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これは強制力ってやつですか?

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ありがとうございます!励みになります!!

保健医を呼んで来てくれたマイロ様にお礼を言って、アル様と私は入学式に向かった。

入学式はアル様が新入生代表で挨拶する姿に見とれていると、あっという間に終わった。


そしてアル様と一緒に教室へ向かう。ゲームの設定と同様、私はアル様とヴァレンティノ様と同じクラス、ヒロインはダニエル様と同じクラスだった。

教室に入るとアル様はヴァレンティノ様のところへ向かう。どうしようかと周りを見渡すと、赤い髪にルビーの瞳の派手系美女なマルベリー侯爵家のご令嬢、アイリーン・マルベリー様と目が合った。


「レティ、相変わらずアルベルト様と仲が睦まじいようで何よりだわ。」


「リーン、からかわないでくれる?」


「あら、本当のことじゃない。入学式の前の騒動は聞いたわよ。」


「ああ、あれね。マイロ様とルイス様には悪いことしたから、後で改めてお礼はするつもりよ。」


「あら、悪いって自覚はあったの。」


「もちろんよ。私を誰だと思っているの。」


「はいはい。レティシア様ですもんね。」


リーンは私の親友だ。だから遠慮なしに発言してくる。縦社会の貴族界で、絵に描いたように気位が高い私と対等に接してくれる存在は貴重だ。リーンが侯爵家のご令嬢ってこともあるけど。

前世の記憶が甦ってからは、爵位なんて関係なく友達が欲しいと思ったけれど、レティシアとして培った高位貴族のプライドが邪魔をした。

友達を作る機会としては、この学園生活は絶好の場なのだが、出だしからしくじった。


このフランドル王立学園は15歳~18歳の貴族だけが通う。人脈作りの場とされているので、学園では皆平等に接するのが理念だ。私はさっき、爵位という笠を着て先輩を使ってしまった。しかもマイロ様は生徒会の副会長、ルイス様は書記であり、平等が理念の学園とは言え、生徒を取りまとめる頂点の方々だ。一つ言い訳をすると、今日は入学式のため、先輩が生徒会のみだったので仕方がない。新入生は保健医の顔なんて知らないし。ちなみに生徒会長はアル様のお兄様のルドルフ殿下だ。

ルドルフ殿下とは1年しか学園生活が重ならないので、攻略が難しかったのよねとふとゲームのことを思い出していると、担任の先生が教室に入ってきたので、リーンとの会話を切り上げて席についた。


席は右隣がアル様、左隣がヴァレンティノ様だ。ヴァレンティノ様は長い銀髪を一つにまとめ、切れ長の紫の瞳に眼鏡をかけたインテリ系美男子だ。ゲームにありがちな配置である。が、メインキャラクターの私たちは郡を抜いて見目麗しいので正直目立つ。授業で居眠りなんてしたらすぐに目につきそうだ。

担任の先生からこの学園での規則の説明を受ける。この後校内案内があり、本日の予定は終了だ。


正直、校内はゲームをやりこんでいたので、どこに何があるかの把握はバッチリだ。

ああ、攻略対象と密かに想いが通じるスチルの噴水!密会をする図書室!一緒に食事をするテラス!なんて一生懸命興奮を隠しながら見学する。

最後、ヒロインが攻略対象と結ばれ、レティシアが断罪されるダンスホールに着いた時は、一気に気が滅入ってしまったけれど。


私たちがホールを出る時、隣のクラスが入れ替えでやって来た。さっき足を捻挫したヒロインは、ダニエル様にエスコートされながら歩いている。

ダニエル様との親密度アップのイベントのようだ。


ゲームではダニエル様は脳筋&同じクラスということで、攻略がチョロいキャラだ。このイベントはヒロインが校内見学のために椅子から立ち上がった時にフラつき、隣の席のダニエル様が捻挫に気づいてエスコートするという展開で、何もしなくても発生する。しかもこのイベントはエスコートされるだけで勝手に好感度が上がる。ダニエル様も攻略対象なだけあって、栗毛の短髪に緑の瞳の男らしい顔つき、騎士候補らしい逞しい体と、見目麗しい。性格はサッパリとして明るく、ちょっとお馬鹿なところが可愛いと、結構ファンが多かった。ただ、ファン達は、攻略が簡単すぎてやりがいがないと嘆いていたのよね。

ダニエル様は攻略対象の中で1番長身なので、小柄なヒロインが余計に可愛らしく見えるわね、とヒロインを見ていたら、私の少し前を歩くアル様とすれ違う瞬間、目がギラリと光った気がした。

その直後、「キャッ」と声とともにヒロインの体がアル様の方へ傾く。咄嗟にアル様がヒロインの肩を抱き止め、支えたのが見えた。


「申し訳ございません!」


「アル、すまん!私がエスコートしていながら。」


「構わないよ。あれ、君は?」


「はい!入学式の前も失礼しました。リリアーナ・ワーグナーと申します。2回も助けて頂きありがとうございました!」


ヒロイン改めリリアーナ様はぱっと周りが華やぐような可愛い笑顔でお辞儀をした。

ダニエル様の顔が赤くなるのが見えた。


「たまたま近くにいただけだから、気にしなくていいですよ。」


アル様はいつもの口調で答えたけど、こちらからは表情が見えなくて急に不安に襲われる。


そもそも、ダニエル様のイベントではアル様と話す機会はなかったはずだ。

私がアル様との出会いを台無しにしてしまったから強制力が働いた?

それとも、リリアーナ様ももしかして転生者?


どちらにしろ、気安くアル様に近づかないでと詰め寄りたい気持ちと、ヒロインに関わるのは危険という気持ちとが頭の中でぐるぐる回る。


「あの・・・」

「アル様・・・」


ヒロインが口を開きかけたのと同時にアル様を呼ぼうとしたけど、その瞬間あまりに気分が悪くて目の前が暗転した。


「シア!」


私の声なんてあまりに小さくて届かないはずなのに、遠のく意識の中でアル様の声が聞こえた気がした。

都合のいい幻聴かもしれないけど、私はそのまま意識を手放したのだった。

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