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Trick & Magic  作者: tema
残された指紋が告げる犯人
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残された指紋が告げる犯人【調査編】

おおtemaよ、毎日投稿すると宣言した翌日から挫折するとは情けない…

ごめんなさい。

今日から本気出す!

「この世界の常套句通りだったわ。1度目は恋、2度目は愛、けれど3度目は死」


侯爵との結婚生活(やらしい意味じゃないよ!)を尋ねた俺に、麻倉はそう応えた。

その言葉は時々聞くけど、どゆこと?

――という俺の疑問は、口から出ることは無かった。


コンコン

扉が叩かれる音がした。

「この叩き方は爺やね」

麻倉は立ち上がり、扉を開く。


「nimspe .manam. noltronau .kurafaud.」

人鼠(ウェアラット)が1人、立っていた。

一瞬何を言ったのか分からなかったが、頭を切り替える。

ああ、”マナム・クロフォード侯爵夫人”と言ったのだ。

麻倉真奈美の、この世界での正式な呼び方だ。


「sonna kata苦しい呼び方しなくても良いでしょ」

麻倉が日本語で話すものだから、俺の頭はもう大混乱である。

「紹介しますね。主人(ディビッド)の秘書の…秘書だった(・・・)チャールズです」

その人鼠は礼儀正しくお辞儀をした。


「多分、全ての疑問の答えを持ってる人よ」

「そんな事はございません」

「嘘おっしゃい」

ん!?


俺は大変な事に気がついた。

チャールズが話しているのは、日本語だ。それも相当に流暢(ネィティヴ)な。

「だから言ったでしょ」

と麻倉は悪戯っぽい笑みを浮かべ

「全ての答えを持ってる人よ」


つまり――と俺は言う。

この事件の真相もご存知と?

「「ファッ!?」」

何も、2人とも目を剥かなくても良いのに。


「センパイ…」

あ、この声色は…

職場で時々聞いたコトがある。

俺が色々しでかしちまった時の声色だ。


今、そんな事を聞く流れじゃないでしょ!

空気、読めないんですか!

一緒に働いてた時、幾度となく麻倉に言われていた。

教育担当は俺なのに。新人の彼女に。


今回も、確かに話の流れからいえば、俺たちが転生した理由とかを聞く場面だった。

でもほら、まず先に事件の方が頭に浮かんじゃったんだよね。


「そー言えば、センパイはそーゆー人でした」

ケーベツのマナザシ。

彼女自身がそう言ってた眼差しで、俺を見る。

「空気を読まずに変な事言って――

くしゃり、と麻倉の顔が歪む。

「でも後から考えると、それが本質だって判るんです」

いや別にそーゆーワケじゃない。


麻倉の目から涙が一粒、溢れた。

「バカみたい、私…」


涙の雫を頬から拭うと、彼女の雰囲気が変わった。

目を上げた彼女は、もう麻倉ではない。

「下がってよろしい」


クロフォード侯爵夫人、マナム・リングのお言葉に、俺は”御意”と応えた。


========

侯爵夫人をチャールズに任せ、俺は広間に戻った。

執事は蒼白な顔で、親の仇でも見るような目をしている。

美人のメイドさんも同様。


侯爵夫人に何かあったらタダじゃおかないッ!

むしろ何もなくともタダじゃおかない!

どうあってもタダで済むと思うなよ、そんな雰囲気である。


「あー、お前が居ないうちに事情聴取は済ませといた」

空気を敢えて読まず、マルクが言う。

「死亡推定時刻は今朝。死因は…まぁ見れば判る通り、後頭部へのメイスの一撃」

ウムウムその通り、とパラケルススも頷く。


「第1発見者は侯爵夫人。直ぐに使用人を呼び、現場保存させたとの事だ」

以後、遺体に近づいた者はいない。


「メイスは真上--ベランダの鎧が持っていた物だ」

挿絵(By みてみん)

見上げるほど高い場所にベランダがある。

あんな所からメイスが落ちてきたら、そらもうヒトタマリもない。

「昨日の昼、掃除の際に使用人のメグが確認している。でも、いつ持ち出されたかは不明だ」

そのメグさんは、さっきから俺を睨みつけている。


口を真一文字に結び、腕を組むメグさん。

その腕に乗っかったモノはもう、たわわというか豊満というか巨大というか。

これは一体どういう状態なのか。事件よりもこっちの謎を解くべきじゃないかといやちょっとシノブ待ってそこ持つとこじゃナイから!

俺は仔猫の様に首根っこを掴まれ、身長が伸びそうになる。


「続けるぞ」

ハイ。


館はざっくり言えば4つに分かれる。

今居る広間は北西。現場となった館内庭園は北東で、そちらに侯爵夫妻の部屋も有る。

南西は食堂と台所、南東は客室と会議室だ。

館の西側には、使用人の住居や厩、倉庫がある。

挿絵(By みてみん)

そして


「夜になれば、使用人は現場に来る事は無い、が」

夜に北東領域に来るのは厳禁らしい。

但し、例外は有る。

侯爵夫妻に呼ばれた時とか、館内庭園でパーティしてる時とか。


でも、鍵が掛かってるワケじゃ無いから、来ようと思えば来れるよね。

俺がそう言うと、使用人全員が俺を睨む。

「我々の誇りにかけて、その様なことは致しません」

全員を代表して、執事が宣言する。


いやでもほら

「あり得ません」

重々しく宣告された。

例外とかは?

「昨夜はございませんでした」

有無を言わせぬ口調である。


でもその状況は、大変都合が悪い。俺にとっても彼らにとっても。

事件当時、北東領域に他の者が居た可能性は?

「あり得ません。そう申し上げた筈です」


「さすがクロフォード侯爵館だ。警備も万全で、賊が侵入したことは考えられない」

レストンも捜査結果を口にする。

出口ナシである。


つまり、とレストンは使用人に厳しい眼差しを向ける。

「被害者に危害を加え得た者は、畏れながら、マナム・クロフォード侯爵夫人のみとなる」

使用人一同に激震が走った。


「会議室に、侯爵夫人を連れて来て頂こう」

そう言い会議室に向かうレストンを、アワアワして見送る使用人たち。

ゴトン。

重い音を立て、会議室へ向かう扉が閉まる。


使用人の視線が宙を彷徨い、1人、また1人とある者に集中した。

誰あろう俺である。

“お前が悪い!”

全員が、そんな目で俺を見据える。

いったい俺が何をした。


治安部隊が侯爵夫人の部屋に向かう。

思わず押しとどめようとする使用人。拙い状況だ。

治安部隊は、捜査に対し全権限を持っている。

侯爵だろうが王族だろうが、それを止める権利を持たない。

このままでは使用人は、逮捕・有罪・拘留・実刑の4連コンボである。


「下がりなさい」

喧騒の中、麻倉の静かな声が響いた。

一瞬の静止、そして人波が分かれた。

次々と膝を着き、道を開ける。

麻倉ではない。今の彼女は、マナム・クロフォード侯爵夫人だ。

気づけば、俺自身も膝を着いていた。


こうべを垂れる俺に、侯爵夫人が少しだけ目を向けた。

気がした。


「案内を」

「ハッ!」

告げられた治安部隊員は、深々と頭を下げ丁重に彼女を案内していった。


========

「奥方様が、あのような事をなさる筈がありません」

全員を代表して、メグさんが言う。

「奥方様は、旦那様を愛しておられました」

麻倉は使用人の皆に慕われてるようだ。

「これは何かの間違いですッ!」

俺もそう願ってる。


「例えば、そこの魔術師が”(コ・ズヴァディ)(・ジュドリ)を使って忍び込んで…」

ズビシッ!

メグさんの人差し指が、俺に突き立てられる。

ちょっ、待っ…


「そんな真似が出来ぬよう、この館には魔法具による結界が張られている筈じゃが?」

ぐぬぬ…

口惜しがるメグさん、って何で俺を犯人にしたいのさ!?


「凄腕の魔術師ならば、結界を無効にする術を編み出せるのでは?」

今度は執事さん。

どーしても俺を犯人にしたいらしい。

だがいくら凄腕の俺でも、結界を無効化する方法など聞いたことも無い。


「まずこいつ(モリス)は、たかがレベル6だ。そんな術はおろか、転移だって使えない」

ぐはぁッ。


マルクお前、”たかが”って酷くない?

それに俺、この前レベルアップしたんだよ!

レベル7!

7だからね!

今までの俺とはちょっと違うからね!


「それに結界を無効化する方法など、聞いたことも無い」

チョムス、”それに”って付け足しみたいに。

「仮に有ったとしても、此奴には無理じゃ」

ファッ!?

俺の魔術で窮地を脱した事、何度も有ったよね!

なのに無理ってアナタ。

諦めたら、そこで試合終了だよ!


「貴方、それ本当?」

アメルという名のメイドさんが言う。

「ちょっと貴方、今まで何してたのよ!」

メグさんが、何故か俺を問い詰める。

「確かに。以前に来られた時から、殆どレベルアップされてませんな」

と執事さん。

――ん?


「以前に来られた時?」

シノブが俺を見る。

「お主、この館に来たことが有るのか?」

チョムスも俺を見る。

「…」

無言の重圧をかけてくるンゴイブ。

「怪しいな」

おいマルク!


「ねぇそれ一体、何時のこと?」

シノブの問いに執事さんが即答する。

「44年前でございます」

生まれとらんわーッ!

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