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閑話 ~sideヴァレンティノ~

本日二話目です。

よろしくお願いします。

「なぁアル。レティがおかしな行動をしているの気づいているよな?」


「もちろん。何をしようとしてるのかね。おおよそ見当はつくけど。」


「まぁな。」


レティはここ最近、頻繁に隣のクラスを訪れたり、昼食はいつも決まった席でとっていたのに、座席を転々とするようになった。昼食の席の近くには必ずリリアーナ嬢がいるし、隣のクラスのご令嬢がレティに何か相談をしていたようなので、おおよそリリアーナ嬢の振る舞いに対して何かしようとしているのだろう。


リリアーナ嬢は1年前まで平民として暮らしていたこともあり、市井にも詳しく面白い令嬢だ。ただ、貴族の令嬢としては男性と接する距離が近い。レティのことだから、「貴族の令嬢としてはしたないですわ!」とかお小言を言おうとしているのだろう。


レティとは3歳からの付き合いだ。私の父がレティの父親を弟のように可愛がっており、子供たちが同じ年ということもあって、物心付いた頃から交流があった。両親はレティを婚約者としたかったそうだが、私が8歳の時、10歳年の離れた兄が隣国に留学していた時に隣国の公爵家のご令嬢と恋に落ち、婿入りするため国を出たので私が公爵家を継ぐことになり、レティを婚約者とすることはできなくなった。レティはノクタール公爵家の一人娘のため、婿養子が必要なのだ。両親はレティを可愛がっていたけど、子供の幸せが一番なのだ。普通は嫡男を婿に出さないが、隣国との縁ができること、私がいたことから兄上は隣国へ行った。


私が公爵家を継ぐこととなって程なく、レティはアルの婚約者候補となった。

レティは誤解されやすい。暫くはアルに煙たがられていた。


レティは昔からザ・ご令嬢なわけではなかった。小さい頃は表情がくるくると変わり、よく笑う子だった。あまりにも正直に顔に出るものだから、社交界でやっていけるのか心配したくらいだ。


レティが変わったのは6歳の頃、家庭教師がついてからだった。家庭教師がついてから会う度に、感情が読み取れない表情と完璧な社交用の笑顔を張り付けるようになっていった。

ノクタール公爵家に招かれ、少し早く着いたので庭を散策していたある時、レティとよく小さい頃に秘密基地と言って遊んでいた場所でひっそりと泣いているレティに出くわした。


「ヴァン!何でここに。」


「少し早く着いから、庭を散策させてもらっていたんだよ。」


「そう。今見たことは誰にも言わないで。」


「何で?そんなに辛いならおじさんに相談すればいいのに。」


「辛くないわ!私が男に生まれなかったから、優秀な婚約者を見つけなきゃいけないの。そのためにも私は立派な令嬢にならなきゃいけないの。淑女は人に涙を見せないって先生が言っていたわ。だからヴァンは何も見なかった。いいわね!」


「はいはい。わかったよ。」


レティが完璧な令嬢になろうとしたのには理由があったのだが、そもそも昔のレティのことをアルは知らない。レティはアルに好意を抱いているようなのに、あまりにもアルがレティを嫌うから、アルにはもう少し素の自分を見せればいいのにと思いながらも過ごしていた10歳の時、転機が訪れた。


レティがアルを庇って毒に倒れたのだ。お見舞いに訪れた時、今にも消えそうな青白い顔でうなされるレティを見て、私は自分の気持ちに激しく動揺をした。大好きな友人のアルに初めて憤りを覚えた。そしてレティをこのまま失いたくないと思ったのだ。アルがレティを大切にしてくれないのなら、自分が幸せにしたいとも。


ただ、目を覚ましてからのレティは毒の影響なのか少し変わった。相変わらず完璧な令嬢として振る舞っているものの、瞳の奥をよく見ると感情が見え隠れするようになった。親しい者しか気づかないような些細な変化だったがアルもそれに気づいたのか、レティへの態度が変わった。


レティがアルの正式な婚約者となってから暫くして、アルが王太子教育を真面目に受けるようになった。どういう風の吹き回しかと思っていたら、アルと一緒に剣の稽古を受けた後、アルに呼び止められた。


「ヴァンの言う通り、私はシアのこと誤解していたよ。シアは私が幸せにするから、シアのことを託してくれるかな。」


いつの間にかアルがレティのことを愛称呼びしていた。それに、アルは私の気持ちをお見通しのようだ。


「レティが幸せになるなら文句はないさ。」


「そう、ありがとう。」


それからのアルはレティの反応を面白がりながらもレティのことを大切にしていた。


今は目の前で鼻唄を歌いながら、アクセサリーのデザインをしている。デビュタントでレティに送るものらしい。


「自分の色の宝石を送るなんて、アルも変わったな。」


「そうだね。どうしてか本人に大切にしていることが伝わっていないみたいだからね。」


「それはアルがわざとレティが動揺するのをわかっていて、反応を楽しんでいるからだと思うよ。」


まあレティが鈍感だということもあると思うが。


暫くして生徒会の執務室を出たところで、泣きながら走り去るリリアーナ嬢が目に止まった。

生徒会の役員専用のサロンから出て来たようで、取り敢えず様子を覗くとシアと隣のクラスのご令嬢達がいた。


隣のクラスのご令嬢達が状況を説明してくれる。

予想通りの展開だった。


「私は皆さんの一件とは関係なく、自分の信念を貫いただけですわ。ですのでアル様、ヴァレンティノ様、何かございましたら私がお受けしますわ。」


レティらしい答えだった。こういう所が冷たいとかプライドが高いとか誤解を受けやすい所なのだが。


「いや、別に様子を見に来ただけだから。ヴァンは何かある?」


「いや、特には。強いて言うならレティ、あまり無茶はするなよ。」


「それには私も同感だな。」


「アル様もヴァレンティノ様も私を誰だとお思いですの?無茶などしていませんわ!」


「「はいはい。」」


アルも私もレティの本質はわかっているので聞き流す。


レティは自分の矜持に従って、面倒なことに自ら突っ込んでいくところがある。

相変わらずな行動に呆れつつも、今日も初恋の相手の幸せを願わずにはいられなかった。

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