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そらのうた~ことばあそび編~   作者: はねいわ いみゆう
現在編
49/140

腹が膨らまねばうつつとて夢と同等である・十八Sideだいち

 結論から言うと、しのぶさんは最強だった。


 独楽くるまるを回しながら耳に入ってくるさらら様の手鞠唄。それの主要人物、しのぶさんの事である。

 しのぶさんは手鞠で遊ぶ内に地面を抉ってしまったらしい。初めは土埃を舞わすだけだったが、土を掘り深くまで到達するまでに手鞠は石を砕き岩を割り地下水脈を噴出させ、とうとう地中深くに封印されていた悪しき魔物を手鞠で打ち倒したと言う。


 ……しのぶさんは何者だ。何故そこまで手鞠を打ち続けた?そこに山があるから的な事でか?地下水脈が吹き出ても流されること無く手鞠を続けられるのか?何故魔物封印の地の上で手鞠を遊んでいたのか?まさか魔物を倒すのが目的だがそれを悟られない為に手鞠遊びと見せかけたのか?手鞠も一体何で出来ている?物語で伝説の素材として出てくるオルハリコンやらミスリルやらだとでも?だとしたらそれで作った手鞠を繰り出せるその手の平は何で守られているんだ。ああ、オルハリコンとミスリルか。


「オルハリコンやミスリルは空想金属だが、それに等しい硬度の物質は製造されているらしいぞ」

「え?らいあ地区長まさか心を読んで?」

「はっはっはっ。私ではそれは出来んよ。『しのぶさんは何者だ』から口に出てた」

 なんて事だ。疲れからか独り言を言っていたようだ。恥ずかしい。らいあ地区長の眼差しと笑みが柔らか過ぎてこしょぐったい。


「さて、そろそろ帰ろう。くるまる達よ、私達は飯の時間だ。帰る事にする。良い運動になった。ありがとう」

「ご飯! またねーるーん」

「あっぴゃぱーまたなのじゃー」

 るるさんはあっさりと止め、てん様は跳ね回ってくるまる達から地面へと、両手を上げる格好で両足を揃えて着地した。

「ふぅ、しのぶさん手鞠唄の一番を歌い切ったのは久しぶりだったの。楽しかったなの、またねなの」

 汗を拭う振りをするさらら様は満足そうに微笑んでいる。

「あれは一番だけだったのですか?」

「なのな。長いでしょ?一番は特に長いの。二番では手鞠で畑を耕したり川を造って村造りの巻で短いのなの」

 川を造って?壮大だ。

「平和的ですね」

「一番で魔物を倒したからかな。三番でまた違う魔物が出てくるけどなの」

「えっ、何番まであるんですか?」

「さららが覚えたのは五番までかな?学校で覚えたのなの。六番からはお隣の席の子に託したのなの。でもほら、一番を歌い切る前にみんな飽きちゃって他の遊びしちゃうから、ニ番からは唄ったことないのなの」

「てんはまんだ一番半ばなのじゃぁー」

 さらら様の足元にちむちむと歩いて来られたてん様は、跳ね回る前の小さな姿になっていた。さらら様はたったいま小さな姿に変わられた。先程までは愛子の御先祖様に御目通りとくるまる遊びの為に元の大きさに戻られていたのだな。いや、元かは分からないか。


「あー楽しかったーっ! ありがとー! くるまるーっ! またなーっ!」

 ことひらきさんは流れる汗も笑顔もキラッキラだった。なんでも、初めは並ぶ列を蹴っているだけだったが、途中からくるまるが前方に固まり始めたと言う。

「なんでかなー?と思ったらさ、俺が蹴ったくるまるに飛び込んでくんだよね。で、キャッチするんじゃなくて体当たりしてんのん。んで、くっついてたのがバラバラと離れるの。だから、当てて欲しいのかなー?と思ってんねん」

 何故そうなる。私に無い思考だ。


「今度は固まってるくるまるの方に蹴ったらさ、きっと喜んでたんだんよ。蹴ったくるまるに体当たりしながら四方八方に動いてくれてさー。あー、面白かった」

 それは喜んでるのか?私なら胃を抑えて逃げるかもしれない。

「るーん、ことひらきのとこにくるまる達いっぱい流れてったるん。人気だったるんね。いつもはるる一人で投げてるから大変な時もあったけど、今日は少し足りないくらいだったるん。ことひらき、たまに来てほしいるん。るるだけでは投げきれないるん」

「え?良いの?来たい! あーでも、これから俺、オン村に住めるんかんなぁ?いろいろしちゃったし、地区の皆に嫌がられないんかんなぁ?」

 途端に笑顔が無くなり泣きそうになることひらきさん。


 私も他人事ではないな。まぁ、車に乗せられる数なので家族は連れて行ける。村を出ればあても無い旅になるが泊まりは車中で良い。ことひらきさん程深刻ではない。ならばせめて旅立つ前に、ことひらきさんの身の回りを見て行ければ良いが。


「体調を崩していた兄の為とはいえ、地区長に成り代わったのは褒められた事ではないからな。なんぞ言う者はおるやもしれん。しかし罰は決められ受けた。オン村に住む権利は消えていないぞ。地区で不和があればこの家に住んでも良い。私から住居提供者として名乗りを挙げよう」

「るるもいいるんよ」

「ほんとー?じゃあ、俺ここに住む!」

「それはよきよきなのな。けれどもね、まずは一旦帰りんなの。家族も友もおるのなら、間を開けないで一度は帰らないと次帰りにくくなるよなのな」

 ウッ。さらら様の言葉がやけに染みる。

「……うん、分かった」

 渋々頷くことひらきさん。もうすでに帰りにくい様子。

 性別、年齢、血筋等は重要視されない。大事なのは本人の意思。というのがこの時代の主流である。なのでらいあ地区長の家にことひらきさんが住み始めてもほとんどの人は「あの家、人増えたんだってさ」「へぇー」くらいだと思う。

 例えそのまま実家に帰っても保護者である人達は彼を守るはず。それでも突然の出来事からは守りにくい。一時避難としてらいあ地区長が名乗り出てくれるのならばかなり心強い。ならば、私が入ってはややこしくなるだけだな。さっさと去。

「だいちも来よ」

「……はい?」

 み、耳、私の耳、疲れてますか?

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