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監獄世界の反逆者  作者: 芹澤 莉世
第1章 出会いと鍵
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4話 お母様が学園長

 日本は魔法関連の技術や魔法師の実力は世界トップクラスである。もともと技術大国であった日本は魔法師の育成にも力を入れた。

 その結果、東京湾に埋め立てられた人工島が完成した。

 縦に3㎞、横に4㎞の広大な敷地に建てられた魔法師を育成を目的とした高等魔法師養成学校。


 魔法の進化と同時に法整備など環境が整い始め、国がさらに魔法師に力を入れるための計画の一つとして組み込んだ。対抗心を燃やすための様々な工夫がされ、個々の能力も向上している。


 現在はなぜかシーラス王国が指揮をとっている。

 全寮制のこの学園にマリーは権力を行使し、アンリと一緒に樹を送り込むことに成功した。樹にとっては迷惑な話だ。



 **********************



 ─ 2053年 4月1日 9:00 am 学園 学園長室 ─


 あとで1時間で入学式が挙行される。

 もうすでに緊張や不安で押しつぶされそうになっている者やすでに楽しんでいる者、己の強さを証明しようとする者もいる。新入生は事前に発表された各クラスの教室に別れて、担任からこの学園の説明を受けた後、入学式という流れになっている。樹とアンリには関係のない話である。

 二人は学園長に呼び出され、学園長室にいた。


「待っていたわよ、樹」


 そこにいたのはマリーだった。


「待っていたわよ……じゃねぇよ。なんでここにいるんだよ。学園長はどこだよ」

「ここにいるじゃない」

「どこに?」


 樹は部屋を見回すがそれらしき人はいない。

 アンリが優しく耳を近づけて教えてくれた。


「学園長はお母様よ」

「えっ、まじで!マリーが学園長!?」


 まさかマリーが学園長だなんて驚いた。普通、国のトップが他国で学園長やってるなんて思わないだろ。ていうかできるわけないだろ。


「その様子だと何も知らずにこの学園に来たのね」


 マリーは少し大きいタブレット端末を樹に渡した。

 樹に渡したタブレット端末にはこの学園のシステムについて記されている。

 下から上へ指を動かし、ゆっくりと目を通していく。


 この学園はシーラス王国主導である。そのため実力主義である。高等魔法師としての資格取得条件を基準とし総合的に判断してAからFまでのクラスに分けられる。学園側から全校生徒に薄っぺらい情報端末型の専用アドイドが配布される。専用アドイドにはメールや電話、魔法発動補助システムはもちろん、学生証、電子マネー、自宅の玄関の解除キーなど様々な便利な機能が組み込まれている。ため、学園内の図書館棟などの出入りや、島内でのショッピングモールやコンビニなどで買い物をする時なとど、様々な用途でアドイドを使う。


 なぜ専用アドイドが配布されるというとこの学園は全寮制だからだ。それは島から出ることが特例を除き校則で禁止されているからでもある。


 この学園のカリキュラムについてさっぱりわからん。こういう禁止事項やら注意事項やら堅苦しいことは昔から苦手だ。それに俺はどのクラスかすらまだ知らない。たぶんAクラスだろうけど一応確認しておくか。


「なぁ、マリー。いくつか聞きたいことがあるんだけど」

「何ですか?」

「この学校はなんでシーラスが指揮をとっている?」

「それは日本といろいろと交渉した結果ですよ」


 いやいやいや。どういう交渉したら国の計画を奪うことができるんだよ。わけわからんから次だ。


「じゃあ、クラス分けはどういう基準で行われている?」

「魔法能力や性格など総合的に評価して行っています。」

「それなら俺のクラスどこだ?」

「まだ言ってませんでしたっけ?樹はEクラスですよ」


 それを言われた瞬間、頭が真っ白になった。


「どういうことだよ。なんで俺がEクラスなんだよ」

「樹の気持ちはわかるけど総合的に判断した結果よ」

「納得がいく説明をしてくれ」

「アドイドを使って魔法を発動できない。ただそれだけよ」


「ただそれだけって……」


 納得いかない。アドイドを使える以前にまず実物を見たことがない。使ってもいないのに魔法を発動できないと言い切られるのは侵害だ。こうなったら実際に使えることを見せつけてやる。


「アドイドを貸してくれ。俺が実際に使えるところを見せてやる」


 マリーは大きな二つのお山の谷から薄っぺらいアドイドを取り出し、樹に渡した。


「できるものならやってみなさい」

「やってやるよ」


 と意気込んだもののこれどうやって使うんだ?これを壊せばいいのか?でも壊したら一回しかつかえないよな。まあ、壊しても魔法で修復されるか。


 アドイドを横向きで両端持ち、片足を上げ、太ももに両手で持ち、そのまま木の枝を折るように勢いよく折ろうとしたその瞬間、


「す、ストーップ」


 アンリは今から慌てて止めに入った。


「使い方違ってた?」


 アンリは大きくうなずいた。


「どのへんが違ってた?」


 樹はアンリが止めに入った意味がまだ理解できていない。


「最初からよ」

「えっ、まじで」


 へし折るのは違うのか。だったら握りつぶせばよかったのか。


 今度は力いっぱいにアドイドを握ったがつぶれない。それなら自分の魔法でと自己強化魔法を使いアドイドを殴り壊そう

 まだ理解できていない樹にアンリは呆れて深くため息をついた。


 そのタイミングで生徒会長の夷川 時雨が入学式の最終打ち合わせにやってきた。


「いったい何の騒ぎですか?」

「気にしないで。家畜に餌を与えただけだから」

「家畜に餌ですか......」


 時雨はこの少年に餌を与えただけでここまで暴れているのだろうという蔑んだ目で見た。


「そんなことよりも学園長。入学式の打ち合わせをしたいのですが」

「もうそんな時間なのね」


 腕時計で時間を確認した。


「樹、式中は図書館棟の警備をお願いね」

「了解」


 この何気ない返事があとで後悔することになる。


「それでは少し場所を変えましょうか」


 マリーは学園長室の隣のある来賓室に時雨を案内した。

読んでいただきありがとうございます。肝心な少女は次回少しだけ登場します。次回は10月24日更新予定です。

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