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序章

登場人物

鈴木兎姫乃 すずき ときの 

鈴木伸哉 すずき のぶや 兎姫乃の父

鈴木友喜 すずき ゆき 兎姫乃の母

田中 沙弥佳 たなかさやか 兎姫乃のクラスメイト

高橋 羽月 たかはし はづき 兎姫乃と同じ学校へ通う同級生 モデル

文弱猛士ガユガイン ぶんじゃくもうし 本名 カグツチノアマツツミ

言霊主 ことだまぬし 電脳世界に生まれた新しい神 ガユガインを支援する

菊理媛 くくりひめ 黄泉の国のナンバーツー

 真っ暗な東京の上空。中秋の名月の下をJアラートと戦闘機の飛ぶ音が交差した。


 高層ビルを横目に巨大な人影が対峙する。


 一つは、赤々と燃える炎の鎧を着た巨人。


 もう一つは、黒い雲に覆われた女神だ。


 どちらも無造作に浮遊しており、この世のものではない。



「気をしっかりね、ガユガイン」



 少女は炎の巨人の中から声を掛けた。



「ああ」



 ガユガインと呼ばれた巨人の声は、その胸の中に響く。


 ガユガインの中、雲の上に立つ鈴木兎姫乃(すずきときの)は、八百万(やおよろず)御代筆(みよふで)と呼ばれる万年筆をくるくると指先で回した。


 雲の上は三百六十度のパノラマで、遮るものはない。本当は、景色と兎姫乃の間にガユガインの体があるはずだった。兎姫乃からすれば、ガユガインは視界を遮るものではなく天から降る声そのものだ。コクピットに該当するのは、膝下にある雲だけである。その雲こそがガユガインの中で、人間が立っていられる唯一の場所だった。


 人間の身でありながら雲に乗る感動はもうない。無人の都となった東京を見下ろして得られるのは、日本が終わるかもしれないという焦りだけだった。



「兎姫乃の小説だけが頼りだ」



 ガユガインの声に迷いはない。


 兎姫乃は責任の重さを改めて感じた。死ぬかもしれないという危機感から、心残りがないようにと化粧をし、なけなしのオシャレをして来たのだ。ミニスカートにブラウス姿で化け物みたいな存在と戦ったことを誇りに思う。


 回していた万年筆を止めて、兎姫乃は深呼吸する。


 今から書かなければならないのだ。


 歪められた女神の怒りを静めるために心を震わせる小説を。

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