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21.尋問!

お待たせいたしました。

少し短くなってしまいましたが、よろしくお願いいたします。

ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、言い訳はあとがきで。

 大湊が意識を取り戻したとき、まず自分が殺されていないことを身体の痛みで知った。

「……あまり居心地が良い環境ではないようだ」

「目覚めてまず軽口だなんて、余裕があるのね」

「小汚くてむさくるしい男たちではなくて、中身はともかく見目は麗しい女性に起こされたのだから、多少は気分が楽なのだよ」


 言いながら視線を巡らせた大湊は、自分が船の甲板に鎖で固定された状態だとしった。

 大きなマストにたっぷりの風をはらんだ船は、晴れ渡った大海原を快調に進んでいるらしい。

「一つ頼みがある」

 目の前に立つプレースは無言だったが、大湊はニヤリと笑って続ける。


「どうせなら船首の方に向けてもらえないか。せっかくだからこの船の風を感じておきた……うっ!」

 返事はつま先がめり込むほどのみぞおちへの蹴りだった。

 咳払いだけで痛みに耐える大湊に、プレースは不機嫌な顔で見下すような視線を送る。

「わたしが知りたいことだけ喋ればいいのよ」


「悪いが、職務規定があるのでね。伝えられることは少ない」

「職務……あんたたちは、どこかの軍隊なのね。それがどうしてエルフの味方をするのかしら」

「ううむ。難しい質問だ」

 じりじりと肌を焼く三つの太陽がプレースの肩越しに見えて、大湊は顔の表面が熱くなるのを感じていた。


 これも海賊たちのやり方なのだろう。

 日干しにして体力を奪い、さらには拷問を加えて情報を引き出すのだ。

「我々は……軍隊ではないのさ」

「なら、なんだって言うの? 傭兵とでも言いたいの?」

 この世界に傭兵団は存在するらしいとプレースの言葉から推察した大湊だが、それどころでは無い。


「うっ……」

 プレースの足が座り込んだ格好の大湊の腹を踏みつける。

 鋭いヒールが下腹部に突き刺さり、鋭い痛みが走った。

「面倒事は嫌いなのよ。さっさと喋ってくれたら、楽にしてあげるんだけれど?」

「それはできない」


 疲労の色は濃いが、大湊ははっきりと断った。

「我々は誰かの命を、生活を助けるために戦っている。君たちにも戦う理由があるのだろうが、他者を傷つけて益を得る行為に手を貸すわけにはいかない」

「それが自分の死を意味するとしても?」

 大湊は答えず、ただ微笑みだけを返事とした。


「……変な連中なのね。それとも、あなた一人がそうなのかしら。いずれにせよ、私のボスには通用しないわ。せいぜい、最後の航海を楽しみなさい」

 プレースは大湊の太ももに髪を巻きつけると、躊躇なく締め上げた。

 ゴキリとくぐもった音が響き渡り、大湊は悲鳴をかみ殺す。

「ふっ……!」


「足の骨が折れたわね。これで逃げられないでしょう。でも……」

 髪をほどいたプレースは、大湊の折れた足を踏みつけて顔を近づける。

 潮の香りの中に、かすかに甘い香りが混じっていた。

「悲鳴を上げないのはね……」

「褒めてくれるなら、うれしいのだが」


 軽口をたたいた大湊の頬を、プレースの平手が刈り取るような動きで叩いた。

 破裂音というよりも空気を切り裂く様に聞こえる音が響き、頬が裂け、血が滴る。

「そういう、男のやせ我慢って腹が立つのよ」

 心底不快だという感情を隠す気が一切ない表情で、プレースはどこかへと去っていく。

 恐らくは船室へと入っていったのだろう足音を聞いた大湊は、ため息と同時に痛みが走った足に顔をしかめた。


「ふぅ……やれやれ。このままいくと、私のポーカーフェイスがどの程度保てるか怪しいものだな」

 鍛えてはいたおかげで、痛みはさておき渇きや疲労についてはまだ我慢ができる。

 呼吸を整え、冷静に犬歯の裏側あたりを舐めて唾液腺を刺激して、最低限の水分を確保してはみたが、心もとない。


 見上げてみると、太陽は一つが沈みかけており、もう二つも随分と傾いていた。

「……待っているぞ、神栖」

 道は違ってしまったが、必ず神栖は迎えに来る。

 そういう奴だと大湊は信じている。いや、知っている。

「私にできることは、生きていることだけか」

ありがとうございました。


私は佐賀人なのですが、先日の大雨で被害にあってしまいまして、

去年に引き続き、経営する店が浸水してしまいました。

色々片づけやら再建やらでなかなか手がつかず、お待たせしてすみません。

今後は極力毎日更新を再開したいと思っております。

応援のほど、よろしくお願いいたします。

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