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生徒会の役員になります

評価・ブックマークを頂きありがとうございます!

とても励みになります!

学園生活が始まって、2週間が過ぎた。

初日の騒動とアル様との謎のイチャイチャイベント(?)以外は平和に暮らせているのだが、嵐の前の静けさのようだ。


そんな私の予感を的中させるように、私は今、生徒会室に呼び出されている。アル様と、ヴァレンティノ様とも一緒だ。

目の前にはアル様のお兄様で、フランドル王国第一王子であり、フランドル王立学園の生徒会長でもあるルドルフ様、生徒会副会長のマイロ様、書記のルイス様が座っている。


先日のお礼に、マイロ様とルイス様に感謝の意とお詫びの品を送りたい旨を記した手紙を送ったのだが、私に頼みたいことがあるのでお詫びの品はいらないということと、生徒会室に来て欲しいと返事が返ってきた。


「呼び出して悪かったね。レティシア嬢に頼みたいことがあって、マイロとルイから話を聞いてちょうどいいから来てもらったよ。」


金色に近い茶色の髪と、アル様と同じ金色の瞳のルドルフ様は今日も相変わらず美しい。

ルドルフ様もアル様も顔立ちは王妃様似だが、ルドルフ様の方が全体の色素が薄い分、中性的な美しさだ。


「ルドルフ様の頼みであれば、交換条件なんてなくてもお受けしますのに。どのようなご用件なのでしょうか。」


「生徒会の役員は、年度始めの成績が3位以内のものが各学年から選出されるって知ってるよね。」


「もちろん存じ上げていますわ。」


「且つ、男性が選ばれることも?」


「もちろん存じ上げていますわ。」


この国の女性の地位は低い。国家の要職や領地経営は男性が勤めるものとされ、女性は社交や家の中の采配を行う。

フランドル王立学園での生活は、小さな王国として見立てられ、その経営陣と見立てられる生徒会役員は男性が選出される。過去に上位3位内に入った女性がいないことも関係しているのだが。


「明日、入学式の翌日に受けた試験の結果が発表されるのだけど、レティシア嬢が3位だったんだよね。さてどうしようか?」


ルドルフ様は試すような目で私を見る。

ゲームのレティシアも3位で、生徒会役員になっていた。

ちなみにゲーム通りならアル様が1位、ヴァレンティノ様が2位だ。ゲームと違うシナリオを目指すのであればここは辞退すべきなのだろうが、3位は努力の賜物だし、アル様と一緒にいられる時間が長くなる可能性があるのだから、辞退する決心ができなかった。


「あら、性別ってそんなに重要ですか?周辺諸国には優秀なら女性も文官になったり、領主になったりする国もありますわ。我が国も優秀な人材には等しくチャンスが与えられるべきだと思っていますの。だから、性別を理由に、私より成績が下のものに生徒会役員をお譲りする気はなくてよ。」


おい!と、自分の口を張り倒したくなった。私が3位なのだからチャンスが欲しいと言おうとしたのに、すごく高飛車な返しになってしまった。口を開いたら勝手に言葉が出て来てしまったのだ。

ルドルフ様の気分を害したらマズイと、内心ヒヤヒヤしながら様子を伺う。


「うん、レティシア嬢ならそう答えてくれると思ったよ。」


ルドルフ様がニコニコと笑っている。ルドルフ様が望んでいた答えらしかったことにホッとする。


「アル、ヴァレンティノ、君たちを一緒に呼んだことはもう察しがつくよね。」


「私とヴァンも生徒会役員になることが決まっているということですよね。」


「そう。女性が生徒会役員になるのが初めてのことだからね。レティシア嬢が悪意に晒されるかもしれない。私も性別に関係なく優秀な人材は登用する風習にしたくてね。だからレティシア嬢を悪意から守って欲しい。」


「ルドルフ様、悪意くらい自分で対処できなければ、役員は務まりませんわ。お二人の手を煩わせるつもりはありませんので、お気遣いはいりませんわ。」


私の返答に皆が少し目を見開いた後、笑った。


「そう。レティシア嬢らしいね。」


「ほらな、ルド。レティシア嬢にそんな心配無用だって言ったろ。」


私のことどれだけ神経図太いと思っているのか、ルイス様をついついジト目で見てしまう。


「でもシア、何か困ったことがあったら私を頼って欲しいな。」


「アルはいつからレティに甘くなったんだ。こいつにそんな繊細な心はないだろう。」


「ヴァン、あなた相変わらず失礼な人ね。」


アル様の優しさに舞い上がったのを邪魔されたので、思わず昔のように愛称で呼んでしまった。


ヴァレンティノ様と私は幼馴染みだったりする。

昔はヴァンと呼んでいたが、アル様の婚約者に決まって、あらぬ誤解を招かないように一線を引いたのだ。


「シアは誤解されやすいけど、繊細だよ。まぁ、私だけが知っていればいいことだけどね。」


「アル様・・・。」


私の今までの行動のどこに繊細さを感じるところがあっただろうと、自分のことながら不思議に思って心の中で首をかしげる。

それでも嬉しいので、少し頬を染めてしまった。


「ルド、生徒会に甘い空気が漂うのは耐えられないんだけど。」


「マイロ、頻繁には漂わないだろうからさ。それに弟と婚約者のおも・・いや、仲睦まじい姿は微笑ましいから多目にみてよ。」


ルドルフ様はにこやかに誤魔化したけど、絶対に面白いって言おうとした。腹黒属性ですからね。


「しょうがないな。レティシア嬢、先ほどの言葉に二言はありませんね。私はフォローしませんよ。」


「ええ。もちろん心得てますわ。」


「ではよろしく。」


マイロ様はこの前の私の態度が気にくわないのだろう。冷たい。それも想定の範囲内だけど。


「皆さま、よろしくお願い致します。」


こうして私はめでたくゲームの展開通りに生徒会役員になった。


そして翌日、掲示板に試験の結果発表と共に今年の生徒会役員の名が発表された。

予想通り、ざわめきが起こっている。


私が掲示板に近づくと、人垣がさっと割れて通路が出来た。

悪役令嬢らしい展開ね、と心の中でため息をつきながら当たり前のように涼しい顔をして進む。


やはり1位がアル様、2位がヴァレンティノ様、3位が私だった。

掲示板を見ていた私の後ろから、声が聞こえた。


「さすが、レティシア様ですわね(殿方を差し置いて上に立つなんてあなたぐらいですわ)。」


「ナタリー様、お褒め頂き光栄ですわ(私が優秀ってことね)。」


面倒くさい奴が来た。

お互いニッコリと微笑みながら言葉にならない女のバトルが始まったのだ。

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