第十五話 二度あることは三度あった
自分はたまもと別れた所の近くにある川の近くで野宿することにした。なんせ、魔剣・ガルムが大きいから運んでいくのが大変だし。
それに、魔物や盗賊団に出会っても倒せる自信はある。たまもの助言で戦法の幅が広がったし。
「はー。何かすごい濃い2日間だったな。色々ありすぎだよ、もう。」
自分がため息を吐いた直後だった。イザベルの剣が、強い光を放った。
「ひゃあ!?」
自分はまぶしい光に耐え切れず、目をつぶった。光が収まってから目を開けると、剣から一人の男性が現れていた。
・・・多分、あれがイザベルなんだろう。イザベルの剣から出てきたんだし。とすると、また色々と説明を聞く羽目になるな。もう聞きたくないよ。頭がパンクするよ、絶対。
「・・・そこの九尾狐さん。聞こえる?」
「話なら明日にして。もう寝るから。」
自分はバッグに頭をのせて寝ようとした。
「ちょ、ちょっと待って!明日の朝じゃ自分、成仏しちゃうから!」
成仏?・・・ってことは、もう死んでいるのか。遺言でも残すのかな?
仕方なく、自分は話を聞いてあげることにした。体を起こして。
「なるべく手短に分かりやすくお願いしますね。疲れているんで。」
「ええ。こっちも早く説明しないと、いつ成仏してしまうか分からないし・・・。」
「じゃあ、急ぎましょう。イザベルさん。」
「・・・自己紹介は割愛して大丈夫そうだね。その様子だと。」
「大体はたまもさんから聞いたので。・・・それで、遺言は?」
「いや。遺言ではなくて、君に力を授けるんだ。自分のスキルとアビリティを。」
「いや、それはラスクさんにあげてくださいよ。一緒に戦った仲でしょう。」
「・・・君じゃなきゃダメなんだよ。クラッセさん。」
イザベルさんは何を考えているのか・・・。訳が分からない。せめて、知り合いだったとかなら分かるが、初対面の魔物にいきなり力を与えるのは、どういうことなんでしょうかねぇ・・・。
「何でですか?」
「これを見て。」
そう言って、イザベルは右手の手の甲を自分に見せた。そこには、自分の下腹部にある紋章と同じものがあった。
「君にも同じ紋章があるでしょう?」
「な、何で知っているんですか?まさか見た・・・」
「この剣はこの紋章がある生き物しか持つことができなくなる封印魔法をかけてあるからね。」
「そ、そうだったんですか。」
・・・イザベルさん。マジごめんなさい。伝説の勇者がそんな事するわけないよね。
「納得してくれたなら、剣を持って。力を送るから。」
「はい。」
自分はイザベルの剣を持った。イザベルはもう、準備できている。
「・・・よし、いくよ。えいっ」
「ひゃん!?」
・・・自分の体に電流が走ったかのような感じがした。これで力を手に入れたという実感はないけど。
「よし、うまくいったね。とりあえず説明するね。新しいスキルとアビリティを。」
イザベルは、スキルやアビリティの使い方を教えてくれた。それも実践的に。
とりあえず、取得したスキルとアビリティはこんな感じだ。
NEWスキル
呪術魔法 Lv10
封印魔法 Lv10
パワーリーディング LV10
アビリティ➡スキル
引っぺがし Lv10
ダメージカット Lv5(50%減)
ダメージ貫通 Lv5
NEWアビリティ
光のカーテン・・・・・・少しの間、自分と仲間のダメージを0にする。状態異常も回復する。
・・・とまあ、こんな感じ。もう、チート使ったみたいな能力になってるよ。
ちなみにイザベルの能力、今、強化された自分よりも何十倍も強いらしい。
~3時間後~
「・・・うん。これぐらいでいいかな。」
「や、やっとおわった~。死ぬ~。」
自分はもうへとへとで、もう立っていれるかどうかぐらいまで疲れていた。
そして、辺りも真っ暗になっていた。イザベルが光の玉をその辺に置いてくれたのでここは明るかったけど。
「ご苦労様。・・・まだ話することあるけどいい?」
「はい。もう動かなくていいなら。」
「うん。もう動く必要はないから。でもちゃんと聞いてね。大事な話だから。」
「は~い」
自分は話を聞く体制をとった。さすがに寝っ転がりながら聞くのは失礼だしね。
「それじゃあ、話すね。・・・この紋章の事なんだけどね、実はこれ、守り人の紋章っていうものなんだ。そして、これは色々とすごい力があって・・・・・・」
また長い話か・・・。もう勘弁してくれ。さっきの指導で疲れているから、眠くなってくるよ。
~1時間後~
「・・・・・・ということだよ。分かった?」
「はい。」
・・・短くまとめると、
この紋章には、守りの加護があり、弱点属性以外のダメージを大幅に減らしてくれる。そして、特殊な条件を満たした場合のみ、覚醒できるという。ただし、無理をしすぎると覚醒状態で暴走してしまうらしい。そして、紋章に傷がつくと、治るまで効果は発揮されない。というもの。
・・・確かに重要だね。ずっと分からずにいたら大変なことになってそうだよ。
そんなことを考えていると、イザベルが質問をしてきた。
「最後にひとつ、聞いていいかな。」
「・・・こっちも聞きたいことがあるんです。2つ。その質問に答えてくれるなら。」
「いいよ。・・・まずはこっちから質問するね。君は、魔物の味方?それとも人間の味方?」
「・・・弱い者の味方です。」
自分はどっちの味方かというと・・・何とも言えない。けど、自分はあの最低な親を見てきたから分かる。『自分勝手ができるのは力や権力のあるものだけ』ということが。だから、そんな状況から弱者を救ってあげたい。そう思って、自分はそう言った。
「・・・そうか。君は・・・優しいんだね。・・・騙されたりしないようにね。」
「はい。・・・こっちからも質問していいですかね。」
「うん。いいよ。」