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Trick & Magic  作者: tema
閑話
16/40

お姉ちゃんと一緒

今回は謎解きナシ。

シノブのお姉さんの紹介のみ。あとちょっとした伏線張り。

(シノブ)がいつもお世話になってます」

はぁ、こちらこそ。


先日の痴漢騒ぎで約束した通り、シノブが”お姉ちゃん”を紹介してくれた。

シノブの実のお姉さん。レラルゥさんだ。

シノブより4才年上で、彼女と違い淑やかで、彼女に似た美人で――

俺のストライクゾーンには、全然入らない。


シノブの両親はハーフエルフ同士で、シノブ自身もハーフエルフ。と聞いていた。

だが、お姉さんはハーフじゃなくフルのエルフ。

「ハーフエルフ同士の子は、1/4がエルフに、1/4がヒューマンになるの」

なんでそうなるかはともかく。

問題は、彼女の外見が10才くらいの少女だということだ。


詐欺だ。

シノブに騙された。

実年齢は確かにシノブより、いや俺より上だろうさ。多分アラフォー。

でもね、この世界でエルフの寿命はヒューマンの4倍。肉体的にはどー見ても10才そこそこ。

ストライクゾーンにカスリもしない。


「以前からシノブには、紹介してって頼んでたの」

はい?

紹介って誰を?

まさか俺じゃないよね?


なのに彼女の瞳は俺をロックオン。

ロリータ趣味があれば天国かも知れんが、幸か不幸かその趣味がナイ。

俺の好みとしては、膨らむべき処はもうボンッって感じで膨らみ、くびれるべき処はギンギンにくびれてる方がヨイ。

「本当。似てるわ」

はい?


謎の言葉への追求は、給仕(ウエイタ)が持ってきたチョコパフェで遮られた。

爛ッ!

そんな感じで彼女の目が輝き、目の前のパフェをロックオン。

幸せそうにパフェを食べる彼女は、本当に子供のようだ。


俺はいったい、何をしてるのであろうか?

本来ならばお茶に誘うべきは、先日アインに紹介して貰った成熟したエルフのお姉様。なのに、目の前には少女。


「コホン」

パフェを平らげた彼女は、再び俺を見る。

「貴方、シノブと付き合ってるの?」

付き合ってません。

一瞬も迷わぬ俺の回答に、目の前の少女が目をパチクリする。


「私の目を正面から見て言って」

付き合ってません。

「どうして⁉︎」


不条理である。理不尽である。

シノブは仲間だし友人だ。でも付き合ったことは無い。

そりゃもう1秒たりとも無い。断言できる。

そりゃ初対面の時はすごい美人さんと思ったけどねー。

中身がねー。


なのに、いかにも心外だという目で俺を見る少女。いやお姉ちゃん(レラルゥ)

不条理である。理不尽である。

「あの娘からアプローチ、されなかった?」

はい?


「あの娘ったら惚れっぽい上に、惚れたらもう一直線に押して押して、引かば押せって感じで」

うんうん。それでよく自爆してる。

「アプローチされてないの?」

されてナイ。

「…貴方、もしかして」

男はヤダ。そのケはナイ。

「あ、そう」

しばらく考え込むレラルゥ。


「もしあの娘がアプローチして来たら…」

お断――いえ何でもありません。

危なかった。さすがに実のお姉さんに”妹さんは女としてはちょっとねー”とか言えない。言っちゃいけない。

「…拒んで欲しいの」

はい?


「シノブがアプローチして来ても、拒んで欲しいの」

なぜ?なにゆえ?Why?

「2人とも不幸になってしまう。きっと」

それは相性とかそんな話で?

「ううん相性は良いと思う、とても。でも止めて」


そう言うレラルゥは、何かとても真剣な目で。

でもワケもなく一方的に言われっぱなしなのは、癪にさわる。


ワケもなく、そんなことを言うとは思えない。

一方で、ワケを言わないのは何か理由がある。多分。

「理由は聞かない方が良い――って言っても無駄みたいね」

ムダだ。


「1度目は恋、2度目は愛、けれど3度目は死」

俺は目をパチクリする。

何処かで聞いたことのある言葉だ。だが、何処で誰から聞いたのか思い出せない。


「貴方は3度目なのかも知れないわ」

なんじゃそりゃ?


つ・ま・り、とレラルゥは人差し指を振り

「理由は言えない。貴方がシノブに興味を示さない可能性に賭けるわ」

理由を問い詰めても無駄だ、絶対に話さない。そう彼女の目が言っていた。

「でも――


でも?

「シノブと肉体関係を持つなら、その前に私に連絡して」

じゃぁメルアド(サムジュドリ)を教えて欲しいな。

「サムジュドリ?」

この世界にそんなものはナイ。

無い筈なのに、単語は自然に俺の口から出てきた。


「私が見つからなかったら、探求者ギルドのザクスクさんに話をして。理由は彼女に伝えておく」

はい?

また予想外な名前が出てきた。


ザクスクさんは探求ギルドの受付嬢――シノブによれば”嬢”と呼ぶにはトウが立ちすぎているらしい――で、探求者からは一目置かれている。

ちなみにエルフ。

そしてエルフには珍しく、豊満なボディの持ち主だ。

それも全体的に太いってことじゃなく、腰とか足首とかはもうギンギンにくびれてるっていうビューティホーな体型。


そして有能。

凄く有能。

智慧者で交渉に長け、噂によれば凄まじい魔術の使い手らしい。

そして魅惑的なボディに釣り合わぬクールな美貌。

もーこの人にならピンヒールで踏まれてもヨイ。むしろ踏んで欲しい!

かも。


そんなザクスクさんとこの少女に、どんな繋がりが?

「探求ギルドに依頼すれば、対応してくれるでしょ」

あ、なるほど。


でもザクスクさん指定で依頼って、どのくらい金がかかるんだ?

そしてザクスクさんに話したらどうなるんだ?

もしかして!

実はザクスクさんが俺に惚れてて、「シノブと付き合うくらいなら私と」とか言われちゃったりなんかしちゃったりしてーっ!


「ということで、ヨロシク」

レラルゥさんが領収書を取る。

いやいや、さすがにここは俺が。

10才の女の子にお茶を奢られるワケにはイカン。

例え中身がアラフォーであろうが、そこは俺の美意識が許さん。


「それじゃご馳走さま。今日は有意義だったわ」

俺には何の意義もありませんでした。

「また会いましょ。じゃ」


いや家の近くまで送っていく、と言いかけた俺の目の前で、彼女は唱えた。

(コ・ズヴァディ)(・ジュドリ)


光の粒となって、彼女の姿は消えた。

レベル13の魔術。

発動させられる者は数人しか居ない、最高レベルの魔術。

後には顎を外れそうに開いた俺だけが残されていた。

るー


めでたしめでたくナシ。

次の投稿は8/10です。

今度こそ。

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