聖夜祭の前
あれからリリアーナ様への嫌がらせは無くならないものの、エスカレートはせずにいるらしい。
時折ダニエル様に疑いの目を向けられることはあるが、私の学園生活も平穏を取り戻したと言って良いだろう。それに同じクラスの令嬢達とも仲良くなれて、アル様と一緒の時以外はリーンや同じクラスの令嬢達と過ごすことがほとんどで学園生活が楽しくなった。今日も授業の後、生徒会のサロンを借りてお茶会をしている。聖夜祭があと一週間後に迫っていることもあり、専らの話題は聖夜祭についてだ。
「もう少しで聖夜祭ですね。レティシア様はアルベルト殿下がエスコートされるのでしょう?王宮まではどうなさるのですか?」
「お父様とお母様と一緒に王宮まで馬車で向かって、すぐにアル様がお迎えしてくれることになっていますの。皆さんは?」
「私は婚約者が馬車で屋敷まで迎えに来てくれることになっていますわ。」
「私も同じですわ。」
「私はまだ恥ずかしながら婚約者がいないので兄がエスコートしてくれることになっていますの。」
「私は従兄弟が。」
一緒にテーブルを囲む令嬢達が口々に答える。
「リーンは?」
「私はエスコートしてくれる相手がいないから両親と参加するわ。」
「あの、アイリーン様の婚約者候補の噂は本当ですか・・・?」
「ええ。まだあちらが誰を正式な婚約者にするか決めていないから、結局私に婚約者はできないままね。」
リーンは近隣国の小国の王太子の婚約者候補の一人だ。周辺諸国や自国の令嬢達が婚約者候補なのだが、まだ誰を正式な婚約者にするか決まっていない。
こちらの国の方が大国だが、婚約者を途中で降りるとも言えないのでリーンはここ5年くらい婚約者候補のまま宙ぶらりんの状況だ。
「そうなのですか・・・。もし婚約者が別の方に決まった時、アイリーン様の嫁ぎ先に相応しい方には婚約者が決まってしまっているでしょうに・・・。」
「あら、私は政略結婚なんて御免だから実は都合がいいの。卒業後は王宮で女官として勤めるのも良いかなと思っていますのよ。」
「リーンは大概逞しいわよね。ルドルフ殿下の婚約者候補であったお姉様に引っ付いて王宮のお茶会に参加しては女官の観察をしているんですもの。」
「あの時はまだ7歳の子が姉離れできなくて甘えて着いて行ったように見せかけて上手く立ち回っていたはずなのよ?まさか同年代の子に気づかれるとは思わなかったわ。さすがに王妃様には気づかれていたけど。」
「まぁ普通の令嬢はルドルフ殿下やアル様の美しさに見惚れて気づかないわね。」
「レティシア様はその頃からご慧眼がおありになったのですね。」
「レティはその頃から既に山のように高い公爵令嬢の矜持を持っていたからね。それでルドルフ殿下やアルベルト殿下の他の婚約者候補から面白いように煙たがられてたけど。」
「リーン、一言余計よ。」
「あら、本当のことじゃない。あのナタリー様すら泣かせたことがあるじゃない。レティといると退屈しなくていいわ。」
「リーン!これ以上はほじくり返さなくて結構よ。」
「ナタリー様を泣かせるなんて何をなさったのです?って聞いてはいけないことですね。ふふ、レティシア様とアイリーン様は仲が宜しくて羨ましいわ。」
「あら、私は皆さんとも仲良くなれたと思っていますのよ。ただ、昔の私は真っ直ぐすぎて恥ずかしいので・・・。」
「わかっていますわ。私達もレティシア様とこうして仲良くなれて嬉しいですし。」
「ふふ、ありがとうございます。」
そうして和やかにお茶会を終えて帰宅する。
屋敷に着くや否やお母様がニコニコしながら玄関ホールで待ち構えていた。
「お帰りなさい、レティちゃん。アルベルト殿下からの贈り物が届いているわよ。」
どうやらドレスと髪飾りが届いたらしい。
ドレスは大分前に出来上がっていたが、髪飾りは急な依頼だったのでギリギリの仕上がりになったようだ。
「レティちゃんの部屋に箱を運び入れているわよ。私も同席して良いかしら?」
「もちろんですわ、お母様。早速見に行きます。」
アル様からのプレゼントを早く確認したくて足早に部屋へと向かう。
メアリーが部屋で待機していてくれたらしく、案内してくれる。
まずは大きな箱を開けると試着の時に着たアル様の色を思わせるドレスが現れる。
「まぁ、綺麗。レティちゃんは殿下に愛されているのね。」
「お母様、口に出されると恥ずかしいです。」
ドレスを見たお母様が優しく微笑んでくれている。生暖かい目に頬が熱を持つ。メアリーにドレスをハンガーに掛けてもらっている間に小さい箱の方も開ける。
そこにはアル様の象徴家紋を思わせる百合をモチーフにした金細工にブラックスターサファイアを嵌め込んだ美しい髪飾りがあった。メッセージカードも添えられていて、この前贈ってもらったペンダントとイヤリングも一緒に付けてくれると嬉しいと書いてあった。元からそのつもりであったのだが、アル様から言われると嬉しい気持ちになる。
「まぁ、こちらも。もう溺愛の域ね。」
アル様の色の贈り物ばかりで、お母様から言葉が溢れる。
「溺愛って・・・。でも嬉しいです。」
アル様からのプレゼントを早く身に纏いたくて、聖夜祭が待ち遠しくなるのであった。
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