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Trick & Magic  作者: tema
吸血鬼の殺人
30/40

吸血鬼の殺人【調査編】


「久しぶりだな」

ご無沙汰しております。


俺は魔術の師匠を訪れていた。

こっちの世界に転位した後、俺を魔術師として鍛えてくれたお方だ。

この人がもぅ、ちょー厳しい。


「どうした、レベルアップして新しい魔術を習得しに来た訳じゃないんだろう?」

ちょー厳しいのに、レベルアップの都度、教えを受けねばならん。

レベルアップしたくもあり、したくもナシ。

でも今回は、別の教えを受けに来た。

暫く来ない間に、師匠の部屋にはビール瓶が増えていた。


空気を冷やし固める、そんな魔術はありますか?

俺の言葉に師匠は眉をピクリと動かし――

「修行は厳しいぞ」

と言った。


「地下に来い」

地下には修行場がある――ってちょっと待って!

今日は修行しに来たんじゃない。そうじゃ無いんです!


そんな魔術の有無を聞きに来ただけ。

あると分かれば、呪文を教えて貰わなくてOK。

俺がそう言うと、師匠は残念そうな顔をする。

「お前には向上心が欠けている」

今後の魔術の発達が云々――と言おうとする師匠を止める。


氷結(コ・ルゥエンク)” や”氷塊(コ・ソヒ・ルゥエンク)”は、空気中に含まれる僅かな水分を集め、氷を作る。ならばそれを応用し、空気中の僅かな成分を集め、固体化する魔術も可能な筈。

その様な魔術が――

「うむ、在る」

師匠は重々しく頷いた。


スコッチ党の師匠の部屋に、何故か数本あるビール瓶。しかも栓が開いてない。

その魔術の修行は、ビール工房で行う方が良いのですね。

「お前、何故それを?」

蓋も開けずにそのまま朽ちさせるのは勿体ない。しかも常温保存とはなんたる所業。そのビールちゃんは私が引き取りましょう!


手を伸ばす俺を師匠は止める。

「お前、そんなことの為に来たんじゃないだろう」

はっ…


俺のいた世界でその物質は、ドライアイスと呼ばれていました。

氷より冷たく、融けても水にならない。そして抽出する成分――二酸化炭素は、ビール酵母が大量に発生させます。

師匠は頷く。

「そう。元々はビール工房から、毒となる気体を取り除けないかと言われた事が切っ掛けだ」

そして、少し残念そうな顔をした。


「魔術の構築時、最も苦労するのは、生成物の概念を掴むことだ」

だが、と師匠は俺を見る。

「お前は既にその概念を持っている。異世界人ならではの知識、発想。それを新たな魔術の開発に活かせばお前は――」

その発想を持ってきたのは、シオンですね。


師匠の動きが止まった。


========

と、いう訳でシオンは多分、俺と同じ異世界人だ。


その知識でドライアイスを作る魔術を構築し、それをアイスちゃん保存に使っている。

定宿の食堂を借りて、クィンクの皆に今日の成果を報告する。

「金髪碧眼なのに異世界人?」


確かに、そこは謎だ。

マルクの言葉に、俺は頷く。

この世界に転移する異世界人は、全員ニホンから来た者と言われている。顔は平たく、髪も目も黒い。

だが、例外はあるかも知れない。


「仮に、シオンが異世界人じゃったとしよう」

テーブルを指で叩きながらチョムスも言う。

「彼が異世界人じゃと、密室の謎が解けるのか?」

はっ…


解けません。


「無駄骨折りに終わったモリスの調査は置いといて、こっちの調査は成果があった」

拝聴いたします。マルク先生。

「あの建物は、山側――南側の壁が異常に厚い」

「秘密の出入り口があるかも知れない」

そこでじゃ、とチョムスは俺に詰め寄る。


「お前のコネを使わせてくれ」


========

これはコネか?

コネなのか?

お前(ダーリン)のたっての頼みだから、見せてやるんだぞ」

とレストンは言う。


でもさ、事件解決に必要な調査だよ。

そして任務クエスト依頼したの、治安部隊だよ。

なのに何で俺がレストンに借り作ったコトになってんの?


現場の南側。壁一面の本棚。

その一部が隠し階段への入口になっていた。

階段は下に続いている。

挿絵(By みてみん)

3~4階分くらい降りた頃、扉が有った

「この先に部屋があるが、出口は無い」


扉が開く。

「そして、此処で見たことは他言無用だ」


「何じゃこりゃぁ?」

チョムスが呆然と呟いた。

他の者たちは、言葉も出せずに目と口を開いていた。

俺?

俺も同様。

ただし、俺は他の者とは違う理由だ。


此処にこんな物は無い筈だ。

こんな物は此処には存在しない筈だ

俺にとってそれは見慣れた物だった。


「これをどう扱ったものか、私も悩んでいる」

レストンが言う。

「コイツは一体…」

「何なのかも判らん」

取り敢えず機密扱いにしたが、そもそも機密にすべき物かも判らんとのことだ。


俺は知っている。

コレは機密だ。それも超弩級の。

コネが有ろうが無かろうが、余人に見せちゃいけないヤツだ。

「この900って、何だろう?」

シノブが言う。

それは、排気量だ。


俺の前にある物は、俺が、俺だけが見慣れた物だった。

燃料タンクには、音叉を組み合わせた紋様(マーク)がある。

何故、こんな物が此処にある?

何故、異世界に日本製の自動二輪車(バイク)が有るんだ?


========

遺体の所持品を見せてほしい。

俺の表情と声に何かを感じ取ったレストンは、横に待機していた治安部隊員に指示し、所持品を取りに行かせた。

残されていた所持品の中に、俺が探していた物があった。


「その紋様、同じだな」

マルクが目敏(めざと)く見つける。

ああ、このバイクのスマート(シキク・ゾヘ・)キィ(ディクシャ)だからな。

俺の言葉は多分皆には伝わらない。


俺はその鍵を手に、バイクに近づく。

立ちゴケしたのか、クラッチレバが折れていてグリップエンドに傷が有った。

ギアをニュートラルに入れ、スタータボタンを押す。

セルが回り、3気筒エンジンがDOHC(ツインカム)の鼓動を響かせた。


嫌な臭い。だが懐かしい臭い。排ガスの臭い。

聞きなれた騒音。この世界には無い排気音。

気づけば、俺の頬を涙が伝っていた。


ふと――否、強烈な違和感を感じた。

さてみなさん。

ここで数分お時間拝借し、どうやって密室を作ったか考えて頂きたい。

とはいえ数分以上考え込む価値は、多分ナイ…


【解決編】は明日(9/1)、投稿します。

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