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転生妖狐さんのゲームのない生き方  作者: 油揚げ山盛り
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第十七話 鬼退治

「ふぁ~あ。・・・もう朝か。」

自分は体を起こし、川で顔を洗った。

・・・昨日と一昨日は色々と教わったな。まるで、ゲームのチュートリアルみたいな感じだったな。今日からは自分一人で頑張っていかないと。

自分は顔に付いた水滴を回復魔法で飛ばし、バッグを持ち上げた。

すると、バッグから紙切れが1枚落ちた。すかさず、それを持って見た。

「えーと・・・。このバッグは、物ならば、無限に入れることができます。そして、今そのバッグには、調理器具、寝袋、テント用具、毛布が入っているので、有効活用してください。・・・イザベル。」

あれ、成仏したんじゃなかったっけ。ま、いいか。気にしたら負けだ。

とりあえず、何でも入るんだから、2本の剣はバッグに入れておこう。あと、あの塔で拾った鍵も入れておくか。

自分は今使わないものを全部、バッグにしまった。

・・・このバッグ、某アニメのポケットみたいな構造してるね。

「さてと、港町まで行くか。」

自分は人間に化けて、バッグを肩にかけ、港町に向かった。

・・・・・・30分ぐらい、整備された道を歩いていると、1人の女性が困った様子をしていた。

しばらく遠くから様子を見ていると、その女性は、頻りに草むらを覗いている。

自分はその草むらに何があるのかが見たかったので、草むらにこっそりと入った。

草むらを歩いていると、魔物の気配がした。

自分は音を立てないようにこっそりと草むらを進み、そして近くまでやって来た。

どうやら、あの魔物は気配感知のスキルは無いな。自分のいる場所から10mも離れていないし。

それに、あの馬車はあそこで困っていた彼女の物だろう。荷台には商品がいっぱいあるし。

自分はとりあえず、黙って様子を見ることにした。隙を見て、馬車を取り返してあげようかな。

魔物は、荷台にある食べ物を食べている。どうやら、食べ物目的で馬車ごと盗んだらしいな。

「もぐもぐ・・・はぁー、もうお腹いっぱい。少し寝よう。」

そう言って、その魔物は馬車の荷台に寝っ転がった。そして、寝た。

・・・これ、まずいね。中の魔物に気付かずに馬車を取り返したら、後が大変だ。

自分は静かに草むらから出て、その魔物の種族と強さを確認した。

「スキル・パワーリーディング。」

種族 鬼

身体能力  パワー型

主属性 火

スキル

火魔法 Lv5

物理攻撃力上昇 Lv3

光属性耐性 Lv3

闇属性耐性 Lv3

呪い耐性 Lv4


・・・どうやら、あまり強くはないな。じゃあ、サクッと鬼退治といきますか。

自分はバッグからイザベルの剣を取り出し、その鬼を起こした。

「・・・ん~。何よ、あなた・・・。」

「鬼退治をしに来ました。」

その言葉を聞いて、その鬼は荷台から降りた。

「あのね、鬼退治なんて、絵本の中だけよ。実際、鬼に子供が勝てるわけないでしょ。ほら、さっさと帰った。」

そう言って、自分を草むらから出そうとする。自分はその鬼に抵抗して、挑発した。

「もしかして、弱いから戦いたくないの?」

「なっ・・・!?そんなわけないでしょ!」

「でもさ、追い返すなら普通に力を見せつければいいじゃん。そんなこともしないしね。」

「み、見せればいいんでしょ。全く、生意気な子供ね・・・。」

鬼は、近くにあった石を上に投げた。そしてその石を思いっきり殴った。殴られた石は粉砕した。

「これで分かったでしょ。この石と同じようになりたくなかったら、家に帰りなさい。」

「・・・ふーん。こんな感じか。勝てそうだね。」

自分が言ったその挑発に、鬼はまんまとかかってくれた。

「・・・子供一人に負けるわけが無いじゃないの。」

「やってみなきゃ分からないよ。鬼さん?」

「ふーん・・・。なら、お望み通りにしてあげるわ。」

鬼は火の玉を出し、それをこん棒にした。そして、自分に思い切りそれを振り落とした。

自分はそれを躱し、イザベルの剣に水魔法の力を付加して、鬼に向けて振り回した。

鬼はその攻撃を躱して、自分と距離をとった。

「子供のくせにやるじゃない。でも、これで終わりよ。」

鬼は、腕に火の力を付加して、自分に殴りかかってきた。

自分はその攻撃を余裕に躱して回り込み、相手の背中に思いっきり殴った。

「ぎゃっ!?」

鬼はその場に倒れた。鬼は背中の痛みで立ち上がることはできなかった。

鈍い音はしなかったから、骨は折れていないだろうな。・・・たぶんね。

「な、何者・・・。こんなに強いパンチが出せる人間の子供なんて見たことない・・・」

「だって人間じゃないし」

「え」

自分はいつもの姿に戻った。その鬼に、自分の種族が分かるように。

その姿を見た鬼は、驚いた様子もなく、ただまじまじと自分を見ていた。

「自分も魔物だから。」

「・・・・・・子供・・・。」

「体格と力の強さは比例しないですよ。」

「そ、そう・・・。うう、腰が痛い・・・。」

自分は腰を押さえている鬼を見て、あることを思いついた。

「ねえ、治してほしい?」

「え。な、治せるの?」

「うん。ただし、あの馬車を返してくれるなら。」

「わ、分かったわ。だから早く治してください・・・。これじゃあ、確実に明日まで、まともに動けないし・・・。」

鬼が、馬車を返してくれると約束したので、自分は回復魔法で鬼の背中を癒した。

鬼の背中の痛さは、一瞬で消え去った。

「・・・ありがとう。あと、襲ってごめんね。最近、イラついていることが多くてつい・・・。」

「いえ、大丈夫です。でも、何か普通の魔物と違う感じが出てますね、あなたは。」

・・・なんていうか、対応の仕方が人間っぽいよね。それに、戦う前に言っていたあの言葉も、何か気になるね。・・・少し話をしてみよう。

「あの、好きなゲームは何ですか?」

「ん?好きなゲーム?脳トレのゲームだよ。」

・・・これではっきりした。この鬼さん、転生したのだろう。ゲームなんてこの世界には無い。・・・と言っても、万が一違ったら失礼だし、一応聞いておくか。

「あの、もしかして、あなたは転生してきたんでしょうか?」

鬼の表情が、一瞬にして変わった。どうやら、ドンピシャだな。

「な、何でわかったの?」

「だって、この世界にはゲームなんて物はないから、ゲームの話で会話を続けられるのはここの世界に転生した奴ぐらいしかいないと思ったから。自分はほかの魔物とも、話をしたからね。」

「な、なるほど・・・。ということは、あなたも?」

「ええ。偶然にも。」

・・・どうやら、話を聞くと、この鬼さんは1か月前ぐらいに転生してきたらしい。ここで待ち伏せして、食べ物を盗っていた、という生活をしていたそうだ。

そして、この鬼さんはお酒好きだそうだ。

転生してからは、一滴も飲めていないそうだ。やっぱり、飲めないせいでイライラしてたのかな。あの挑発で切れてたし・・・。なんか親近感が生まれるな。自分がゲームできないとイライラしてくるのと同じ感じなんだろうね。

・・・って、親近感を感じている場合ではない。こんなことをしていたら、今日中に港町に着かない。野宿はあんまり好きではないし。早く馬車をあの女性に返して、港町まで急ごう。

自分は、急いでいることを鬼さんに伝え、馬車に近づいた。

「鬼さん、馬車は返してもらいますね。」

「ええ。約束したしね。あ、馬は睡眠薬で寝ているだけだから。」

「あ、そうですか。・・・・・・じゃあ、またどこかで。お酒、飲めるといいですね。」

自分は馬車の馬を起こして、人間に化けた。

「・・・あなたも、気を付けてね。」

鬼さんのその一言に軽く頷き、馬車を導きながら草むらから出た。

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