悪役令嬢再び
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アル様に似ているけれども、金髪に近い茶色の髪に金色の瞳で中性的な美しさのルドルフ様、オレンジ色のフワフワした髪にエメラルド色の瞳の可愛らしいけれど美しい面立ちのマイロ様、ブルーグレーの長髪にサファイアのような色の瞳の男らしい美しさがあるルイス様に囲まれているリリアーナ様はとても目立っていた。
ルドルフ様は生徒会室で話をリリアーナ様の話を聞くことはあっても、行動を共にすることは今までなかったので衝撃を受ける。
周りの方も同じだったようで、ざわめきの後は静寂が訪れた。
「ルドルフ様、こちらの席が空いていますわ。こちらでよろしいでしょうか。」
「ああ、リリアーナ嬢ありがとう。」
「ルドがテラスで食事をとるのは相当久しぶりじゃないか?」
「そうだな、生徒会の執務室かサロンで食事することの方が多いからな。ルイはここで女性に囲まれているという噂を良く聞くが。」
「ははっ、まぁそこは流してよ。」
そう、ルドルフ様はほとんどテラスで食事をしない。だからこそ周りの人は余計に衝撃を受けているのだ。
「ルドルフ様はお忙しいのですね!私も何かお役に立てるといいのですが・・・。」
「気持ちだけで十分だよ。ありがとうリリアーナ嬢。」
リリアーナ様に役に立ちたいならまず振る舞いを何とかしろと言いたくなるが、グッと堪える。
盗み聞きははしたないのだ。
「まぁ、驚きましたわね・・・。」
「そうね・・・。どうなさったのかしら・・・。」
「シア、兄上にも考えがあるだけだから心配する必要はないよ。」
「そうですか・・・。」
リーンがポツリと本音を漏らし、私も取り繕うことができず、動揺を見せてしまう。
アル様は心配ないと言うけれど、ルドルフ様と楽しそうに話すリリアーナ様を見ると、ルドルフ様ルートで世界が動いているのではと不安になる。
「それにしても・・・。」
「ええ、あれはないわね。」
リーンがチラリとリリアーナ様の様子を見て眉をひそめた。私は扇子で口元を隠して、怒りが現れそうになる表情を誤魔化している。
リリアーナ様はルドルフ様の前だというのに、カチャカチャと音を立てて食事をしている。
いくら学園とは言え、王族の前で美しくない所作で食事をするのはマナー違反だ。
周りの席のご令嬢も眉をひそめている者が多い。
今すぐ注意をしに行きたいが、王族が食事中の席に口を挟みに行くのも無礼だ。
どうしようかと考えを巡らせていると、ルイス様がリリアーナ様に声を掛けた。
「えっと、リリアーナ嬢。貴方は色々と自由奔放な性格なのだね。」
「貴族の方からすればそうかもしれませんね。だからか私、なかなか皆さんに馴染めなくて・・・。」
リリアーナ様は一瞬ポカンとした後、庇護欲をそそるような困った表情でルイス様の方を見た。
あれは何を言われたのか絶対わかっていない。要するに、振る舞いも自由であればマナーもなってないと遠回しに指摘したのだが。
「そうか。でも努力はしているのだろう?」
「ええ、これでも・・・。でもなかなか上手くいきませんね。」
何を努力しているのかツッコミたくなる。小さな子供でも1年あればカチャカチャと食器の音を立てずに食事をすることくらいはできるようになる。本当に難しいのは優雅に食事を食べる所作なのだ。気品は一朝一夕にしてつくものではないからだ。
「マナーの教師はつけていないのか?」
「いえ、ついて下さっています。今の方で5人目かしら。どうしてか皆さん家庭の事情で辞めてしまい、なかなか授業が進まないのです。」
マイロ様がリリアーナ様に聞くと、思いも寄らぬ返答が返ってきた。家庭教師が短期間で変わると授業に支障がでるのはわかるのだが・・・おそらくリリアーナ様の成長のなさに家庭教師が匙を投げたのだろう。
教えてこれでは自分の教師としての力量が疑われるから仕方がない。
「そうか、大変だな。」
「いえ、ルドルフ様に比べれば大変なことなどございません。だから私、何かお力になりたくて!」
リリアーナ様がルドルフ様に「きゅるん」と効果音が聞こえるような可愛らしい潤んだ瞳で上目遣いをした。
「そうか。私は大丈夫だから、リリアーナ嬢はリリアーナ嬢にできることを精一杯頑張ってくれたまえ。お互いに頑張ろう。」
要するに、リリアーナ様の手伝いはいらないから、リリアーナ様はまずは貴族としてのマナーを身に付けろと言っているのだ。
ルドルフ様達の狙いは何となくわかった。遠回しにリリアーナ様に注意をしているのだ。
「はい、ルドルフ様!お互いに頑張りましょう!」
でも遠回しな表現にリリアーナ様が気づくわけもなく。そう言うと、急にルドルフ様の手を握った。
さすがのルドルフ様も困惑気味である。
「シア?」
「アル様、少し失礼しますわ。」
リリアーナ様のあまりの鈍さに我慢ができなくなり、つい動き出してしまう。
パシッ。
「キャッ。何をするのですか、レティシア様!?」
私はまたリリアーナ様の腕を扇子で叩いた。
前回の反省を踏まえて、リリアーナ様の腕が赤くならないように力加減はバッチリだ。
「私、前にも申しましたよね?婚約者のいる男性に触れるのははしたないと。それに、ルドルフ様は王太子殿下ですのよ。馴れ馴れしく触れるなんて不敬ですわ。」
「だからと言って、扇子で叩くなんて酷いわ!」
「今回は謝りませんわよ?注意するために軽く叩いただけですし。リリアーナ様こそ、酷くありませんか?私が何度も注意したことを覚えていて下さらないなんて。」
「忘れているわけではないわ。私だってこれでも一生懸命頑張っているのに・・・。ひっく・・・。」
想定してはいたが、やはりリリアーナ様が泣き出した。このままこの場で泣かしておくわけにはいかないので、リリアーナ様に声を掛けようとしたところでアル様がそっと隣にやって来た。
アル様が何か言おうとリリアーナ様の方を向いている。
もしかしたらアル様がリリアーナ様をどこかへ連れていくのかもしれないと思い、私の顔はサッと青ざめ、咄嗟に俯くしかできないのであった。
毎日更新を心掛けていましたが、ストックが底をつきそうなので2~3日に1度の更新頻度にしようかと思います。
拙い文章ですが、引き続きお付き合い頂ければ幸いです。




