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転生妖狐さんのゲームのない生き方  作者: 油揚げ山盛り
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第五話 あなたを こえたくて

自分たちが村の広場に戻って来たが、広場には誰一人いなかった。その上、外に物も何もない。

ミルクはとても驚いて、辺りをキョロキョロと見まわしている。

「あ、あれ?みんなどこに行っちゃったの?」

「・・・多分家の中にみんないる。もしかしたら人間が俺たちを追ってきてこの村に来てしまった時のための行動だ。ここは元々人間が住んでいて、セントラルタウンが出来てから、誰もこの村には住まなくなってな、そこに目を付けた魔物達・・・おそらくこの村の長とその仲間たちが住み始めたんだろう。家が古い状態のままになっているのは、人間に、ここに魔物の集落があることを隠すためだ。大体の人間はここに住んでいた人がいたことを知っているから、家が建ってても何も不思議には思わないさ。」

「そ、そうなんですか。知らなかったです。」

ミルクが今の話を信じているけど、この魔物、ここの村の住民ではないよね、服装から見て明らかに。それにちょっとこじつけがあるような気がする。

自分は魔物とこっそり話した。

「・・・今の話、嘘ですよね。」

「ああ。とりあえずお前らを安心させようと思ってな。どこで分かった?」

「みんな家の入口から気配がするんですよ。もし人間が入ってきたら殴りかかるつもりなんでしょうか?」

「まあ、そうだろうな。俺も同じことを考えてた。でも作り話としてはいい出来じゃなかったか?」

「理論的で合理的でしたね。多分。」

「それはそうと、お前は何者なんだ?子供にしては明らかに規格外なスキルとパワーと頭脳だ。今まで50年生きてきてお前のような奴は一度も見たことがない。いったい誰に育てられたらそんなことになるんだ?」

・・・そんな事言われても困るな。転生したなんて言えないし。嘘ついてごまかしておこう。

「自分一人で頑張って生きてきた結果です。」

「・・・この村にはいつ住み始めたんだ?」

「いや、住んではいませんよ。今日、この村の近くを歩いていたらミルクさん達と出会って、連れてきてもらったんですから。」

「その割にはずいぶん仲がいいな。今日初めて会ったんだろう?」

「だって自分含めてみんな子供ですし。すぐ仲良くなれますって。」

「そうかぁ?」

「そうですって。」

「あのー、二人とも何の話をしているんですか?」

ミルクは二人でこそこそと話をしているのに気づいて、話しかけてきた。

「別に大したことじゃないよ。」

「・・・ただの世間話だ。」

そう言って二人は話の内容をごまかした。

そうしていると、目の前の家からおばちゃんがこそこそと出てきた。そしてすぐに自分たちの存在に気付いて、こっちに来た。

「あ、あんた達、だいじょうぶだったかい?」

「うん、大丈夫だよ。」

「はい、怪我もないですし。」

「・・・出てきても大丈夫だ。人の気配は全くしないぞ。」

「具体的な距離は?」

「大体、500mぐらいだ。まあ、今日は村の外には出ない方がいいだろう。」

「そうかい。じゃあそのことをみんなに伝えるよ。」

そう言って、おばちゃんは家の方向に走って行った。

そして、リナとパールはおばちゃんが走って行った少し後に、こっちに向かって走って来た。その時の顔は恐怖と心配が無くなって喜んで泣いている顔だった。ミルクも泣き顔になっていた。そして、ミルクとリナは泣きながら抱き合った。それを見て、自分は安心した顔つきを見せた。

「ううっ・・・よかった。無事に戻ってきて。」

「こ、怖かったよ。僕、人間に見つかってつかまりそうになって・・・」

「二人とも無事でよかったのだー・・・」

「ええ。そこのお兄さんの的確な指示があったからね。」

「二人を助けてくれてありがとうなのだー・・・」

パールはそう言って魔物のお兄さんに深々と頭を下げた。・・・50年生きてきたとか言ってたけど見た目若いしお兄さんでいいよね。呼び方。

「いや、俺は大したことはしてないさ。それに助け合うことは当然のことだしな。」

そう言って、そのお兄さんはパールの頭をなでてあげた。

そうこうしていると、村の住民のほぼ全員が広場に集まった。そして、最後に村の長らしき魔物がやって来た。いかにも年寄りらしい歩き方で。

「大丈夫じゃったか?おぬしら。」

「はい。ケガも無いです。」

「それはよかった。・・・何かあったらワシに伝えるんじゃ。人間どもはワシがボコボコにしてやるからのう。」

そう言う長に、リナが言葉をかえした。

「おじいちゃん・・・あんまり無茶をしないで。村のみんなが心配するから・・・」

「・・・大丈夫じゃ。心配はいらぬ。」

「だから余計に心配するのよ。そういうところが。」

自分がリナと長が話しているのを見ていた時、パールが自分に話しかけてきた。

「・・・ミルクから聞いたのだ。クラッセが人間を物怖じしないでやっつけていたって。」

「・・・それが普通のことだよ。強くなりたいと思う気持ちがあるなら。」

「自分も強くなりたいのだ・・・。そして村のみんなを守ってみせたいのだ。」

「あなたならできる。だから、その向上心と諦めない心をいつまでも忘れないでね。」

「分かったのだ。・・・でも何をすればいいのかー?」

その質問を問われて、自分が悩んでいると、魔物のお兄さんがこう言った。

「とりあえず今はこの村の大人達に稽古をつけてもらえ。それで少し実力と経験がついたら強いやつの弟子になって修行するんだ。・・・今からそれぐらいしとけば、大半の人間には勝てるようになるさ。」

「分かったのだ。明日から頑張るのだ!」

「・・・辛いこともたくさんあると思うけど、頑張ってね。」

「頑張るのだ!三人で修行すればどんなに辛いことだって乗り越えられるのだ!そしてクラッセを超えてみせるのだ!」

「うん。楽しみにしてるよ。自分もその時はもっと強くなっていると思うから。」

「絶対に負けないのだ!明日からはクラッセは自分のライバルなのだ!」

そう言って、パールはリナとミルクに今話していたことを伝えに行った。

・・・ライバルっていいよね。自分も相手も向上心持てるし。ゲームでもなんでも。


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