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これもイベントでしょうか?

アル様とリリアーナ様との町歩きから、心ここに有らずの状態で帰宅をする。

ただ、家族や使用人に心配を掛ける訳にはいかないので、眠りにつくまでは気丈に振る舞った。こういう時、スペアの王妃教育を受けていて良かったと思う。動揺を隠すことはお手の物だ。


そうして翌日。学園に向かおうと玄関ホールを出たところで、丁度王家の馬車が目の前に到着した。


「おはよう、シア。」


アル様が馬車から降りてくる。


「アル様?今日はお約束していなかったはずですが?」


「うん。また先触れもなしにすまないね。どうしてもシアと話しておきたくて。」


アル様がどうぞと促すように手を差し出してきた。


「そうですか。わかりましたわ。」


私はそのままアル様の手を取り、王家の馬車へと乗り込む。


「それで、アル様のお話とは?」


「昨日のことで。シアを傷つけるようなことをして悪かったなと思って。」


「私、前にも申しましたよね?王族が簡単に謝るようなことをしないで下さいと。」


「そうだったね。言い訳のようだけど、リリアーナ嬢との町歩きは恋人という体の方が都合が良くてね。敢えて否定していない訳なんだ。」


「そうでしたの。」


事情はわかるが、アル様の否定しない態度にイライラとして相槌しか打てない。悟られないように優雅に微笑んだが、アル様はお見通しなのだろう。


「私が好きなのはシアだけだから、信じて欲しい。」


「・・・わかりましたわ。」


アル様がとても真剣な顔で言うので、信じようと思えたのに。

その後、私はゲームと同じように裏庭でリリアーナ様とベンチに腰を掛けて楽しそうに話をするアル様を度々目撃することになる。


どうしてこうなったのか。

そう思って歩いていたところを珍しい人物に呼び止められる。


「レティシア様、少しお時間よろしいですか?」


「ナタリー様。どうされましたの?」


「レティシア様と少し話をしたくて。」


「わかりましたわ。今日は生徒会のサロンが空いているはずなので行きましょうか。」


そうして生徒会のサロンでナタリー様とテーブルを囲む。サロン専属の使用人がお茶を出してくれたので、一口口に含んでから切り出す。


「ナタリー様が珍しいですわね。どういったご用件でしょうか。」


「リリアーナ様のことですわ。最近アルベルト様と一緒にいる時間が長すぎるのでなくて?」


ナタリー様が遠回しにお前がもっとしっかりしろと嫌味を言ってくる。ナタリー様だけには言われたくないお小言なので私も嫌味で返す。


「あら、それを言うならナタリー様こそダニエル様を自由にさせすぎではなくて?私はこれでもリリアーナ様に注意はしていますのよ。」


「ダニエル様は私が今でもアルベルト様を慕っていることをご存知ですわ。なのにダニエル様を縛るのも酷でしょう。それより、私はアルベルト様の婚約者がレティシア様だから自分の気持ちに折り合いをつけているのです。あんな誰にでもいい顔をする女にアルベルト様が誑かされないようにしっかりして下さいませ。」


「もちろんそうしますわ。」


「わかっているなら良いのです。さて、用件も済みましたし失礼しますわ。」


「ええ。」


そうしてサロンを去っていくナタリー様を見送る。ナタリー様が一応私のことを認めていてくれていることは意外だった。

少しの間、一人で紅茶を楽しんでから教室へ荷物を取りに戻ることとする。ふと、ナタリー様の席にハンカチが置いてあることに気がつく。ナタリー様が忘れたのだろう。もう帰っているかもしれないが、ついでに届けることにする。


「レティシア様、そちらを忘れてしまい申し訳ございません。」


サロンを出ると、ナタリー様が丁度戻って来たところだったようで声を掛けられた。


「まだ帰られていなかったのですね。良かったです。」


「ありがとうございます。」


ナタリー様にハンカチを返して、一緒に教室へ向かう。階段を降りようとしたところで丁度リリアーナ様が階段を登ってきた。すると、後ろから淑女らしからぬバタバタとした足音が聞こえたと思ったと同時に、肩に衝撃が走り、私の横を勢いよく人影が横切っていった。

後ろから来た誰かが私の肩にぶつかったようだ。

思わずバランスを崩しそうになり、手すりを掴もうと手を伸ばしたところでいつの間にか目の前にいたリリアーナ様の体を押してしまった。


「きゃあああっ!」


私は辛うじて体勢を立て直したものの、リリアーナ様が階段を転げ落ちていく。


「「リリアーナ様!」」


ナタリー様と一緒に急いでリリアーナ様の元へと駆け寄る。

リリアーナ様は息をしているが、気を失っているようだった。呼び掛けても返事がない。


「レティシア様、私ダニエル様を呼んできますわ。あの脳筋に保健室へ運んでもらいましょう。」


私が動揺していると、ナタリー様がすぐに動いてくれた。


「リリアーナ様!」


私はリリアーナ様の無事を祈りながら、声を掛け続ける。

そして、ふと気がつく。ここはゲームでレティシアがヒロインを階段から突き落とした場所と同じではないか。


状況が少し違うものの、シナリオと同じような展開に私は指先から血の気が引いていくのを感じた。

評価・ブックマーク・感想を頂きありがとうございます。

物語の都合上、完結するまでは返信は控えさせて頂きます。

暫くモヤモヤ展開が続きますが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

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