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Trick & Magic  作者: tema
500年前の死者が問う世界の真の姿
38/40

500年前の死者が問う世界の真の姿【問題編】

瀬戸内海に浮かぶ直島。

地中美術館に、このインスタレーション――”TIME/TIMELESS/NO TIME”は在ります。

作者であるウォルター・デ・マリアは、この作品の意味を誰にも告げぬまま亡くなりました。

なので、これはtemaの勝手な解釈です。


出来るなら実物をその目で見、ご自分の解釈を得られんことを。


9/14追記 図が一部間違ってましたので修正しました

「此処が私たちの居た地球だと、納得して貰えました?」

せざるを得ない。


目の前にあるのは、麻倉が作らせたニュートン式反射望遠鏡。倍率は100倍程度だろうが、充分だった。

此処が異世界だという何よりもの証拠。宙に浮かぶ第2の月。

アレは偽物だ。


望遠鏡を使って初めて判る。

その表面には幾何学的な模様が刻まれ、人工物である事を示していた。


月と同じ周期で回っているのだから、地球との距離は月と同じ。約38万km。

そんな遠くに在るのに肉眼で見える。

信じられないほど巨大な構造物だ。

何だってあんな物を造ったんだろう?


俺の問いは決して答えを期待したものじゃ無かった。

「知りたいですか?」

そんな言葉が麻倉から出るとは思わなかった。


「あの人工物は、月のトロヤ点(L5)に位置し、円筒形で回転しています」

表面の幾何学模様を観察することで、回転していることが判ったそうだ。

「月軌道に影響が無いことから密度は低い――つまり中空と思われます」

ん?

トロヤ点――ラグランジュポイントで回転する中空の円筒形って、それはつまり。

「スペースコロニです」


大きさと回転速度から、内側に発生する遠心力は1/6G。

ほぼ月と同じ重力だ。

ウサギでも住んでるのかな?

「猿が住んでいる、と伝説にはあります」

なぜ猿?


それはともかく。

「此処は異世界では無く、私たちが住んでいた地球。但し2000年近く未来の地球」

俺たちの住んでた地球に、魔法は無かった。

だが俺は知っている。


充分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。


========

江戸時代の人にも、自動車や飛行機は機械だと判るかも知れない。

複雑にはなっているが、その原理、理論は江戸時代と左程変わって無いからだ。

だが電算機、液晶、核反応、遺伝子操作。お前らはダメだ。

ソレは江戸時代には理論すら無かった。

その理論を知らぬ者に、ソレは魔法と見分けがつかない。


たった200年で、科学は魔法に変わる。

2000年の差が有れば、魔法としか思えない科学技術は発達しうる。

だからこの世界の魔法は、おそらく背後に膨大な科学技術を抱えている。

科学技術に支えられた夢の国。それが、この世界だ。


「そんな科学技術なら、私たちを転移させる事ができるかも知れません」

実際、転移してるしな。

「死んだ私たちを、若い姿で生き返らせることだってできるでしょう」

その方法は問題じゃない。そこは考えても仕方ない。だって俺たちには魔法と見分けが付かないのだから。


「でも何故」

転移させたのか――

人生を繰り返させるのか――

異世界での記憶を引き継がないのか――

其処には何者かの意志が、目的がある。


「私は、それを知りたかった」

どうしても知りたかった。そう言う麻倉の目は俺を向いているが、その瞳に俺は映っていない。

「その答は、此処に在るんですよ」

チャールズ――と、麻倉は人鼠(ウェアラット)を呼ぶ。


「101号室の鍵を」


========

扉が開くと、白い世界が広がった。

最初に目に映ったのは黒い球体。どうやって作ったのか、石と思えるその球体には全く歪みがない。


その部屋に入る。

壁も天井も床すらどこまでも白く、所々に3本セットで固定されている黄金の柱が宙に浮いて見える。

部屋の奥は床がそのまま階段状に上り、踊り場に黒い球体が設置されている。

その後ろにはまた階段状の床。その奥には3本セットの黄金の柱が見える。

挿絵(By みてみん)

これは、何だ?

芸術作品(インスタレーション)です。作品名は”(Time/)/永劫(Timeless/)/刹那(No Time)”」

まぁ綺麗であることは認める。


「作られたのは500年ほど前。芸術家にして科学者、万能の天才と謳われた人。名は伝えられてません」

レオナルド・ダ・ヴィンチみたいな人だな。

「作らせたのは国王。彼がこの作品に謎を込めた」

謎?

「先ずは、あの石の処まで行きましょう」


階段状の床を上り、黒い球体の石に近づく。

奥に回ると、石に文字が刻まれていた。


――()が何かを知る(なんじ)

――刹那(せつな)の時の長さを示せ

――そして我を呼べ


なんじゃこりゃ。

「リドルよ」

リドル?

「一種のなぞなぞ。RPGをクリアするために必要なイベント。そう思って下さい」

Wizardry#3の”(かたわら)に在れど見えず、無くば声も出せず”――みたいなヤツか。


「この謎に正しく答えれば、封印が解けます」

封印?

何の?

「”(コ・ルゥアンリ・)(ゾエ・スカミ)”の」


確かに”叡智”には制限がある。

この島以外の地図は出ず、科学技術も歴史も、俺たちが来た世界の事しか検索できない。

情報が無い訳ではない。

“権限がありません”そう応えが返るからだ。


今が何月何日かは教えてくれる。

何時何分かも教えてくれる。

だが今が西暦何年か、その情報へアクセスする権限は、俺に与えられていない。

麻倉は、おそらくその制限が解除されている。

全てを知ることが可能だ。


俺たちを転移させた理由

俺たちに人生を繰り返させる理由

異世界で過ごした思い出を引き継がない理由


麻倉は全てを知ったのだろう。

「でも、理由なんて――

麻倉は呟きも途中に、俺を置いて部屋を出て行った。


========

別に俺は閉じ込められているわけじゃない。

この館から出て行くのも勝手だ。


だが、麻倉はこの謎を解いた。

そして、俺たちが転移・復活する理由を、何者かの動機を知った。

多分、それが麻倉を打ちのめした。


それを知って、どうなるものじゃない。

ぶっちゃけ、俺はあまり興味がナイ。

だが、麻倉が解いた謎。それを俺が解けないのはイカン。

先輩としての威厳が保てない。気がする。


部屋の隅々に目を走らせる。

石に刻まれた3つのリドル以外に、印などは無い。

壁、天井、床は白一色。

ただ、壁に3本セットで固定されている柱。これに特徴があった。


木材に金粉を塗ったのか、太さ15cm高さ50cm程度の柱が3本セット。

同じ色、同じ材質、同じ太さと高さ。但し柱は3種類ある。

三角柱・四角柱・五角柱。

それぞれ断面が正三角形、正方形、正五角形になっている。

そして3本の組み合わせが全て異なっていた。


3種類の柱を3本セットにする順列組合わせの数は?

答えは3×3×3=27通り。

この部屋には、27組の3本柱が設置されていた。


1日かけて俺は謎を解き――


ふと、違和感を感じた。

さてみなさん。

ここで数分お時間拝借し、この芸術作品の意味を考えて頂きたい。

次話でtemaの解釈を示しますが、それが正解かは最早誰にも判りません。

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