500年前の死者が問う世界の真の姿【蛇足】
その後、数週間経って、俺が麻倉と雑談しに来た時の事だ。
「貴方の回答は、ほぼ完璧な正解でした」
紅茶を淹れながら、チャールズが褒めてくれた、が。
ほぼ?
ほぼってどゆこと?
「あのリドルは、多少の差は許容してくれるみたいなの」
麻倉は最後の問いに”ビッグバン”と答えたらしい。
学者によっては、インフレーション期の直後を”ビッグバン”と呼ぶこともある。要は”ビッグバン”をどう定義するかだ。大した意味はない。
「このリドルは多分、謎を謎のままにしておけない転移者に向けて作られたのだわ」
――作らせた王自身の様な
と、麻倉が言う。
この世界の全ての叡智を持つ彼女の言葉だ。
多分その言葉は正しい。
500年前、時/永劫/刹那を作らせた王は、21世紀から来たのだろう。
いったい、どの様な人物だったのか。
「王は、ご自分の事を”繰り返し種蒔く者”と仰っておりました」
――ってチャールズ。アンタ王様を知ってんの?
「記録が残っております」
はー
「あの黒い球体、それがご自身だとも」
?
「インフレーションが此の宇宙を急激に拡大させた様に、あのかたは人間の社会を拡大されました」
だから――
「あの石の真の名は、”ディアスポラ”なのです」
========
「森下様、貴方はあのかたに似ておられる」
ん?
よもや、王は前々前世の俺だとか?
「いえ、違います」
一瞬も躊躇わず否定するチャールズ。
「姿が似ている訳ではありません。が、何となくあのかたと同じ雰囲気があります」
コイツ”雰囲気”とか言った。
言いやがった。
記録だけに残ってる王の雰囲気なんて、分かるものか。
コイツは王に、500年前に存在していた男に会っている。
「王もやっぱり、おっぱい星人だったの?」
おい麻倉!
「その嗜好はございました」
こらー
「いずれにせよ」
とケーベツのマナザシに晒されている俺を、チャールズは眺めた。
慈愛と懐かしさを込めた微笑みを見せ。
「貴方の人生は、貴方のものです」
そして――
「あのかたの話は、別の物語なのですよ」
お付き合い頂き有難うございました。
この物語はここでオシマイ。
次回作は粗筋は出来てるのですが、さてさて、いつになることやら。
それでは皆様あでゅー
あでゅーしゃん列島 ©️大矢博子さん




