竹馬の友は竹に雀を思い笑む~幼馴染みの集い・八~
略して「竹竹集い編」、終盤に掛かりました。
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なんやかんやあったが、皆で温かい麦茶を飲んで一息しているところへ、きーさんとたてこうが帰って来た。
お、きーさん何を抱えてるんだろー。おいしそうな気配がするぜ。
分厚い布が何かをくるんでいるみたいな物を中央に置いたきーさんは、よっこらせと骨をパキパキ鳴らしながら座った。ちくばはきーさんとせいの隣に座ったたてこうに麦茶を渡す。
一口飲んで二人は、ほっと肩の力を抜いた。
「ご近所さんたちはみーんな帰ったよぉ。誰も怒っちゃいなかったが、るるになんかあったのかってえらい剣幕だったわ。自分からこの家の周りを見て回ってくれていた人も居たよ。るるが暗い中帰って来てないのかと思ったそうな。まさ、明日あんたからもなんか言っときな」
「有難い! るるは愛されているな! まさは夜に声を出したからご近所の皆さんを驚かせてしまったんだな!」
「うん、だから声を落としなっての」
きーさん、まさのおでこをツンツン。まさ、てへって顔で「スマン!」。聞いてるけど行動出来てない。
胡座の上にてんを座らせたうかびは、てんのふわふわした髪を撫でながら首を傾げている。その手が心地好いようで、てんはご満悦顔である。ふくろうの笑い顔みたいだ。
「防音の結界を通すなど、昼でも驚く声量だと思うが……うしおくん、学塔街ではそうなだけで、こちらではそうでもないのかね?」
「いんや、驚くよ。ここでも大きい」
「そうか、もし学塔街にいらっしゃった時は防音ブローチを着けてもらわねばならないな。塔は音が響きやすいから」
「それなら俺もつけなきゃな」
「あぁ、驚いた時の声は大きかったね」
「てか防音ブローチって何?」
「防音結界が枠組みに刻んであってね。その人の声がある一定のデシベルに達した時だけ結界が張られる物だ。特定の物音にも有効な物もある」
「へぇー。おもろい」
うしおの二の腕をてんが人差し指でぷにぷにしている。
俺の二の腕気に入ったんだね。俺が住んでいるアパートの斜向かいの子(六歳)は、俺の二の腕触るとちっちゃな良いことあるって言ってたよ。小さくても良いことのようで幸いです。
「てんもお声大きいよー。大きいけどブローチ着けてないよー、あぱー」
うがびは「てんの奇声はみんな慣れてはいないけど、どんな時に聞こえるのか分かっているからかな」、と言いながらてんのほっぺをもにもに。
柔らかいものを触るのってなんかいいよね。俺は自前の耳たぶ、二の腕に腹があるんでそこら辺困らない。
「そなのー」
頭をうかびの胸元にうりうりとドリルのように擦りつけているてん。
そんなかわいいドリル初めて見たぜ。
「奇声?てん奇声出すの?」
「嬉しいと出るー、あぱはー」
「俺と逆だね。ならブローチいらないかもね」
「あぱー?」
何処かで、この子が喜んでいる証だから。
「さてと、あたしは眠いんだがね、これを食べてから寝るかね。ほれ、煮卵。さっき知り合いがくれてねぇ。火種が余ったから作ったんだと。あったかいよぉ」
きーさんはくるんでいる分厚い布を開き、現れた両手鍋の蓋を外した。温まった醤油の香りがほわりと部屋中に広がっていく。
目を閉じて香りを堪能していると、皆もすぅーっと空気を吸い込んだ気配がする。
「るぅーん。おいしそうるーん、いい香りるーん」
「おいしそうかもねぇ。はい、取り皿あるよ」
ちくばが皿を分け始めた際にまさの作った和え物を見付けたきーさんが、「あたしは麦茶と煮卵だけでいいからね。もう寝るからさ」と誰にともなく三回も繰り返し言っていた。
「はんじにたまご」
「半熟煮卵、るん」
「はんじにゅにたまご」
「るんっ、いい線行ってるん」
「あぱぱーん」
{あらすじ}
煮卵が半熟だったので「半熟煮卵」と言いたかったてんだが、「はんじにたまを」と五回連続で言ってしまい「あう」、と固まったところ。るるが「るん、るると練習するん」とるる先生となり、生徒のてんにと共に部屋の片隅で学舎を開いた。
大人組はそんな二人を微笑ましく見守りながら、今日の反省会を行なっていた。きーさんは煮卵の旨味で目が覚めたらしいです。
以下、うしお記録簿(台本風味)より抜粋。
たてこう「時間帯はどうにかならなかったのですか?昼ならば紛れましょうが、夜にこの騒ぎは目立ちます」
うかび「いやぁ、昼に伺おうとしたんだがあんまりにも楽しそうでねぇ。割り込むには忍びなく……」
ちくば「夜も楽しかったのに……」
うかび「実の所、屋根裏部屋が快適過ぎて寝てた。夜になってたから慌てて降りて来たんだ」
うしお「寝てたの」
照れるうかび。
うかび「しばらく来れないと分かっていたから今日サプライズしたかったんだ。丁度、君たちが集まっていたというのもある」
しゅゆ「質の悪いサプライズだね。うしおとらいあに感謝しなよ?」
ニヤリと笑うしゅゆ。
普段見ないしゅゆを見て戦くうしお。
うかび「鎌の子はおもしろいね」
うしお「いや、うかび。アレ本気よ、本気」
うかび「分かっているよ。おもしろいと言ったのはこの攻撃さ。気付かれないように巧く組み合わされている」
うしお「いま!?ちょっ、俺を挟んで戦わないでくれよ」
しゅゆ「問題ない」
うしお「大有りだよ!」
しゅゆ「その人がうしおを守ってる」
うしお「うかび、ありがとう! 我儘かもしれないけどなんならしゅゆにも守ってもらいたかったけどなんでもないですごめんなさい」
まさ「……あの、何故あなたはここへ?お孫殿まで連れて来て。るるに関係が?」
まさの声が通常の音量な事に戦くうしお。
うかび「まず、てんは完全に予想外だ。まさか護衛の背中に姿を消して引っ付いて来るとは思わなかった」
うしお「どういう状態よ、それ」
うかび「磁石みたいなものかな」
うしお「かわいい磁石だな」
うかび「取り敢えずその護衛は鍛え直し、かな」
うしお「うをう」
うかびの静かな笑みと鍛え直しに戦くうしお。
うかび「来た訳は……そうだなぁ。らいあが起きているみたいだし、話してもいいか」
らいあ起きたの?そっか、記録簿(台本風味)、一旦止めよっかな。なんで台本風味にしたかって?俺が戦いてる様子しかないからさ。
おはよう、らいあ。お、るるとてんが来たぞ。
「らいあ、おはようるん。お顔の色少し良くなったるんね」
「おはよなのじゃー。てんですじゃー。ありら?こちらの方はぶわっ! しないのかのぉ?」
ぶわっ……てなんでしょか?




