腹が膨らまねばうつつとて夢と同等である・六
登場人物増えました。
「それは多いな」
「らいあ! 『それは多いな』なんて冷静に言ってる場合じゃなんいん! “ことほぎ”の区画の境に来てくれりゃあ、うちの門番達は優秀だから交渉ってか話す余裕も作れっけんどん! 弱味握られた“ことほぎ”にこんなもん持たせてお前らに使えっつった頭ん中かったくてぬっくぬくなあっちの地区長らのとこに来ちまってみろ! 焦って勝手にぶっぱなして戦い始めちまうんぞん!」
なんでだらいあ! そんな落ち着いてる場合じゃないだろ!
「ふぇっふぇっ、大胆だねぇ、ことほぎ。本人たらの前で」
「きーちゃん! 笑ってる場合じゃ……ホンニン?」
ア、アハハー、俺の心臓速いんなー。なんでかんなんー?
首をカクカク時計の短針の様に回しながら、きーちゃんが指した方を向く。と。
「おおおおお!?」
誰小型打ち上げ花火ここで放ったの!?って位の閃光と煙と火花がすぐ外で炸裂した。
咄嗟に防御壁を張ったが、室内のほぼ全員足す外の幾人かも色々張ったので、一切の煙も火花も入ってこなかった。
家や室内の物は勿論人にも傷や怪我は無さそうかな?大丈夫かんなん?
「お前たち、無事か」
らいあの掛け声に口々に返答しているのでホッと息を吐く。
あぁ、けど、急な派手な音や光に驚いたのではなんいんだろうか?俺でも驚いたんだんし。
「無事るんけど林檎のうさぎさんのお耳切り落としちゃったるん」
えー!?あっぶな!?るるちゃんの手は!?大丈夫なんのん!?
「なんと危なかったな! しかし安心せよ! るるの指でない! よかったな!」
「まさちゃん顔と声近い。るるのおみみがどかんするん」
確かに近い。しかも、顔の横で出す音量じゃないんよんね。
「ぶぶぶじは、ぶぶぶじなななんですけどどどし、心臓がはや速っ」
「せい、ゆっくり座ってゆっくり呼吸しててね。ぼくはあの人達消して来るから。たてこう、手離して」
「しゅゆ、もっとたくさんいなり寿司を作ろう。ほら」
「いなり寿司に唐揚げは入れないよ。それともたてこうはいなり寿司の中身は唐揚げ派なの?初めて知ったよ。わさびもたくさん入れてあげるね」
「済まないしゅゆ酢飯にしよう酢飯に」
せいさん震えてるけど、大丈夫かんなん?しゅゆとたてこーは相変わらずだんねん。
「みぴゃ、てんびっくりー、みぴゃ、てんへにょり」
「もうだいじょぶるんよ。てん、これ一口飲んでみてるん」
「ん?……あぴゃー! うましぃー! うましでごさいますぅー! あぴゃー! てん元気ぃぃぃいー!」
おおおおお!?何事!?てんちゃんが急激にパワーアップしてるんだんけども!?
「よかったるん」
「な、何を飲ませたんだ!?まさもほしい!」
「これるん。蜂蜜檸檬」
「なんと! いい香りだな!」
「今日のるるは果物担当るんから。はい、せいとらいあも飲むん」
「あ、あり、ありが、とう。……あ、おいしい」
「ありがとう、るる。……ああ、旨いな」
「るる、ぼくも飲みたい」
「自分にもください」
「はーいどうぞるん」
「ありがと……へぇ、おいしいね」
「ああ、おいしい。酸味がちょうどいい」
蜂蜜檸檬をぐびぐび飲む御一行。驚きからの回復力が半端なくて良かった。
「羨ましいくらい通常だなぁ。てか俺も飲みたい」
「ふぇっふぇっふぇっ」
あ! きーちゃんもいつの間にか蜂蜜檸檬飲んでる! 俺のは?るるちゃん! 俺のは!?
「あーワリイ。ちょっとビカビカしたわ。そっちは平気か?」
その声が聞こえて来た瞬間、俺は懐にある物を遠く彼方へ投げ飛ばしたくなった。しないと言うか出来ないけど。まつごろう抱えてるし目の前でそんなことしたらバレ過ぎる。
なんで?なんであの人の声が?いつ帰って来てたの?ってか帰って来そうってことも知らなかったなぁーアハハ。
「何処がちょっとだ。るるを驚かせおって、許さんぞ。久方ぶりだな、おかえり」
その人に文句とため口を出来るのはお前だけよ、らいあ。
「ふぇっふぇっふぇっ、職務怠慢の放浪癖っ子が帰って来たかい。おかえりんさい」
その人に暴言吐けるのもあなただけです、きーちゃん。
「誰るん?分からないけどおかえりなさいるん。はい蜂蜜檸檬」
「まさは知らん! だがおかえりよく帰った! しかしるるを驚かせたのは許さん!」
「あぱはーだれじゃろなー?てんだよーおかえりいぃぃー!」
「ご、ごめんなさい、どちら様だったかちょっと。何処かで会ったとは思うんですけど、あ、でも、お、おかえりなさあっ! 大根がっ!」
「ぼくは知らないけど仕方ないからおかえりって言ってあげる。でも、せいの前で暴れないでくれる?ほら、せい、大根は転がるものだから落ち着いて」
「自分も知りませんがおかえりなさい。唐揚げもありますがまずは手洗いうがいをしてください。荷物の土は玄関前で払いましょう」
……こいつら最強かよ。
「愉快な仲間が増えてんなあ、らいあ」
「かわいいだろう。やらんぞ」
「いらん。無理。ぜってえオレの手に負えねぇ」
「褒められておるん」
「褒めてはいねえぞ蜂蜜檸檬。オレは地区総長だ」
「ちく・しょうちょうさん?長めの名前るんね。そして蜂蜜檸檬と違うるん。るるはるるるん」
「ちげえよ役職名だよ。しかしこりゃあうめえな」
「蜂蜜は胡麻畑の隣の養蜂場のこまさんので、檸檬はともえ池のある胡麻畑のともろさんの自家用畑のるん。収穫量の都合で数量限定品るん」
「ややこしいんだかややこしくないんだかなやつらだな」
俺達はらいあ宅炊事場にて蜂蜜檸檬を飲んだり飲まなかったりしている。
先程外でバチバチしてた地区総長と、らいあ、るるちゃんで仲良くお話し中だ。
その周りにはらいあの友人達がズラリと並び各々歓談中。作り終えた料理はすべて冷蔵室に仕舞われている。
炊事場と外を繋ぐ出入り口から外側には地区長達がズラリ。その地区長達にものすごーく見られてて帰りたい俺は、きーちゃんが輪の中に入って行っても一人立っていた。
ううん、一人じゃないね。まつごろうが俺の足の甲に顔を乗せてたや。寝てるのか、目を閉じていてお腹が動くだけだけどその温かさが助かる。
「んで?」
ビリッ! と空気が痺れた、様に錯覚した。あ、錯覚じゃない。伏せているまつごろうの毛は無事だが、俺の髪や服の表面がパチパチ火花を纏っていた。
あぁ、そうだった。地区総長は雷に好かれている人だった。
「お前は誰の許可得てそれ持ってんだ?あ?」
地区総長の視線が射貫くは俺。
あ、駄目だ。俺帰れないかも。ごめん、ばぁちゃん、明日の水汲み手伝えない。そしてばぁちゃんの秘蔵の鮎の佃煮全部食べたのは俺です。兄ちゃんでも弟たちでもありません。間違えて怒らないでね。
なんて現実逃避してる場合じゃない。
「あのー、五色の地区長の許可を得ました」
「あいつにんな権限ねえだろうが」
「でもあなたの印書持ってました」
「はあ!?」
「うるさいるん。疲れちゃったてんが寝てるん。もうちょっと小さい声で落ち着いて話するん」
割って入ったかわいい声に俺は震え上がった。
オオオ!?るるちゃんダメダメ! その人に逆らっちゃ駄目! らいあー! るるちゃん守れ!
という俺の祈り虚しくあの人はるるちゃんをギロリと睨んだ。
「おい、お前地区総長に向かってんなこと言っ」
「誰であろうと寝ている子を理不尽に起こす者ならばこの家から出て行くるん。身分を悪に振りかざす者に跨がす敷居はない!」
るるちゃんが、吠えた。叫んだのではない。吠えた。
オオオオオ……。る、るるちゃんが俺の知らないるるちゃんに。あ、らいあも知らなかったかもしれない。口開いてる。
あの、るるちゃん、てんちゃん起きちゃったんよん。おめめ見開いてキョロキョロしてるよ。あ、また寝た。というか寝たふりかんなん。状況把握力半端ないね、うん、ありがとうね。そこに助かった人が一名おりますゆえ。
「す、済まん」
謝ってるよ、地区総長が。
「分かればいい。この家でこれからも話すのなら全員移動するん。ここは食事場だ。衛生面にも気をつけたいるん。刃物もあるん。へたに動けば怪我をするん。らいあ、大広間へ行くべきでは?」
「あ、ああ、そうだな。皆、大広間へ移動を頼む」
初めは戸惑っていたらいあも、掛け声はピシリと締まっていた。中と外の大人達がギコギコぎこちなく動き始める。
これは動揺度が高いんぞん。まつごろうも起き上がって地面に降りてソワソワしてるし。
たてこーが迎えに来て抱っこすると、安心したように眠り始めるまつごろう。
たくさん寝るんねん。ええよぉ、寝る子ぉは育つ言うしなぁ。
「お、おう。あ、玄関から回ってくわ」
地区総長もギシギシ立ち上がる。
「そうしてくれ。ことほぎ、お前はこちらから入って玄関を開けてきてくれないか」
「あ、はいっ」
るるちゃんにらいあの片鱗を見付けた俺は、るるちゃんを怒らすのは絶対避けようと決意しながら廊下を滑るように急いだ。
今回は地区総長だけ話していますが、地区長達もどんどん話していってくれるといいなと思いながら続けていきます。




