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童話

見えない目〜夢の祝福〜

作者: 由
掲載日:2018/03/07

「見えない目」の続編です。「見えない目(https://ncode.syosetu.com/n7649en/)」を読んでからお読み下さい。

 読みにくいとは思いますが、児童向けにあまり漢字は使わず、漢字全てにルビが振ってあります。ご了承下さい。


 ホトリは、夢(ゆめ)を見(み)ていた。



 あれは、二年前(にねんまえ)のとても寒(さむ)い冬(ふゆ)の日(ひ)のことだった。

 外(そと)に一度(いちど)出(で)たら、二度(にど)と戻(もど)って来(く)ることができないくらいの猛吹雪(もうふぶき)で、だれも人(ひと)が訪(たず)ねて来(こ)ようとは思(おも)っていなかった。

 ところが、夜(よる)の十時頃(じゅうじごろ)、戸(と)をたたく音(おと)が聞(き)こえてきた。

 ホトリも母親(ははおや)も耳(みみ)を疑(うたが)った。


 ——トントントントントントントントントントン。


 リズムよく戸(と)をたたく音(おと)。

 しょく台(だい)を片手(かたて)に持(も)ち、もう片方(かたほう)の手(て)をホトリとつないだ彼女(かのじょ)と二人(ふたり)、ろう下(か)を進(すす)んでいく。

 戸(と)の前(まえ)まで行(い)き、「どなたですか?」と、彼女(かのじょ)が尋(たず)ねた。

 すると、「私(わたし)は、夢使(ゆめつか)いのナグと言(い)います。」と、名(な)のった。


「夢使(ゆめつか)いですか?」

「そう。夢使(ゆめつか)いです。」

「その、御使(みつか)いさまがこんな日(ひ)にどうされたのですか?」

「哀(あわ)れな、少年(しょうねん)に夢(ゆめ)の祝福(しゅくふく)を届(とど)けに来(き)ました。」

「まあ、それはありがとうございます。戸(と)を開(あ)けるのでお待(ま)ち下(くだ)さい。」

 そう言(い)って、彼女(かのじょ)は戸(と)を開(あ)けた。

 夢(ゆめ)の御使(みつか)いは、雪玉(ゆきだま)のようなものを差(さ)し出(だ)し、ホトリの頭(あたま)の上(うえ)にのせて言(い)った。

「この祝福(しゅくふく)は、時(とき)が来(き)たらこの子(こ)の中(なか)からとけ出(だ)すだろう。」と。

 そうして、夢(ゆめ)の御使(みつか)いは怯(ひる)むことなく猛吹雪(もうふぶき)の中(なか)を進(すす)んでいった。

 姿(すがた)が完全(かんぜん)に見(み)えなくなると、ぱったりと吹雪(ふぶき)が止(や)んだ。

 

 いつの間(ま)にかホトリの頭(あたま)の上(うえ)の雪(ゆき)は、消(き)えてなくなっていた。

「よかったわね。ホトリ。」

「母(かあ)さん。夢(ゆめ)の祝福(しゅくふく)ってなんだろう?」

「さあ、何(なに)かしら? きっと、素敵(すてき)なものにちがいないわ。その時(とき)が来(く)るまで、楽(たの)しみにしていましょう。」

「うん。」



*


「あー、すっかり忘(わす)れていた。あの祝福(しゅくふく)は、何(なん)だったのだろう?」

 そう、目(め)を覚(さ)ましたホトリがつぶやく。


 起(お)きだして、身支度(みじたく)をしていると、戸(と)をたたく音(おと)が聞(き)こえてきた。


 戸(と)を開(あ)けると、「やあ、ホトリ。元気(げんき)にしていたか?」と、おじさんがあいさつをした。

「おじさん!」

「姉(ねえ)さんは、いるかい?」

「母(かあ)さんは、いなくなったんだ……。」

「何(なん)だって!? まだ、子(こ)どものホトリをおいてどこに行(い)ったんだ?」

「わからないよ!」

 そう言(い)って、ホトリは彼(かれ)に抱(だ)きついた。

 ホトリは、母親(ははおや)の死(し)をいまだに受(う)け止(と)めきれていません。

「かわいそうに……。」

 彼(かれ)はそう言(い)って、ホトリを抱(だ)き返(かえ)した。

「ホトリ。いつから一人(ひとり)でいるんだ?」

「昨日(きのう)からだよ。」

「そうか。それなら、誕生日(たんじょうび)は一人(ひとり)だったのか……。今(いま)から私(わたし)とお祝(いわ)いしよう!」

「おじさん、ありがとう!」



 そうして、二人(ふたり)でお祝(いわ)いしていると、すっかり暗(くら)くなり夜(よる)になった。

 ホトリの目(め)が開(ひら)きはじめる。

 ホトリは、目(め)を開(あ)けて彼(かれ)を見(み)た。

 すると、彼(かれ)の胸(むね)のあたりが黒(くろ)く見(み)えるではないか。

 さらに目(め)をこらしてみると、彼(かれ)が寝(ね)ているホトリをしばって、知(し)らない人(ひと)に渡(わた)している姿(すがた)が見(み)えた。

 ホトリは、魔法使(まほうつか)いの言葉(ことば)を思(おも)い出(だ)す。


『わたしの魔法(まほう)が未熟(みじゅく)だったから、あなたの目(め)が昼(ひる)は見(み)えなくなってしまったの。そのかわりに夜(よる)になれば、ほかの人(ひと)には見(み)えない心(こころ)の中(なか)まで見(み)えるはずよ。』


「これは、おじさんの心(こころ)の中(なか)なの?」

 ホトリはそう思(おも)うと、とても悲(かな)しくなった。

 やさしい彼(かれ)が、自分(じぶん)をすてるはずがない。そう思(おも)いたかった。

 けれども、彼(かれ)の胸(むね)のあたりを見(み)ていると、ホトリを渡(わた)した後(あと)の彼(かれ)が大金(たいきん)を手(て)にし、大笑(おおわら)いしているようすが映(うつ)し出(だ)された。

 それから、実際(じっさい)の彼(かれ)の顔(かお)へと目(め)を向(む)ける。

 すると、ニヤニヤと笑(え)みを浮(う)かべていたのだ。

 ホトリは、これが彼(かれ)の本性(ほんしょう)なのだとさとった。


「あれ? ホトリ。目(め)が開(あ)くようになったのか?」 

「うん。見(み)えないけど、まぶたを上(あ)げることができるようになったんだ。」

 ホトリはとっさにウソをついた。

 そして、彼(かれ)に売(う)られないようにするにはどうしたらいいかを必死(ひっし)に考(かんが)える。

 

「そういえば……。」

  地下(ちか)にたくさんのお酒(さけ)が保管(ほかん)されていることを思(おも)い出(だ)した。

「おじさん。お祝(いわ)いと言(い)ったらお酒(さけ)だよね? 地下(ちか)にたくさんあるって母(かあ)さんが言(い)っていたんだ。よかったら、好(す)きなだけ飲(の)んでいって。」

 

 そうして、地下(ちか)から運(はこ)んできたお酒(さけ)を次(つぎ)から次(つぎ)へと注(そそ)ぎ、酔(よ)いつぶすことで先(さき)に寝(ね)ないようにした。

 空(あき)ビンが十(じゅう)を超(こ)えるころになり、やっと彼(かれ)は酔(よ)いつぶれて眠(ねむ)った。

 

 ホトリは、ホッとして口(くち)から息(いき)をはく。


 その時(とき)、しょく台(だい)のロウソクが燃(も)えつきて火(ひ)が消(き)え、真(ま)っ暗闇(くらやみ)になった。

 闇(やみ)がホトリの心(こころ)を黒(くろ)く染(そ)めていくかのように、怒(いか)りの感情(かんじょう)がわき上(あ)がってくる。

「魔法使(まほうつか)いのウソつき! どこにすばらしい世界(せかい)が広(ひろ)がっているっていうんだよ! 夜(よる)だけ目(め)が見(み)えたって、真(ま)っ暗闇(くらやみ)じゃないか……。」

 

 ホトリの目(め)に涙(なみだ)があふれてきた。

 涙(なみだ)を服(ふく)の袖(そで)でぬぐい、窓(まど)の外(そと)に目(め)を向(む)けた。


「昨日(きのう)はあんなに星(ほし)がかがやいていたのに、今日(きょう)は、星(ほし)も月(つき)も何(なに)も見(み)えない。……母(かあ)さん。ぼくはどうしたらいいの?」

 ホトリは、彼(かれ)をどうしようか悩(なや)みながら、しょく台(だい)に新(あたら)しいロウソクを立(た)てて、火(ひ)をつけた。


 すると、彼(かれ)が寝苦(ねぐる)しそうにうなっているようすが見(み)えた。

 なぜか、彼(かれ)の頭(あたま)がぬれて水(みず)たまりができている。


 しばらくすると、彼(かれ)がガバッと起(お)き上(あ)がった。

 ホトリはびっくりして、後(うし)ろへ下(さ)がる。

 彼(かれ)はホトリの姿(すがた)が目(め)に入(はい)ると、おびえだし、謝(あやま)ってきた。

「許(ゆる)してくれ! 何(なに)もしないから殺(ころ)さないでくれ!」

「えっ!?」

 ホトリには何(なに)がなんだか分(わ)からない。

「もう、ここには来(こ)ないから許(ゆる)してくれ。」

 彼(かれ)はそう言(い)って、あわてて出(で)て行(い)った。


 残(のこ)されたホトリは、ぬれていた場所(ばしょ)をぞうきんでふこうと、その水(みず)たまりにふれる。

 すると、突然(とつぜん)、その場所(ばしょ)をなでるように風(かぜ)が吹(ふ)き、水(みず)たまりは消(き)えてなくなった。


「もしかして……。これが、祝福(しゅくふく)?」



*


 その後(あと)も、一人(ひとり)になったホトリを下心(したごころ)を持(も)って訪(たず)ねて来(き)た者(もの)たちは、何人(なんにん)もいた。

 しかし、その者(もの)たちはみんな悪夢(あくむ)にうなされ、おびえて去(さ)って行(い)った。


 ホトリは、時々(ときどき)訪(たず)ね、助(たす)けてくれるやさしい人(ひと)たちには、母親(ははおや)が残(のこ)していった涙(なみだ)の水晶(すいしょう)を木箱(きばこ)から出(だ)して渡(わた)し、感謝(かんしゃ)の気持(きも)ちを伝(つた)えた。

 ところが、やさしい人(ひと)たちは、それを受(う)け取(と)ることはなかった。

「それは、あなたにとって大切(たいせつ)な宝物(たからもの)でしょう? それを私(わたし)にくれようとするその気持(きもち)ちだけで私(わたし)の心(こころ)は満(み)たされました。その水晶(すいしょう)は、あなたが持(も)っていてこそかがやくもの。だから、ずっと大切(たいせつ)に持(も)っていてください。」と、みんな同(おなじ)じようなことを言(い)うのだ。



 そうしてホトリは、心(こころ)やさしい人(ひと)たちに見守(みまも)られておだやかな幸(しあわ)せを感(かん)じながら、すこやかに成長(せいちょう)していった。





 さて、下心(したごころ)を持(も)った者(もの)たちが、どんなにおそろしい夢(ゆめ)を見(み)ていたのか。

 それを知(し)っているのは、そのおろか者(もの)たちと夢使(ゆめつか)いのナグだけ。

 

 あなたはその悪夢(あくむ)を見(み)たいと思(おも)うだろうか?






※しょく台(だい)……ロウソクを立(た)てる台(だい)のこと



 お読(よ)みくださり、ありがとうございます。


「この作品は、続きが思いつかず強引に終わらせてしまったので、リサイクルに出そうか悩んでいます。

 リサイクルにご興味のある方は、↓までどうぞ。

 https://ncode.syosetu.com/n0888en/」


と、前作「見えない目」の後書きで言っておりましたが、思いついて続きを書いてみました。

 そのうち思いついたら、さらに続編を書くかもしれません……。


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本作は、「見えない目」の続編となっています。
― 新着の感想 ―
[良い点]  ホトリの将来に安心できました。  ホッとしました。 [一言]  そんなに前でもないのに懐かしいな……。  由さんと私のファーストコンタクトの作品ですよね。  やっぱり、自分でちゃんと続…
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