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そらのうた~ことばあそび編~   作者: はねいわ いみゆう
過去編・うしお
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物を得るときは仕舞いまでを、箱に入る時には出る時の事まで考えよ・一

今日から過去シリーズの始まりです。


「日光浴サイコー」


 なんて呟いて、わたしの元同居人・うしおは縁側で寝っ転がっている。

 かくいうわたしも例外ではなく、うしおの腹の上に寝っ転がっていた。

 こいつの腹の上は具合が良い。凹んだり出っ張ったりの緩やかな上下運動と温かさでのっそりとした眠気を与えてくる。たまに撫でてくる手は……まぁ、嫌ではないな。


「なー、煮干しってまだあったっけー?」


 ある。あるが取りには行かないのが面倒だ。お前も行くな。腹の上から降りねばならなくなる。


「うーん、まだ寝てたいなー。煮干しはまーいっかー」


 同感だ。


「あー、叩いたポッケん中からビスケット出てこないかなー?」


 出てこないだろう。ビスケットとはあれだろう?口の中がパサパサするものだろう?お前の『オヤツ』からこっそり一枚食べたら口の中の水分が吸われて参った。もう食わない。元同居人・うしおよ、あれは叩いたら粉々になるぞ。叩くのはお前の腹にせよ。ふるふる揺れて心地好い。


「野菜でも良いな。庭に大きなかぶ生えてたらみんなで抜いてくれるとか」


 家庭菜園は屋敷の主のらいあとその子・るるがしているな。わたしはたまにそこの葉っぱをこっそり齧っている。たまに生の葉物が食べたくなる時があるのだ。

 そして誰も居ない間にこっそり齧っているがらいあに既にバレている。るるが「るーん、また齧られてるーん」とかいう度にらいあはこっちを見ているのだ。目が笑っているから許しはある様子だが身の危険をうっすら感じなくもないので今は一旦止めている。

 それはさておき、今ならかぶは小かぶが植わっているぞ。何故大きなかぶをみんなで抜く話になるのだ。


「そういや、なんか投げたら桃の木生えてくるってのもあったな」


 桃の種をか?家庭菜園での作業を見ていると種を投げるだけでは芽は出ないようだが?


「うーん、でもやっぱ腹に溜まる方も捨てがたいなー。おにぎり転がってこねーかなー」


 なぜおにぎりが転がってくる。というか転がってきた食べ物なんて『バッチイ』のだろう?お前がわたしに教えた事ではないか。


「酒が樽で置いてあっても飲んじゃ駄目だしなー。罠だもんなー」


 お前は酒飲まんかろう。しかも罠ってなんだ?


「そういやさ、りんごは重力で落ちてるんだってさー。重力ってすごいなー」


 へぇそうかい。あぁ、いい日差し加減だ。寝そう。


「でっかいホットケーキ食べたいかも。なー、ホットケーキにはバターとあんこだよなー。せっかくだもんなー、メープルシロップもチョコレートシロップも生クリームもちょっとずつにしたいなー」


 あー、眠い。あのな、そうやって食べて『甘さで歯が痛い』とか毎回泣いてるから止めなさい。


「あー、でもやっぱ卵かなー。なんだっけ?ガチョウの卵がどーこーじゃなかった?鶏だっけ?」


 こけーここか?お前はこけーここから玉子をもらえた試しがないだろう。話の脈絡はさっぱり分からないが、はよ寝よ。

 尻尾でペシペシ叩いてやる。

 寝よ。わたしが子守歌の音頭を取ってやろう。


「えへへー、ひめめの尻尾ー」


 まったく。だらりと笑ってのんきなやつだこと。


 そうしてわたしはしばらく眠っていた様だが。


「ひめめー!!」


 うしおの悲鳴に近い大声で目が覚めた。

 お前の叫び声は本当に大きいな。驚いた時の声もだぞ。あれは早う善処せよ。


「ひめめー! 起きてー! これ開けてー!」


 仕方なしに目を開けば、わたしの下に居たはずのうしおが居ない。

 寝ていたわたしを置いて行くとはなんたる事だ。ふん、そっぽを向いてやる。


「ひめめー! おねがーい! 起きてー!」


 なんだもう、騒がしい。声もやたらと焦っている。けれどもお前はいつも何かで慌てていて珍しくはないか。

 はぁあ、このままでは『キンジョメイワク』とやらになってうしおがここへ来にくくなるやもしれぬ。仕方がない。起きてやろう。


「ひめめー! 助けてー! 箱開けてー!」


 箱?

 よっこらせと立ち上がったわたしの目に映ったのはわたしより二回りは小さい古ぼけた木箱であった。庭にポツンとあるそれは初めて見た物で、先程までなかった。


 なんだこれは?


「ひめめええぇ」


 なんだその絞られている雑巾のような声は。しかもその木箱から聞こえて来たぞ。


「ひめめええええぇ」


 間違いない。声は木箱の中からしていた。聞こえていると教える為に一声『ぶなぁ』と返してやる。


「はあああ! ひめめえぇ。良かった起きたぁ。お願いこれ開けて。本来入ってなきゃいけないやつに無理矢理入れ替えられちゃったんだよぉ」


 よく分からぬが開ければよいのだな?

 手を伸ばし蓋に触れようとすると。


「ああぁ! 待って待ってー! たぶん無いと思うけど俺の代わりにひめめ入っちゃったらまずい! 触らないで!」


 ん゛なあ。

 不機嫌に一声鳴いてやる。開けろと言うたり開けるなと言うたりなんなのだ、の意味だ。


「ごめんねぇ、ひめめ。らいあ帰って来るまでこのままにしといて。俺はたぶんだいじょ……あれ?おかしいな?」


 何がだ。お前は変わっているがおかしくはないぞ。毎日誰かしらに説教されているみたいだが。

 勿論わたしも変わっているだけだ。大半の近隣の猫からは遠巻きにされているがな。威厳があるからだ。そうだろう?

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