5話 学園戦場 前編
─ 2053年 4月1日 10:00 am 戦魔特区A地区某埠頭─
学園から少し離れた港に一隻の船が停泊していた。
船内では沈黙が流れていた。沈黙を打ち破る一通の連絡が入る。すぐさま部下が上司に報告する。
この上司の名は王張。かの有名な反政府組織のひとつの長である。
「A1から連絡。予定通り式の挙行することを確認。会場周辺では管理局の魔法師部隊が会場周辺を警戒している模様」
「了解。引き続き任務にあたってくれ」
王はにやりとした。
「聞いての通りだ」
彼の後ろで待機している実弾銃を装備した連中を向き語る。
「会場周辺には管理局の連中がいる。しかし、我々が恐れる敵ではない。作戦は予定通り決行する。総員、出撃」
低く貫禄のある声が響き渡る。
それを合図に大多数が上陸し、密かに作戦が開始された。
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─ 2053年 4月1日 11:00 am 学園 図書館棟 ─
図書館棟の警備をお願いされたとき、なんで何も考えずに返事してしまったんだ。ちくしょー。マリーにはめられた。
樹は後悔していた。友達というのは今はいない。入学式というより最初で最後のイベントで新しいクラスに行かなくて友達作りのスタートダッシュができないという今後の有意義な学園生活が台無しになってしまうと考えていた。しかし、マリーの罠にまんまとはめられたのだった。
「絶対に仕返ししてやる。覚えとけよーー!!」
天に向かって誓った。
ともあれずっと警備するのは暇である。
死んでから戻ってくるまでの空白の30年間について調べることにした。
図書館棟の2階にはネットで検索することが出来る個室がある。様々な論文なども検索することができるため、研究者には喉から手がでるほどほしい貴重な情報を得るためにハッキングを試みるものも多い。
その個室でまず、魔法関連について調べた。これはかなり簡単に情報が集まった。
樹が異世界に転生してから急速に魔法文明は成長していた。
アドイドという魔法補助装置が登場した結果、魔法が上手く使えない人でも簡単に使えるようになった。皆平等に魔法を使える世界が作られたと言ってもいい。ここまでアドイドが普及することが出来たのは謎だ。
次にかつての仲間について調べた。
彼らは活躍した功績が称えられて七武衆と呼ばれるようになり、絶大な権力を保持するようになっていた。
ただ、あの部隊には樹を含め少年少女7人しかいないため樹が抜けると6人になるので六武衆となるはず。それなのに七武衆と呼ばれているのは謎の7人目が存在することになる。
その謎の7人目について調べていた時だった。
ガチャガチャガチャガチャ
複数人の足音と装着している装備が動いて当たる音が部屋の外からした。
一応、マリーから警備を任されているのでめんどくさいが仕事をすることにした。といっても索敵魔法でどこにいるか把握するだけである。
「敵は10人、実弾銃所持の武装兵か……。それに戦いなれた動きだ。やっかいだな」
もう少し索敵魔法で観察してあることに気づいた。
「すぐそこまできているな」
そのことに気づいた瞬間、敵を待つのも時間がかかるので部屋の外で待つことにした。
「敵を発見。迎え撃て」
それを合図に途切れることのない銃弾の雨になって樹を襲う。樹はアドイドを使わずに自分の周囲に障壁を張り、ゆっくりと前に進む。障壁は厳密にいうと少し空間を歪ませた透明な壁を張っているだけである。
障壁に触れた銃弾は時が止まったように動きを止めた。それには敵も驚いている。
「撃て、撃て、撃て」Σ(´∀`)_┳※・・・・・・・・・・・・・
それでも銃弾の雨が止むことはない。
銃弾が樹に触れることは無い。
Σ(´∀`)_┳※・・・・・・・・・・・・・(((\( ̄ー ̄)/))) バリアー
これだけ銃声がなり続けたら誰か来るだろうし、そろそろ終わらせるか。
樹は障壁を解除し、銃弾を躱しながら全力で敵の目の前まで接近し、敵は驚き銃声が止んだ。その一瞬のすきに指をパチンと鳴らした。その瞬間、敵全員が体内から風船のように膨らみ破裂した。血で全身染めないために障壁を張って防いだ。障壁の内側だけ血に染まらなかった。
この魔法は悪魔の風船といい、指を鳴らした音が聴こえた全ての人間は破裂して必ず死に至らす魔法だ。殺傷性が非常に高く、どういう原理で破裂するかは研究者も音を聴くため研究をすることが不可能である。そのため未だに解明されていない。樹は指を鳴らせば人は破裂するという認識で使っている。ただ、魔法師だけは音を聴いても破裂しないらしい。
久しぶりにこの魔法使ったな……
この魔法を使うと心が痛む。目の前で人が苦しみながら、叫びながら散っていく姿を見るのは数えきれないくらい見てきた。その度に本当にこれが最善の方法だったのか考えてしまう。しかし、今は考えている猶予はない。敵がほぼ最短ルートで正確に攻めてきた。これは脅威だ。もし、入学式が行われている講堂で同じような状況だとすれば、いくらマリーでも新入生200人と来賓客全員を無傷で敵を倒すのは不可能に近い。
この状況はまずいと思い急いで講堂へ向かった。
それから数分後、先程の現場に1人の白いワンピースを着た少女が血の海の中心の小さな島に立っていた。
「パ……パ……」
しばらくして少女はその場から姿を消した。
読んでいただきありがとうございます。
最後に登場した少女の言葉の意味とはどういうことなのでしょう。
次回は後編です。講堂ではいったい何が起きていたのか10月30日までお待ちください