11話 出会い
「ここが廃工場か」
樹は廃工場の正門前まで来た。
この廃工場は7年前まで第一世代のアドイドに搭載されている魔法発動補助システムを製造していた。
高等魔法師養成学校で生徒に配布されているアドイドは最新型の第五世代である。
(樹やアンリが使うことになるアドイドは第五世代とは異なるシステムが使われているため不明)
ーーバタッ
これから工場の内部に潜入しようと足を動かし始めたとき背後で何かが倒れる音がした。音がした方を振り向くと赤いマントを被った大きい人形のようなものが横たわっていた。
これほど大きな人形は誰が捨てたんだよと思いつつも人形の前でしゃがみこんで観察してみる。
あきらか人の形をしていて、うつむきで倒れていて、頭は赤いマントを被っているため容姿がわからない。
よく見てみると、一見赤いマントのように見えていたが白い布に赤い液体が染み込んだように見える。これは本当に人形なのかと疑いながら、あおむきの状態にした。樹は驚いた。
「人間、それも女の子だと!?」
見た目は小学3年生から4年生ぐらいで元は白であっただろう赤いマントの中に白のワンピースを着た女の子。金色の長い髪は美しく見えるが毛先がはねたりとボサボサ頭。しっかりとした顔立ちだが少女らしい可愛らしさもあるが、腹部に何かで切られた後が生々しく残っている。この傷ができてからそれほど時間は経っていない。
怪我人を治療できる魔法なんて知らない。それでも傷口を塞いであげたいので硬化魔法を使った。イメージとしては物体と物体を接着剤でくっつけているに近い。といっても応急処置をしただけだ。なるべく早く医者に診てもらうのが一番いいだろう。
病院に連れて行きたいがどの病院がいいのか知らない。それにこの少女が誰かに襲われて傷を負ったのならその犯人がまた襲うかもしれない。それを考慮すると1番安全な場所はおそらく学園だろう。そこならマリーの魔法で傷を治すことも、俺が近くで守ることもできる。そうと決まれば急いで学園に戻らなければ。
樹は浮遊魔法で少女を宙に浮かし、ステルス性がある障壁の膜で少女を包んだ。
樹は防御系統魔法を最も得意とする魔法師だ。
その中でも敵の攻撃を防ぐ障壁生成を得意とする。
本来であれば攻撃を防ぐだけしかできないただの壁。透過魔法と併用することで物体を透明にすることが可能な膜である。
青い狸の秘密道具の1つの「透明マント」を想像すれば分かりやすのかもしれない。
次に運搬方法だが、これは少女を抱えていくしかない。少し不自然な動作になるかもしれないが魔法で移動速度を上げればなんとかなるだろう。
こうして少女を抱えてマリーのもとまで走った。普通の人間が走るよりも5倍以上の速度で。
これが異世界転生して戻ってきた元兵士の反逆者となった少年と謎の少女の最初の出会いだった。
そして、もう一つの新たな出会いが生まれていることを彼らはまだ知らない。
読んでいただきありがとうございます。今回で第1章は終わりです。次回から第2章の開幕です。2人の親密な関係が築かれる予定です。これからも是非読んでくださると嬉しいです。次回更新は12月12日に予定です。




