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お互い様

「終わったから様子を見に行こうと思ったら、堀田君と会ってね。それで翔君が今1人だからって聞いたから差し入れを持ってきたよ」


なるほど、だから2本なのか。


「あ、はいありがとうございます。でももう終わったんで……」


「じゃあ、お疲れ様ってことで休憩にしよ。私も試験受けてきたから、ちょっと休みたいんだ」


優希先輩はいつもの席について、俺にも座るよう促す。


「はい、頂きます」


めったに飲めないジュース、ありがたく頂こう。


「今日まで本当に頑張ったね。おめでとう」


「いえいえ、優希先輩の予定があったからです。俺が言いだしっぺなのに、迷惑をかけてすいません」


「迷惑なんて思ってないよ。頑張ってる翔君を応援できて本当に私もうれしいよ」


優希先輩の笑顔は、それが本心であることを感じさせる。


「結局最後まで、優希先輩に頼ってばかりでした」


「むー、そんなしょぼくれた顔しちゃ駄目だよ。今すごく学校全体が盛り上がってるのに、その代表の会長が落ち込んでちゃ、皆が心配するでしょ?」


「は、はい」


「うんうん、それに、翔君がアイディアを出してくれたから、皆今日までやれてるんだし、翔君は間違いなく翔君にしかできないことをやり遂げたんだよ、自信もって!」


優希先輩の励ましは、精神的なものだけでなく、説得力もあるので、より俺を元気にしてくれる。


今日の疲れも吹っ飛びそうだ。


「はい、まだまだ頑張れます!」


「……、翔君、一個だけ聴いてもいいかな?」


「はい、何ですか?」


「翔君は、どうしてそんなに頑張れるのかな?」


「何か唐突ですね」


「翔君は、何をするにも一生懸命で、しかも結果も出せちゃうから、すごいなって思って。もちろん頑張って結果が出せない人を悪く言うわけじゃないよ。でも、結果も出せる頑張りって、並大抵のことじゃないと思うんだ」


「はい、俺は…………、優希先輩がいたからです」


言うか言うまいか迷った。学校の生徒全員のためというのは、もちろん嘘ではないが、俺が努力をした理由はそれしかない。


「私?」


優希先輩は少し驚いていた。


「はい、優希先輩は、俺にこの高校に来るきっかけをくれて、俺が生徒会に挑戦するきっかけをくれて、そして、俺のあこがれでした。優希先輩が、努力した話を聞いて、優希先輩と同じ学校に行きたくて、頑張って高校に合格しました。会長として学校の生徒から、尊敬を受けている優希先輩を見て、少しでも優希先輩と肩を並べられる人間になりたいと思って、頑張って、生徒会長になりました。会長になって、優希先輩が、生徒会のメンバーとして、側にいてくれることになって、近い距離で接することができるようになって、少しでも優希先輩と一緒にいても恥ずかしくない存在になれるように、がんばりました。俺にとって、努力し続けられる理由は、優希先輩です」


「……、は、恥ずかしいな~。そんな風に思っててくれたんだ~」


優希先輩は顔をちょっと紅潮させて、笑っている。


「あ、改めて言うと、俺も恥ずかしいですけど、俺はずっと優希先輩に憧れてました。それは今でも代わりません」


「……、ありがと……。だったら、私も同じかな?」


「同じ? どういう意味ですか?」


俺は優希先輩の言っている意味が分からず困惑する。


「私は頑張ってる人を応援するのが好きなの。努力して結果を出せることて、とても嬉しいことだから、それを感じられる人が1人でも多くいてくれればうれしいなって思って。生徒会長になったのも、それが理由。

皆のために、頑張れる環境を作りたいって思って」


「すごいですね……、俺は自分のことで精一杯で、そこまでは考えられませんでした」


自分のことだけでなく、人のことも考えられる。やはり器が違う。


「ううん、だから、私は頑張ってくれる人が側にいないと頑張れない。だから、翔君がいてくれて、翔君がいつも見ててくれて、すごく嬉しかった。私もがんばらなきゃって思ったもん」


「俺が、優希先輩のお力になれたんですか」


「うん、それで、翔君のために頑張ろうって思って、ついうっかり暴走しちゃって、怪我させちゃうことにもなったけどね」


「ああ、あれはそう言うことだったんですか」


優希先輩の様子がおかしくなったのは、俺の頑張りが少しでも結果につながるように尽力してくれたからなのか。


「うん、でもまさか後輩に怒られて、しかもかばってもらっちゃうなんて、あれは大失敗だったね」


「今となっては、あれも良かったですよ。生徒会メンバーの団結力も上がりましたし、優希先輩も冷静になってくれましたから」


「ふふ、言い方が何かいじわるじゃないかな?」


「気のせいですよ。尊敬する先輩にそんなこと言うはずがないじゃないですか。元々は俺が優希先輩に甘えすぎなせいでもありますし」


「そんなことないよ。私がつい手を貸したくなっちゃうのがいけないんだから」


ああ、改めて思うが、やっぱり俺は、この人のこと好きだなぁ……。


ずっと憧れていた人から、俺が頑張ってる姿を見て、頑張れるなんて言われて……、つい手を貸したくなっちゃうくらいの存在ではいられていることが嬉しくて。


「優希先輩……、俺、後期は生徒会やらないつもりなんですよ」


「え? そうなの? 真理亜ちゃんが張り切ってたから、翔君も続けると思ってたけど……」


優希先輩は少し驚いていた。


「はじめは、優希先輩と同じく1年間学校を支えていこうと思ってました。でも今の俺には、大事なことがもう1つできたんです」


「それは何かな?」


「俺、大学に行きたいと思ってるんです。優希先輩が目指している大学に行きたいんです」


「え……?」


今度はさっきよりもずっと驚いていた。


「だから、生徒会の活動は任せて、もっと勉強して成績を上げて、もっとアルバイトをして、大学に入るお金を稼いで、それで優希先輩の側にもっと居たいと思いました。優希先輩とは、学部は違いますけど、また頑張る姿をあなたに見せて、一緒に努力して生きたいと思ってました。今日までずっと悩んでたんですけど、優希先輩にとって、俺が側にいることがわずらわしくないということが、さっき分かりましたので、俺は決意しました。両親には悪いですけど、また貯金して、奨学金を狙って頑張ろうと思いま……、優希先輩?」


いつの間にか優希先輩の顔が真っ赤になっていて、全部言葉を出す前に止めてしまった。


しまった。勢いでいろいろしゃべってしまったけど、まるでこれじゃ告白みたいじゃないか。


これはまずい。優希先輩は俺が側にいることはいいことだとは言ったが、恋人関係的な意味で言ったとは限らない。俺に下心があるみたいに思われたらどうしよう。


「す、すいません。勢いで変なこと言ってしまって……」


「う、ううん。そんなことない。すっごく素敵……」


「え……」


聞き間違いか?


「それに、とってもうれしい……、翔君は大学には行かないと思ってたから……、私の言葉や存在なんかで、また翔君が頑張ってくれるなら……、側に居てくれるなら……、あ! きょ、今日は私この後用事あるんだった。ごめんね。じゃあまたね!」


そう言って、優希先輩は唐突に生徒会室を出て行った。


つい恥ずかしいことを言ってしまって、胸のドキドキは止まらない。だが、とても満たされている。


俺が側にいることを、優希先輩は許してくれている。それだけで、また頑張る原動力になる。


さぁ、生徒会長としての仕事は少ないけれど、最後まで気を抜かずにやらなくちゃな。


俺は決意を新たに、生徒会室を後にした。





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