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学生の日の思い出  作者: 三文字
学生の日の思い出
3/8

旧友

 ふと思い出したように、僕は我に返った。学校で孤独だった自分が、なぜその話し相手を他クラスの生徒に求めたのかまではよく思い出せないので、思い出すのを止めた。

 僕は窓の外をなんとなく眺めた。外では枯葉が舞っていた。シャンソンの定番曲「枯葉」では、枯葉が舞う様子を叙情的に描写していたと思う。しかし、実際に見る枯葉は、どちらかというと風の強さに共鳴して荒々しく叫んでいるような印象を受けた。それはどこか、野生の小鳥が自らの命を守るために、南の大地へと必死に飛んでいくようなイメージにも似ていた。

 『今日はあいつに会う日だったか。』と今更ながら思い出した。

 僕は先に述べた通り、人と関わるのが苦手で、孤独と群集のどちらかを選べといわれたら、孤独のほうを選びがちな人間だった。それが今更になって、なんでこんなにあの頃の友人を渇望しているのだろうと、僕は疑問に思った。それは一種の奇跡のようでもあった。

 また、その「あいつ」とは高校のころの友人の後藤友則のことだ。他クラスの友人の中では一番仲が良かった。勉強で忙しいにもかかわらず、家まで遊びに行った唯一の友人だった。後藤の家は決して周りと比べれば豊かなほうではなかった。派手な性格でもなければ、何かに抜きんでて得意であるというものもなかった。あまりスマートではない容姿は残念ながら女子受けするタイプではなかった。考え方も事なかれ主義的なところがあり、それほど個性的というわけでもなかった。しかし僕はそんな彼に以前から備わっていた謙虚さと、来るもの拒まず去るもの追わず的な寛大なスタンスに感心したのかも知れない。いつの間にか彼と遊ぶ日々が、気づいたらその頃は日常になっていた。僕は工藤真也という名前だが、そのなんてことのない名前を、シンヤシンヤとよく呼んでもらった日々が懐かしい。

 ところで、いつの間にか自分はこの休日のうちの約4、5時間を、ほとんど無為に過ごしてしまったらしかった。朝に起きて、歯を磨き風呂に入り、着替えをしてパン一斤を食べコーヒーを飲み、その後は30分ほどネットの記事執筆のネタを考えていた。そうしたらいつの間にか物思いにふけってしまい、Youtubeで音楽をかけながらぼうっとしてしまって、気づけば11時40分頃を時計が指し示していた。ただ、後藤のとの待ち合わせ時間は、その後のラインのやり取りで、午後4時を予定していたので、そこは心配しなくて良さそうだった。疲れているせいか頭があまり働かないので、今日の昼食は外で適当に食べることにした。

 アパート近くの牛丼屋で牛丼を食べた。一人で牛丼を食べる姿もだいぶ様になってきていると自分で勝手に思っていた。無言で食べ終わり、お金を払ってありがとうございますと言って店を出た。

 そうすると、次に何をしようかという迷いと、空っ風が自分の心の中に舞い込んできた。でも、答えはほどなくして大体頭の中で決まった。大学の宿題をある程度やっつけて、その後ラノベを読んだりアニメを見たりしよう。そう思いつつアパートに帰った。

 大学もまだ二年目とあってか、課題の内容はそれほど応用的でも難解でもなかった。長くとも一時間以内で次の授業までに提出するものは大体終えてしまったので、その後は授業の復習も若干した。そしてやっと僕はライトノベルにありついた。

 思えばこの本も元はといえば、ネットで知り合った人が勧めているので読み始めた本だった。世の中には人に勧められたものにはまることができる人と、そうでない人の二種類がいると思う。僕は、一応前者に近い。そして僕はそうであってよかったと思っている。僕は元々内向的で自分の考えに凝り固まってしまうことが多い。だからこそ、数少ない友人から得られる情報は、自分の考えを広げるために貴重な材料となった。ほかの人の趣味に影響されることがなければ、何も始まらなかったと思っている。今、自分が語り紡いでいるこの言葉さえも。

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