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Trick & Magic  作者: tema
誰が善人を殺したか
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誰が善人を殺したか【解決編】

「お願いがあります」

突然の声に思考を中断させられた。


目を上げると、パーティ・ジュニエの小娘魔術師だ。

魔術師としての経験も乏しく、年も若い。というよりまだ子供だ。

だがローブを脱ぎ、俺の方に向けられたその胸部は、相当なまでに自己主張が激しい。


――F…いやG⁉︎


「リーダを、アインを殺した者を突き止めたいんです。協力して下さい!」

喜んで‼︎

あ、いや。


「ワシらに、何を期待しておる?」

ご老体ゆえ、自己主張する胸部に興味を持たぬチョムスが言う。

「あの場で皆さんが見たことを、私に教えてください」


「えー」

いかにも嫌そうに言ったのはマルクだ。

子供に見える彼だが、これでも70才。ヒューマン換算で35才。

ただし同族(ホビット)にしか興味は無く、自己主張する胸部には興味ナシ。

「治安部隊の奴らに散々話した後なんだよぉ。もぅ勘弁してくれよぅ」

話好きの彼も、さすがに食傷気味である。


オレ言葉喋レナイ。的な表情をしているンゴイブ。

蜥蜴人(リザードマン)の彼が胸部に興味を持たぬことは、言うまでもナイ。

一方、俺の左隣からは強烈な敵意(プレッシャー)を感じる。

言うまでもなく、敢えて言えばシノブだ。


復活の資金が足りないのか?

親切な俺が、助け舟を出す。

「そうなんです。ご迷惑と思いますがどうか…」


誰もが認め、誰もが好ましく思ってる善人、アイン。だが復活のための資金援助は出来ない。

それはこの街の――探索ギルドと治安部隊と教会が定めた掟だ。


迷宮内で死んだ者の復活は、そのパーティが探索ギルドに預けた資金から支払う。

そうしなければ死者を出したパーティは、復活資金捻出のため何をするか判らない。

だから、パーティの財産はギルドで管理され、不明な入金が出来ぬよう監視されている。


ただ、特例はある。

探索ギルド、治安部隊、そして教会。いずれかが認める理由が有れば、その組織が復活資金を出す。

迷宮内での殺人。それが確定するなら、治安部隊や探索ギルドが資金を出す可能性は高い。


そしてアインを救うためなら、一肌脱ぐヤツは山のように居る。目の前の魔術師もそうだ。

「私が出来る事ならなんでもしますから!」


ん?

今、何でもするって言ったよね!


========

アインは、後頭部(・・・)を割られていた。

普通に考えれば、犯人は彼の背後に居た者だ。


アインは、パーティ内で最も実力のある戦士。当然、前衛に居たはずだ。

彼の背後は、パーティのメンバが固めている。

特に僧侶であるジェロニムは、疑われるだろう。

「彼に限って、そんな事はしません!」

それに彼の得物はメイスだ。


「そうか、そう言えばお嬢ちゃんは、ジェロニムと付き合っておったの」

チョムスの言葉に、俺の顎が落ちた。


――危なかった。

――いや俺はまだ恋に落ちちゃいない。今回はセーフだ。

左隣に、完全にアウトだった感じのハーフエルフが居るが、それはさておき。

俺はジョッキを呷ると、口を開く。


アインを殺ったのは、ジェロニムじゃない。

彼の命を奪ったのは、迷宮の罠だ。


俺の言葉に、周りが沈黙した。

次の瞬間

「いや、いやいや!」

マルクが爆発した。


「僕が念入りに調べた。あの場所にそんな罠は無い!」

その後、パーティ・セニトゥの盗賊も調べていた。

確かに罠は無かったのだろう。


あの場所には。


俺はマルクを無視し、自己主張が激しい胸の主に尋ねる。

君たちはなぜ、8階層に居たんだ?

慎重で面倒見の良いアインが、レベル3~5程度のひよっこを連れて8階層に来るはずがない。


「えっ?あそこ、8階層だったんですか⁉︎」

身を仰け反らして驚いた拍子に、胸部が揺れる。

眼福である。


「私たち、4階層に居たんです」

そこで、転移魔法陣に引っかかったんだな。

闇領域(ダークエリア)に踏み込んだ後、アインが扉を見つけて…」

「ぬ⁉︎ あの領域に扉が有ったと?」

驚くチョムス。


扉を蹴破って踏み込んだパーティ・ジュニエは、4階層としては強力な化物(モンスタ)に遭遇して逃走。

その逃走中、大きな音がしてアインの声が響いたとのことだ。

「逃げろ、アインはそう言ってました」


状況を整理する。


パーティ・ジュニエが、化物と遭遇し逃走。

逃走中の領域に仕掛けてあったモーニングスターの罠が、アインを襲う。

アインは暫くは動くことができたのだろう――隣の領域、8階層への転移魔法陣が仕掛けられた領域に辿り着くまでは。


「モーニングスターの罠は4階層に仕掛けられてて、致命傷を負った被害者が8階層にスッ飛ばされたのかぁ。それじゃ、いくら調べても罠が見つかるワケ無いなぁ」

「4階層に未探索領域、それも8階層へ通じる転移魔法陣があったなど、大発見じゃ!」

お疲れ様なマルクと興奮するチョムス。


これは、とチョムスが笑みを浮かべる。

「探索ギルドも、是非ともパーティのリーダ(アイン)に話を聞きたがるはずじゃ」

えっ、とジュニエの魔術師が驚く。

その驚きは、笑みに変わり、彼女は喜びのあまりチョムスに抱きついた。


ちょっと待って!

謎解いたの俺よ⁉︎

抱きつくなら俺に!


探索ギルドが金を出し、アインは無事に復活した。

アインの証言、そして証言を基に探索した結果は、俺の想像通りだった。


そして、魔術師の小娘はジェロニムとの付き合いを続けている。

この前ちょっとイイ宿場から2人で出て来たのを見てしまった。

るー


めでたしめでたくナシ。

皆さんの推理は同じだったでしょうか?

もし、論理の穴や情報不足など有ったら、感想・誤字報告などで教えてください。

ませ。


誤字報告って、どんな機能なんだろう?


次の投稿は7/20です。

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