんちゃんはしゅういのお店にちゅういしてまわってた。あ、あげぱんばーちゃんがにりんちゃんとぱん屋のおきゃくさんの手でいすごと店内にはこばれてった。あげぱんばーちゃんおきなかったんだ。
「ああ、やっぱり来てる」
「来てる?」
せいちゃんの手のひらの汗がふえてる。すこしふるえてるの?
「大丈夫だよ、せいちゃん」
「う、うん」
そのとき、外が一気に赤くなった。
「うわっ!」
せいちゃんが驚いてしまった。ドクドクドクッと手のひらでせいちゃんのちのながれがはやくなった。オレは何がおこるのかたのしみでワクワクしてるけどな、せいちゃんのはドキドキでなんだろうな。
「せい、大丈夫大丈夫。警報器が作動しただけだよ」
ケーホーキってサドウしちゃだめなやつだ。でもみんなおちついてる。「この建物は頑丈だから大丈夫だわー」って言ってる。そっか、大丈夫なんだ。
「かあちゃん、せいちゃんドクドクしてる」
「驚いちゃったんだねぇ。休憩室へ行くかい?」
「あの、ハァ、歩けない、ので、かくれくん、ハァ、だけでも行ってください」
「オレせいちゃんと居る」
何がおこるかここのがわかりそうだもん!
と、ケーホーキからブザーがなった。みんなしずかになった。
『緊急避難連絡、緊急避難連絡。三緒地区長おおねだ。ただいま零輪地区より猫の大群が三緒へ向かっ……ただいま三緒内に入った。第一大通りの二本南側、第三大通りを北西の零輪方面より猛スピードで通過中。猫との衝突を防ぐ為にも直ちに建物内への避難をしてくれ。出来ない者は防御壁の強化をした上で屋根の下等へ退避のち更に頭部等の保護を願う。繰り返す』
すげーむずかしい言葉が多くてよくわかんないけど、れいりんからねこでしょ?せいちゃんの言ったことあたってる。せいちゃんすげー。
「第三大通りってここだな」
「猫の大群?なんでまた」
「零輪からだろ?そんぐらいあるさ」
「うちの子避難出来たかしら。連絡してみよう」
「そうだな、俺もしとくか」
「わたしも」
みんながテガミドリを作ってとばしていく。
「すげー」
テガミドリって鳥もチョウも花も月まであっておもしろい。色もたくさんないろいろなテガミドリがとんでいくの、ランタンみたいですごくきれいだ!
「わぁ……」
せいちゃんも見とれたみたい。ドクドクがちょっとゆっくりになった。
「お待たせ! シャッター閉めるわよ!」
にりんちゃんがいきおいよく帰って来た。足はやい。すぐにシャッターが下ろされたけど、店の外は見える。え?なんで?
「かあちゃん、外見えるよ?」
「緊急時はね外の様子が見れるようになってるのよ」
「すげー。あ」
いまなんかはしってった?はやすぎてわからなかった。
「なんだぁ?あれ」
「なんか通ったかな?」
「小さかったねぇ」
おきゃくさんもざわざわ。
「あ、ひめめ来る」
せいちゃんがふり向いた。かべはすけてないよ。
「ひめめ?うしおの?」
にりんちゃんはせいちゃんのネグセのついたかみをなでている。
「うん。ひめめ……だけだ。人はいない。あっ」
「あっ。いまの猫の先頭のひめめだわ……あらあらあら、すごいたくさんの猫だこと」
「ウオー、すげー」
ねこねこねこねこねこ。すっごいたくさんのねこ! どうろはねこでまんいん! 屋ねのうえもねこでいっぱい! すげー! ねこのうんどう会かな?
「かあちゃん、ねこ!」
「猫だねぇ。あの小さいの追いかけてるのかしら」
「うわあ」
せいちゃんがりょう手で耳をおおって下をむいちゃった。
「あら、どうしたの?せい?」
「楽しそう過ぎて……」
「たのしそうすぎる?」
「ひめめたち、ものすごく楽しんでるんだ。ああ、あんなに楽しそうな声……ダメだ、力が奪われる感じがする」
「えー?オレはワクワクするよ!」
「あたしも。けどせいには辛いのね」
「そーなんだー?」
「うん……熱の時のサウナくらい辛い」
なるほど、それはオレもやだな。冬のアイスは食べたいけどね!




