6話 学園戦場 後編
— 2053年 4月1日 11:00 am 学園 講堂 —
入学式は順調に進み、マリーが学園長として式辞を読んでいた。
「本学に入学した時点ですでに優劣がついてます。個性は人それぞれ違います。個々の能力を尊重しなければなりません」
新入生はマリーの言葉に真剣に聞いている。
「尊重しあい、協力してよい学園生活を送ってください。仲間を侮辱するような発言は控えてくださいね。あとで痛い目にあいますから。それではこの学園のこれからの発展と皆さんの進化に期待しています」
一歩下がりお辞儀をするマリー。華麗な彼女の姿に会場からは大きな拍手がたむけられる。
講堂の後ろで1発の銃弾が放たれた瞬間、全てのドアから2人ずつ現れた。会場は静まり返りった。マリーは銃声がした方に振り向く。振り向いた先には3人の実弾銃を装備した武装兵がいた。そのうちの一人が声を荒げた。
「動くな。全員デバイスを床に置いて、手を頭の後ろに組め」
こんな頭が悪い人がここまでいるのね
マリーは呆れていた。わざわざ、優秀な魔法師の卵や管理局局員がいる中で魔法を使えないからって実弾銃を持って戦力差のある不利な戦場に足を踏み入れているからだ。
ここは穏便に済ませたいわね
「ここはあなた達が踏み込んでいい場所ではないの。今すぐ立ち去りなさい」
「俺の命令に黙って従え」
武装兵が1発の銃弾を素手で全力でマリーに向かって投げた。銃弾は加速し続け、マリーの顔すれすれを横切った。壁には大砲で打たれてできたような大きな窪みができる。
「今のは警告だ。俺の命令に従え。次は眉間を撃ち抜くぞ」
敵の高圧的な態度は変わらない。マリーは動かないし、喋らない。
「おいおい、まさか一国の王女がこの程度で怖気ついたんだじゃないだろうな」
それでもマリーは動かないし、喋らない。
「こんな奴が国のトップかよ。とんだ腰抜けじゃねぇか。シーラスという国はお前らみたいにクズみたいな集まりなのか?ああん( º言º)」
しばらく動かなかったマリーは急に笑いだした。
「いやー久々に笑ったわ。わざわざ立ち去る時間を与えたというのが理解できなかったのかしら」
周囲は( ̄. ̄;)エット・・( ̄。 ̄;)アノォ・・( ̄- ̄;)ンーみたいな空気になった。
「何を言ってんだ、腰抜けが」
「あなたみたいなのが指揮官なんてとんだお馬鹿さんね。」
「バカとはなんだ。馬鹿とは!」
煽り続けていた敵が小馬鹿にされただけで怒りが湧いている。その程度ではマリーは気にする事はない。
「全てにおいてね。こそこそとこの島に侵入して、2手に分かれて行動していたみたいだけど、これに私が気づかないとでも思ったのかしら?まぁ、あなたみたいな自分の力だけで魔法を使ったことは褒めて差し上げるわ」
「まさかアドイドを使ってないことまで見抜くとは驚いたな」
「それは、私もよ」
まさかアドイドを使わずに魔法を使える人間がこんなところで出逢うとは思っていなかった。
「でも、喧嘩を売る相手を間違えたことに後悔しなさい」
武装集団の足元から複数の鎖がつきあがる。全身に鎖が絡まり、身体の自由を奪いつつ、地下へと徐々に引きずり込む。
「そうそう、別行動している彼らは私の部下が全員葬りましたよ」
「この.....悪魔め。ここから這い上がって、お前を絶対に殺す」
もがき苦しむ武装兵たち。数十秒で全てを地獄が吸いこんだ。会場はまた静まり返った。
あなたみたいな逸材にこんなことをするのは気が引けたけど、国民を侮辱した罪はとても重いのよ。
「さて、」
何事も無かったようにマリーは話し始めた。
「新入生の皆さんは魔法はどんなものなのか理解して使っていますか?ただ、魔法という貴重な才能を持っただけで、その腕を磨きをかけただけの魔法師なんていくらでもいます。そんな魔法師は必要ありません」
この言葉に会場全体がざわつく。
「なので皆さん、魔法とは何なのか?考えてみてください。私からは以上です」
マリーは会場をあとにした。
少し言い過ぎたかしら?
マリーは少し反省していた。しかし、新入生にはこの言葉に何か心が動くものがあった。
彼らの波乱の学園生活の幕が開けた。
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─ 2053年 4月1日 12:00 pm 戦魔特区A地区某埠頭─
「報告します。全部隊からの通信が途絶えました」
「ターゲットはどうした?」
「反応がロストしました」
「クソォ!!!」
出動したはずの部下からの通信が途絶えたことを報告された王 張は持っていた苛立ちを隠せなかった。
「これより旗艦は本部へ撤収する。特区内の隊員はD拠点に集合せよ」
まだ諦めてはいない王 張だった。
読んでいただきありがとうございます。次回は11月7日に更新予定です。