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婚約破棄ですって?

「「レティシア様!助けて下さい!!」」


昨日の腹の虫が収まらないまま登校すると、隣のクラスの女子生徒数名に囲まれた。


平穏に暮らしたいので面倒なことに巻き込まないでくれと思いつつ、みんなの顔があまりにも悲壮感漂うものだったので話を聞く。


「隣のクラスの方々ですわね。どうかなさいましたか?」


「レティシア様にこんなことご相談するなんて失礼だと承知しているのですが・・・私どものクラスのリリアーナ様に振る舞いを注意して頂けませんか!?」


「え・・・。どういうことかしら?」


「リリアーナ様って大変可愛らしいでしょう?なので同じクラスの私どもの婚約者達がリリアーナ様によく話しかけているのですが・・・リリアーナ様って最近まで平民だったせいか・・・その、婚約者のいる男性への接し方の距離が近すぎると言いますか・・・。それで私どもの婚約者がリリアーナ様に好かれていると勘違いしてしまいまして・・・。」


「リリアーナ様にはあまり勘違いさせるような行動をしないで欲しいと言いましたの。でも普通に行動しているだけなのに嫉妬で責めるなんて酷いと泣かれてしまいまして・・・。」


「リリアーナ様が泣きはらした目で教室に戻ってきたものだから、私どもの婚約者が何があったかリリアーナ様を心配して、私どもに注意されたと言ったのです。」


「そうしたら、そんな性格の悪い女とは結婚したくないと婚約破棄をされかけまして・・・。まだ両親が頭を下げて、婚約者の家に話を止めていてもらっているのですが、時間の問題かもしれなくて・・・。」


「お恥ずかしながら私ども、子爵家・男爵家の中でもあまり裕福な家ではなくて・・・。リリアーナ様は伯爵家でしょう?リリアーナ様にはこれ以上強く言えませんし、私どもの婚約者の家としてもリリアーナ様の家柄の方が縁を結びたいようで・・・。」


「でも、私どもの家はこの婚約に賭けているのです。やっとの思いで結んだ婚約ですの!この婚約がなくなったら、一家全員没落しかねない状況ですの。」


「もう生徒会のメンバーでもあるレティシア様に頼るしかできなくて・・・。失礼なのはわかっていますけど、どうかお願い致します!」


ゲームではこんなエピソードなかったわよねと思いつつ、何だか深刻な事態になっているようだ。

アル様への前科2犯があるのできっと彼女達が言っていることが正しいのだろう。でも私は最期断罪される可能性がある以上、慎重に動きたい。


「わかりましたわ。でも、一週間時間を下さらない?私はリリアーナ様が皆さまの婚約者と仲良くしているところを見たことがないのです。皆さまを疑っているわけではないのですが、現状を正しく認識しておかないと注意ができないと思いまして。」


「ありがとうございます!何とか一週間、婚約破棄の話はなかったことにして頂くようがんばりますので!どうかよろしくお願い致します!!」


こうして私の一週間リリアーナ様ストーキング生活が始まった。


休み時間になってリリアーナ様がアル様のところへ来ない時は、私にお願いをしてきたご令嬢に用事があるように装い、リリアーナ様の教室へ行き、様子を見る。

ランチタイムはさりげなく近くの席へ座る。


アル様に時折会いに来る時もだいぶイライラしたが、リリアーナ様はどの男性とも距離が近い。時折ボディタッチなんてしたり、男性が好意を持たれていると勘違いするのも納得だ。


リリアーナ様はナタリー様から無視をされているせいか、同じクラスに女性の友人はいない様子だ。常に男性と一緒に行動している。ゲームでは攻略対象者と行動していて、ゲームだからと全く気にならなかったが、貴族の令嬢としてはあり得ない行動だ。これは私が注意するしかなさそうねと憂鬱になりながらも、リリアーナ様を呼び出すことにした。


そして放課後。生徒会メンバーだけが使用できるサロンにリリアーナ様と私に相談してきた令嬢達を招いてお茶会を開催した。


「レティシア様、本日はお招きありがとうございます。」


皆が口々にお礼の挨拶をする。


「レティシア様、お招き頂きありがとうございます。でもどうして私を?」


「リリアーナ様とは少しお話をしたいと思いまして。」


リリアーナ様が最初から尋ねてきたし、面倒なので早速本題に入ることにする。


「リリアーナ様、こちらにいらっしゃる皆さまの婚約者はご存知?」


「はい。同じクラスの方々ですよね?どうかなさいましたか?」


「どうかなさいましたって、あなた婚約者がいる男性といつも一緒にいらっしゃるでしょう?しかも、婚約者のいる男性に過度なスキンシップまでして。貴族の令嬢として、非常識ですわ。もっと行動を慎むべきですわ。」


「そんな!お恥ずかしながら私、クラスの女性とあまり上手く馴染めていなくて・・・。でも男性はお友達になって下さったので、友人として接しているだけなのに非常識とは酷いです!」


まさかの回答に頭が痛くなってきた。


「友人として接するにしても貴族には適度な距離というものがありますの。ここは貴族の学園で、あなたは貴族の一員。いつまでも平民の感覚でいてもらっては迷惑ですわ。」


「私は誰にも迷惑を掛けてないわ!」


「いいえ、現にこちらにいらっしゃるご令嬢達があなたに好意を抱いた婚約者に婚約を解消されそうになっているのよ。」


「そんなの言いがかりですわ!婚約者を繋ぎとめられない責任を私に押し付けないで下さい!」


「何ですって!」


パシッと一人のご令嬢がリリアーナ様の頬を叩く寸でのところで手を取り制止する。


「リリアーナ様、それは言い過ぎですわ。そもそも令嬢が婚約者でもない殿方とずっと行動するのはマナー違反ですわ。貴族令嬢としての行動を心掛けて下さい。」


「では私にずっと一人でいろと言うのですか?酷いですわ!」


リリアーナ様が涙をポロリと溢す。


「あと、令嬢なら人前で泣かないように努力して頂ける?」


追い討ちをかけるようだが、言うべきことは言う。

案の定、リリアーナ様は大粒の涙をポロポロと流し始めた。


「申し訳ありませんが、失礼します。」


リリアーナ様が扉を勢いよく開けて出ていった。

私たちはリリアーナ様の行動に驚き、暫く呆然と扉の方を見ていた。


「失礼、こちらからリリアーナ嬢が泣きながら走り去るのが見えたんだが何かあったかな?」


すると、まさかのアル様とヴァレンティノ様が扉の向こうから姿を現した。


また私が悪者みたいじゃないかと、顔が青ざめていくのだった。

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