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Trick & Magic  作者: tema
痴漢と冤罪の存在確認
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痴漢と冤罪の存在確認【調査編】

発見したモーニングスター+5を試すため、パーティ•ウルニンは1階層の闇領域に行ったらしい。

だがどうにも、アンには相性が悪い。元々棒術を専門に学んで来たメイス使いなのだ。

「場所は、シノブが痴漢に遭った処に近いなぁ」

マルクが地図を確認しながら言う。


「その時、誰かが私の…触って…」

どこを?

「それ、重要なのか?」

シノブが冷たい目で俺を見る。

いや、情報は多い方が良い。何がキッカケになるか判らないんだ。

決してヤマシい気持ちで聞いたんじゃないよ。ホントだよ。


「右太腿の…内側…」

真っ赤になりながらアンが言う。

萌える。これはマズイ趣味に目覚めそうな萌えだ。


「その時、周りのメンバーの位置は?」

「闇領域なので確かなことは判りませんが、私の近くには2人」

リーダの戦士ドロゥンと、魔術師のトロワス。

どちらも評判の美女である。


「それだけじゃないんです。帰りがけに再度、闇領域を通ったら、今度は左太腿を触られて…」

「その時のメンバー位置は?」

「反射的に来光を祈ったんです。そしたら近くにはドロゥンだけが…」

それは疑われ…って、ドロゥンは女性だよね?


「そういう趣味の人はいるんだよ」

暗い目をしてシノブが言う。

「私も何度か迫られたことがある」

それは単に男と思われ…いや何でもない。何でもないから!

刀抜くんじゃないッ!


========

正式な任務、ということで探索者ギルドに話をつけ、手分けして聴き取り調査を行った。

被害者は16名。

場所は闇領域という事は共通しているが、場所はバラバラ。1階層から10階層までバラバラ。

「とは言え、1階層が多いよね」

全体の8割以上は1階層だ。


被害者の職業(クラス)もバラバラ。ちょっと戦士が多い。

「だが、見事に女ばかりじゃな」

そりゃ痴漢だって男は触りたくなかろう。

「いや、何らかの自然現象や化物の仕業かと思ったんじゃが…」

女性限定で発生する自然現象…ナイな。


そして俺は、他の皆が気づかなかった共通点を見出した。

被害者は皆、魅惑のナイスバディなのだ。

ただし例外が1名。

だれあろうシノブ…あ、いたい痛い。


========

「とはいえ、探求者は鍛えてるから多くの女性はナイスバディだよねぇ」

装備を身につけながらマルクが言う。

今日は調査は一時中断。

稼ぐための探求である。


ところでシノブ、なんか顔色が悪いが大丈夫か?

「ああ、大丈夫。大丈夫だ」

腹でも壊したか?

そう聞いたら殴られた。ぐーで殴られた。


「バカ」

とマルクにまで言われる。

この2人、いつも喧嘩してるのに、時々協同して俺を責める。

チョムスも、残念な者を見る目で俺を見る。

なぜだ。


========

どうせなら、痴漢出没地点を通って行こうということになり、闇領域に入る。

「ギャッ!」

来光(ッイア・グスニ)!」

チョムスの祈りにより、光が齎される。

化物の姿は無い。

シノブは五体満足だ。怪我もしていないように見える。

あれ。でじゃぶー?


だが今回、俺とシノブの間にはマルクが居た。

まままマルク!

お前まさか、もしや、さては。

「んなワケないだろ!」

「そうよ!今度は本当に触られたんだから‼︎」

ん?


「今度は?」

「本当に?」

「あっ…」


========

地上に戻って来た。


シノブが五体投地をしている。土下座の上位バージョンだ。

だが俺は当分許すつもりはナイ。

パーティ解散の危機である。


「女性が、次々に痴漢に遭ってると噂になっていた、と」

俺たちが知らなかっただけで、先々月頃から女性探求者内ではかなり多くの被害者が出ていたらしい。

「なのに、自分が遭ってないことに不安を覚えた、じゃと?」

「…」


「ごめんなさい。もうしません」

ぷんすか!

「お願い許して。何でもす…?」

俺の方をチラ見するが、その手に乗るのは肉感的な美人だけだ。

俺にも選ぶ権利がある。

「お姉ちゃん紹介するから」

許す、全て許す。


パーティ解散の危機が去ったところで、事情聴取を行う。

「前衛の女性探求者は、6割くらいが被害に遭っている?」

「1階層の闇領域を通った人は…そのくらい」


多くはヒューマン。次いでドワーフ。

とはいえ、前衛はその2種族が多――蜥蜴人(リザードマン)は?

「いないみたい」

むぅ。


「私の調査によると、生脚を晒している前衛探求者が中心に狙われてる」

つまり、とシノブは言う。

「犯人は脚フェチ。間違いない!」

鍛え抜かれた前衛の脚線美が云々、と言い出すシノブを止める。

ひょっとして、前衛じゃなくて生脚が問題なんじゃないか?


後衛は比較的防御優先の装備を着けてるので、生脚率は低い。

「そういえば、アンは後衛だけど生脚だった」

棒術も得意とするアンは、ミニスカート状の防具に脛当てだった。


「なぁ、聴き取りをした16人は全員生脚だったか?」

「地上で聞いたからな、探求時の装備までは調べておらんな」

16人中12人が生脚だ。


あれ?

俺、なんか変なこと言った?

「いや、なんでそんなこと知ってるんだよ」

だって評判のナイスバディな皆さんだよ。

探求時の装備は動きやすさ優先で、人によってはホラ、露出度が高くて…


途中から、皆が俺を見る目が厳しくなり、それと共に俺の声は小さくなり…

「いくらなんでも、シノブは酷いと思ってたけど…」

「ああ、こ奴の場合は自業自得じゃな」

「…」


痛い。

皆の視線が痛い。


「あー彼女たちなんだけど…」

シノブ様が、俺の窮地を救ってくださった。

「嘘ついてる娘もいると思うんだ」

なんですって?


「自分の魅力に自信があるのに、痴漢に遭わないって焦って…」

そんな、シノブじゃあるまいし。

「もしくは、その魅力についフラフラと手を出しちゃった男が、パーティにいるのか」

冷たい目でマルクが言う。俺を見ながら言うのは止めていただきたい。


「再度、状況を整理しよう」

チョムスに賛成!

ほら皆、任務にんむ。


1.痴漢の出没は1、2階層の闇領域

2.被害者は生脚の女性

3.被害部位は脚腰

4.発生は約2ヶ月前から


んー敢えて言えばもう1つ。

「ナイスバディだって?」

いやそうじゃなく。だから冷たい目はやめてお願い。


被害者のレベルだ。

中堅、高レベル探求者はいるが、低レベルがいない。

「ふむ」

「確かに妙だな」


1、2階層を探求するのは、レベル1~2の探求者が多い。

中堅以上はもっと下の階層に行く際に通るか、マルクのように新しい武器を試す時だけだ。

とはいえ、低レベル探求者が闇領域を避けるからかも知れん。


「いや、それは無いな」

チョムスが言う。

「2階層へ行くには闇領域が近道だ。レベル3~4の探求者ならそこを通る」

だが、被害者は皆レベル5以上――あ、シノブがレベル3だ。

侍なんて職業を選ぶから、成長が遅いのだ。


そういえばシノブは、ここ2ヶ月無事だったのになぜ今日になって痴漢に遭ったんだ?

「装備とかに、何か違いは無いか?」

「うーん…あっ、そう言えば昨夜から、は…」

ポカリ。


マルクがシノブを殴り、口を止めた。

シノブは怒りもせず、自分の口を押えて顔を赤くしている。


ふと、違和感を感じた。

さてみなさん。

ここで数分お時間拝借し、"誰"が痴漢行為を働いたか考えて頂きたい。

とはいえ数分以上考え込む価値は、多分ナイ…

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