第四話 初戦闘
「・・・よいしょっと。これぐらいでいいかな。」
今、自分はミルクと一緒に夕食用の木の実を取っている。リナとパールは先に帰った。なんか自分のことを説明してくれるとかなんとか。大体はリナが説明するだろうし、大丈夫だろう。
「ありがとう。手伝ってくれて。これぐらいで十分よ。」
「じゃあ、帰りますか。」
「ええ。でもそんなに急がなくても大丈夫よ。まだ明るいし。」
自分は急ぎ足になっていた。ある心配が頭から離れないせいで。
「う、うん。そうだね。」
こうして、自分たちも村への帰路についた。
一方、村ではリナとパールが村の魔物達を集め、、クラッセの事について、語っていた。
「・・・という力を持っていました。とりあえず今わかっていることはこれぐらいです。」
リナが語り終えた直後に、一人の魔物が村に来た。種族的にこの村の者ではないことが分かった。
「だ、誰ですか?」
リナが話しかけると、その魔物は答えた。
「ああ、警戒しなくても大丈夫だ。俺はこの地域の魔王様に用があってな。ただ今日は運が悪くてな、今日はここにとどまらせてもらおうと思ってな。」
「運が悪くてって・・・どういうことですか?」
「・・・今日はな、セントラルタウンの騎士の試験日だったんだ。この村は範囲外だから来ることはない上に分かりにくい場所だ。安心しろ。」
「ちょ、ちょっと待ってください。範囲って?」
「えっとな、この村の入り口から直線的に約300メートルぐらいからは範囲に入っている。」
その話を聞いたリナとパールは焦りだした。それを見て外部から来た魔物は察した。
「おい、まさかだが・・・」
「ミルクとクラッセが大変なのだー!」
パールが今にも泣きそうな顔で叫ぶ。それとほぼ同時にリナは村の出口の方に足を向けた。
「た、助けに行かなきゃ・・・!」
そう言って村の外に出ていこうとするリナをおばちゃんが止める。
「出て行っちゃだめ!あんた死にたいのかい!?」
「で、でも・・・」
そのやり取りを見て、外部の魔物はこう言った。
「・・・とりあえず俺が探しに行く。だからおとなしくここで待っていろ。」
「は、はい・・・。」
リナはすごくしょんぼりとした顔をして下を見ている。それを見ておばちゃんが頑張って励ましている。
外部の魔物はパールに居場所を聞いた。
「・・・そこのドラゴン、村の外にいる奴らの居場所は分かるか?」
「近くの木の実の生っている大きな木のところにいるのだー・・・」
「・・・分かった。とりあえずその道順にそって探してみる」
「た、頼んだのだー・・・」
「・・・ああ。」
そう言って外部の魔物は村を出た。
・・一方、そんなことも知らずに自分とミルクは話をしながら歩いていた。
「・・・それでねー、リナがね、凄く派手に転んだの。」
「それは災難だったね。・・・?」
自分は先ほどから何かの気配を感じ、ちらちらと後ろを見る。その様子を見て、ミルクは、
「どうかしたの?後ろに何かいるの?」
「・・・うん。ちょっと静かにして。何かついてきてるね。」
「ついてきているって、なにが?」
「・・・もしかしたら人間かも。」
「なら、早く帰ろう。前からも来られたら逃げれなくなっちゃうよぅ・・・」
ミルクが弱弱しい声で自分に話しかけた直後だった。
「お、いたいた。やっと見つけた。おーい、こっちだ!」
一人の人間とばったり会ってしまった。そして今の呼びかけでもう一人やってきた。
「おお。やっと見つけたか。」
「ああ。こいつらを捕まえて試験官に渡せば自分も立派な騎士の一員になれるぜ。・・・ということでだ。お前らには選択肢を与えてやる。一つは降参しておとなしくついてくること、もう一つは抵抗して俺たちにボコボコにやられる。・・・どっちがいいんだ?お前らは。」
「ううぅ・・・こ、怖いよう・・・」
ミルクは怖がって自分の後ろに立っている。
「ククク・・・早く答えないとボコボコにするぞ?」
「ど、どうしよう・・・クラッセ。」
・・・どうするかって?そんなの決まっている。こいつらを倒して村に帰る以外に何があるというのか。
「ボコボコにされるのはあんたたちよ!」
「なんだと?子供の魔物のくせに生意気なこと言いやがって。」
「分からせてあげればいいじゃないか。この生意気な魔物に。俺たちにかなうわけがないって。」
「ああ、そうだな。」
そう言って二人は剣をかまえた。
「ミルク、ここは自分にまかせて。」
「う、うん。分かった。」
そう言ってミルクは少し後ろに下がった。
「俺たちのコンビネーションをみせてやるよ。」
そう言って人間の二人のうちの一人が自分に向かって剣を振りかざした。
自分がその攻撃をかわした瞬間、最初に攻撃した人間の後ろからもう一人の人間が出てきた。
「もらった!」
その人間はそう言いながら、自分に剣を振りかざした。
避けている途中だったので避けることができず。その攻撃を頭にくらってしまった。
バキャン!
その音と同時に空中に飛んだ。自分の血ではなく、自分に当たった剣の刃が。しかもかなり根元の方からポッキリと折れていた。自分は軽く殴られた程度の痛さにしか感じていなかった。
「「!?」」
二人はとても驚いた顔をしていた。
「今度はこっちの番ですよ。覚悟はできてるんでしょうね」
そう言って、自分は光の玉を二つ作った。
「や、やばいな・・・。」
「に、逃げるぞ!」
そういって二人は逃げようとした。その時、
ブンっ!
自分は光の玉2個同時に、二人に向けて投げた。少しコントロールミスはあったものの、自動追尾してくれたので、二人に命中した。
チュドーン!
「ぎゃあああああああ!」
チュドーン!!
「ぐあああああああああ!」
悲鳴と同時に、すさまじい土煙が立っていた。
それを見て、後ろで見ていたミルクはとても大喜びしていた。
「すごーい!悪者をやっつけたー!」
・・・確かにすごかったな。自分の頭の硬さが。種族が妖狐だから人間と違って体が丈夫な作りにでもなっているんだろうか。それとも、身体ステータスの防御が自分の思ってる以上にあるのか。
そんなことを考えていた時だった。後ろの草むらから大きな音をたてて何者かが現れた。ミルクは驚いて自分の後ろに隠れ、自分はファイティングポーズをとっていた。
「何者!?」
「おい、お前ら、もしかしてミルクとクラッセか?」
そう言ってきたのは魔物だった。
「・・・そうですけど、どうかしたんですか?」
のんきにしている自分を見て、その魔物は激怒した。
「どうもこうも言ってる場合じゃねえ!早く村に戻るぞ!今さっきの攻撃のせいでお前らがここにいることが人間どもにばれてんだぞ!」
そういって自分たちを草むらの方に来るように指図した。
自分たちはそのいうことに応じてついて行った。確かにその魔物の言った通りで、人間の気配が近づいて来ている。二十人ぐらい。
「・・・あまり音を立てるなよ。」
「はい。・・・ところであなたは何者なんですか?」
「後で話す。今はおとなしくついて来い。」
魔物はそう言って静かに歩く。自分たちもその魔物についていく。なるべく音を出さないように。
そして、無事に村まで戻ってくることができた。人の気配もしないので、人間に見つからずに来ることが出来たんだろう。