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監獄世界の反逆者  作者: 芹澤 莉世
第1章 出会いと鍵
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7話 学園生活終了のお知らせ

 図書館棟の敵を片付けて、入学式が行われている講堂に向かっている最中にマリーからアドイドにメールが届いた。アドイドって便利だなと感心しつつメールを開けた。そこに書かれていた内容に驚いた。


 —— 樹、お疲れ様。このメールを見ているということはあなたの方も片付いたのかしら?そちらの後始末は私たちの方でやるので今すぐに自分のクラスの教室に向かいなさい。——


 また俺をはめやがったな。この借りは絶対に倍にして返してやる。


 そう誓った樹は一緒に添付されていた資料をみて、急いで自分のクラスの教室に向かった。



 式が終われば生徒は教室に戻り、担任からの挨拶とこの学園のシステムについて説明がされる。

 担任が教室にくるまでは自由時間だ。一仕事終えた樹が教室に入るとすでにクラス内ではいくつかのグループができていた。

 自分の席であろう窓側の一番後ろの席についた。友達作りに出遅れてしまった。


「ねぇ、あなた」


 友達作りに失敗したことに残念だと思い、眠りに入ろうとしたとき声をかけられた。

 横を見ると、隣の席の女子が話しかけてきた。


 今まで学校に通ったことの無い樹にとっては新鮮なことだ。少しテンションがあがった。


「俺になにか用?」

「少し確認したいことがあるんだけど……」


 えっマジ?!たぶんこれは彼女はいるのか聞かれるシチュエーションだよな?そういうのを異世界の漫画で読んだぞ。ここは自然な感じで……


「えっ?!なに?」


 彼女の返答に少し胸に期待を膨らませた。

 しかし、現実はそんなに甘くない。


「あなた、このクラスなの?」


 えっ.....嘘だろ。初対面でいきなりこんな人いたか確認する奴いるのかよ!マリーから送られてきた資料によれば俺はこのクラスだ。間違ってはいないはず。

 ここも自然な感じで.....


「そうだけど」

「あなた入学式の時にいたかしら?」


 やばい、やばい、やばい。いなかったことがばれてるぞ。俺の初めての学園生活が終わった。

 打開策はとにかくごまかすしかない。


「後ろの方の席に座っていたからじゃないかな?」

「そう。それは災難だったわね」

「あぁ……いろいろな」


 これで誤魔化せたはず……。しかし、よく見るとかわいいな。黒髪のロングヘアに……語彙力が乏しいのでこれ以上言い表せない。

 とにかく今、お近づきになれば今後の学園生活で良いことがあるだろう。次は自分から話しかけなくてはと思ったが少女から話しかけられる。


「あなた名前は?」


 今まさに同じことを訊くつもりだった。しかし、自分の名も名乗らずに上から目線とは如何なものか。そんなことは置いといて名乗ることにした。


「俺は最上(もがみ)(いつき)。君の名は?」

白雪(しらゆき)柑奈(かんな)よ。隣の席同士仲良くしましょ」

「あぁ、よろしく白雪」


 隣の美少女から名前を訊いてくるなんて初対面では好感触なのではと勘違いしているが実際のところはどうなのだろうか。


「どうかしたか?」

「私の名前を聞いてここまで反応が無いのは久しぶりだわ」

「なんのことだ?」

「本当に何も知らないの?」


 最近まで異世界にいた俺が今の情勢なんて知るわけがない。そのまま異世界にいたから知りませんでしたと言えば馬鹿にされるだけだろう。ここはシンプル・イズ・ベスト。


「知らないけど」

「それなら、知らない方がいいわ」

「なんなんだよ」


 こいつは俺をからかっているだけなのか、どうなのかは今は関係ない。今はもっと距離を縮めるために会話を続けなくては。


「なんでこの学園にきたんだ?」

「私は偉大な母を超えるためよ」

「白雪の母親はすごい人なのか?」

「そうね。母は優秀な魔法師よ。七武衆の1人。七武衆というのは国防省特殊機動隊第七小隊の生き残り。そのあとは軍に残り、権力を持つようになった今では考えることができない人達のことよ。」


 第七小隊は以前、俺が所属していた部隊だが、白雪ってどこかで聞いたことがあるような気が......。


「第七か……」

「なんか言った?」


 あの頃が懐かしくてつい言葉にしてしまった。

 チャイムがなる。チャイムがなると同時に担任が教室に入ってきた。生徒は自分の席につく。

 担任は全体を見渡してから口を開いた。


「このクラスの担任となった鳳 紅羽だ。これから1年間よろしく頼む。では、今からこの学園のルールブックを配布する」


 前の席から資料ががまわされる。

 この学園はシーラス王国が主導している国家戦略の一つだ。なぜ日本主導ではないのかという疑問は謎に包まれたままだが、実績は確かなもので、魔法師の道を極める高校生にとっては世界一位だろう。

 この学園の特徴は個々の能力を尊重しあい、互いに高めあうのを推奨している。そのための環境が全寮制で、ショッピングモールやスポーツジム、競技用の人口密林など様々な設備が整っている。

 ルールブックには五ヶ条が載っていた。


 1.魔法を学ぶ

 2.互いに尊重し、高めあう

 3.己の強さを証明する

 4.己の道を突き進む

 5.よりよい学園生活を送る


 これが五ヶ条らしい。全く意味がわからない。1と2と4はまだ理解できる。3はどうやって強さを証明すればいいかわからない。5はぼっちには辛いものだ。

 

「この学園は個々の能力を知ってもらうためにランキングポイント制度がある。ポイントを加算する方法は主に二つ。一つ目は学園内での決闘。相手の了承さえあれば、学園内のどの場所でも決闘をしても構わない。奇襲は決闘でにはならないので注意してもらいたい。

 二つ目は定期試験などの学校行事だ。この学園独自のプログラムがある。クラス対抗なので一致団結して頑張ってくれ。私からは以上だ。何か質問はあるか?」


 己の強さを証明するってそういうことか。いろんな人と戦って勝てということか。


 樹は妙に納得した。

 紅羽は教室を見回した。生徒たちの反応がないのを確認したら、


「何もないようなら今日はこれで解散とする。明日からも頑張ってもらいたい。それと......」


 紅羽は頼まれていたことを思い出した。


「最上 樹、学園長がお呼びだ。学園長室に立ち寄るように。では、解散」



 すべては今の世界を守るため。自分を変えるため。真実を知るため。理由が何であれ、この学園に入学した時点で彼らの物語の1ページに刻まれた。

読んでいただきありがとうございます。初登場の柑奈はこの後、樹といろいろと関わっていきます。次回は11月14日に更新予定です。

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