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そらのうた~ことばあそび編~   作者: はねいわ いみゆう
現在編
43/140

閑話『朝呼び鳥』

明けましておめでとうございます。

今年も宜しくお願い致します。

今年も皆様の息抜きになれるような物語を紡いでいきたいです。


追記・章を後日付け足した為、こちらの閑話も現在編になってしまいましたが、こちらは過去編になります。ただいま直したく方法を探しております。ご不便をお掛けして大変申し訳ありません。

今日と明日はのんびりな閑話をお届けします。

『朝呼び鳥』



「あああーさああー! ぁああーさああー!」


 ある楽子の朝は発声練習から始まる。一年程前から週一回を目安に始めた発声練習。窓を開け放ちベランダに出て、両手を鳥の翼の様に広げ立つ。それは年明け一日目の朝でも変わらない。


「あああーさぁあー!」


 ただ気紛れに大声を出すのではない。大小緩急自在を心掛ける。


「あぁあーさあぁー!」


 ある楽子の部屋のある塔はどの塔よりも高い。部屋の位置も高い。故にその大きな大きな声は塔の下からあちらの塔からさらにあちらの向こうの向こうまでにも本来ならば届くのだが、近所迷惑にならないように防音装置が幾重にも作動しているので野鳥の声の大きさと変わらない程になっている。


「ぁああーさああー!」


 発声練習はまだ続いている。



 その頃、ある塔のある一家では。


「明けましておめでとうおかーさんおとーさん、今年もよろしくね。おかーさん、あの鳥また鳴いてるー。“朝呼び鳥”って名前なんでしょ?なんで?」

「おめでとう、よろしくね。なんでかしらねぇ?いつからかそう呼ばれてるみたいね」

「おめでとう、よろしくな。鳴き声は一年位前からだったか?名前は最近聞いたな。楽子のどなたかが飼っているのでは。と聞いたぞ」

「毎日楽子の塔の方から聞こえるもんね。あたし黒豆と海老食べたい。おとーさんは黒豆と鰤ね。おかーさんは黒豆と鴨肉」

「ああ、ありがと。みんな黒豆だな」

「ありがとう。黒豆好きなの?」

「だって黒豆は健康の縁起物なんでしょ?みんな元気じゃないとね。待って、まだ食べちゃ駄目」


『あああーさああー!』


「あの鳥が鳴き終わってからね。鳴き終わったら朝が来たってことなんだから」

「なるほど」


『あああー』


「……」

「……」

「……」

「朝来た?」

「来たみたいだな」

「来たわね」

「じゃあ食べよう」

「食べようか」

「食べましょう」

「「「いただきまーす」」」



 戻って楽子の塔。


「あああー!」

「だああああ! 新年早々やかましいわああああ! 『大晦日は久方ぶりに三人で寝よー』までは良いが起床アラームが激し過ぎるわ!」

 てんの部屋で寝ていた為てんの喧しさに起こされたゆたきは、この部屋のベランダに防音装置を五倍の重ね付けをさらら様に申請しようと決めた。

 これ一年間響いてたのか?近所迷惑し過ぎてないか?苦情は来ていないのか?それとも届いていないのか?

 さららにより既に防音装置が備えられていると知らず悩むゆたきの隣では、大好きなてんの声に起こされてご機嫌なまひろ。

「てんさまー! 明けましておめでとうございますぅー。今年もまひろとなかよくしてなのですー」

「あっぴゃー! まひろおおおお! あけまめーことまかー!」

 抱き合いじゃれる二人に毒気を抜かれたゆたきは、寒い寒い、と部屋の中へ戻った。


 てんとまひろも室内へ戻り、三人とも着替えていく。

 今日は朝一番に学塔街の民に向けて、当主であるうかびの新年挨拶がある。うかび以外は絶対参加ではないが毎年かずら、さらら、てんも参加している。

 各家庭や職場に備わった“放映”の道具に写し出されるので、てんは少しばかりおめかししていく。華美には決してしないというよりも出来ない。髪と胸元に生花を一輪ずつ差しただけだ。大半の楽子は華美とは正反対に近い物事を好むというが、てん達もそうなのだ。

 普段の服も控えめなんだよな。飾りものは絶対好まないからな、てん。この前なんか使い古したカーテンに穴開けて脇絞って頭出しただけの着てたもんな。裁縫得意って言って縫い目は確かに丁寧だけど、服かというと微妙なところ。


「なぁ、さっきのあけまめことまかってなんだよ?」

()()()してお()でとうごさいます。()()しも()ひろとな()よくするのじゃ。の略じゃ。ちなみにゆたきには、あけまめことゆかたのよろ」

「新年早々嫌な気配が」

()()()してお()でとうごさいます。()()しも()()いに()()しいゆたきで()()しく、じゃ」

「……まずは明けましておめでとう。今年も宜しく。次に、お前の分の海老食って来てやるっ!」

 ゆたきはてんがついて来れるように小走りで部屋を出た。待機していた護衛達がちょっと驚いている。

 今年は少しだけ、ゆたきも年相応らしくあろうと決めていた。昨年の自分は背伸びし過ぎていたと気付いたから。


「あっ! 待つのじゃゆたき! これはあかん。てんの海老が。まひろ、てんは先に走る故」

 てんも走り出すもやはり遅い。

「てんさま、歩いてみて」

 まひろは隣を歩きながら言った。

 てんのいいところをてんに一つでも多く伝えるのが今年のまひろの目標なのだ。

「歩くの?」

「歩くの」

 力強く頷くまひろ。

「分かったのじゃ。まひろの言うこと聞くのじゃ。あはははぱぱはは! 早きー! 早きー! 歩くと早きー! あはははぱぱはは! 待っておれゆたきー! てんが共に食うてやろー! あはははぱぱはは! まひろ行くぞよー!」

「はいなのですー」


 廊下の角で待っていたゆたきと揃って広間へ行くまで、あと一分。


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