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転生妖狐さんのゲームのない生き方  作者: 油揚げ山盛り
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第十四話 たまもは上司の鑑

自分たちは、セントラルタウンから5キロぐらい離れた所まで歩いてきた。

町を出てからずっと歩きながら、たまもは妖狐に説教していた。まあ、塔でのあれを見てしまうと、自分もそれぐらい叱るだろうな。

そう考えていると、叱るのを終えたのか、今度は自分に話しかけてきた。

「お主、そろそろ戻ってもよいぞ。人の気配もせんし。」

そう言われたので、自分はいつもの姿に戻った。そして妖狐から服を返してもらって、素早く着た。

そして、着替え終わるのを確認して、たまもは自分に説教をした。

「・・・まったく、散々迷惑かけおって。このドアホ。」

「何か迷惑かけましたっけ、自分。」

「とりあえず、儂がした行動を話せば分かる。お主がどんなに迷惑をかけたか。」

「何をしていたんですか?」

「まず、儂は昨日の夜中から、ここらへんでお主を待っていた。お主がこっちに来るとあの区域の魔王から連絡がきて、駆け付けたわけじゃ。自分が把握してない妖狐かもしれないからのう。」

「なるほど、ご苦労様です。」

「『ご苦労様です』じゃないわ、このドアホ。朝までに来なかったから捕まったかと思ったのじゃぞ。しかも、ラスクと一緒にいたことも問題だったのじゃぞ。」

「・・・そういえば、ラスクさんって何者だったんですか?偉い人っていうのは何となく分かったんですが。」

「ラスクはな、イザベルと一緒に、大魔王様を倒しに行った仲間の一人じゃ。イザベルの剣をここに持ってきたのも彼女じゃ。」

「ちなみに、倒しに行った結果はどうだったんですか?」

「・・・イザベルがどこかに消えてしまったのじゃ。武器だけ残して。大魔王様と戦っている途中にな。」

「なんかすごい怖いですね。原因は何ですか?」

「知らん。こっちが知りたいくらいじゃ。」

・・・勇者が突然消えたって、ゲームにも無い死に方だな。おぉ、怖い怖い。

「それで、その武器を持って帰って来たというのがラスクさんだった、というわけですね。」

「まあ、そうじゃ。・・・もう二度とかかわるんじゃないぞ。」

「はい。・・・というか死んだ人扱いされているからもう会うなんてできませんよ。」

「それならいいんじゃが・・・。まあよい。次の話をするぞ。」

こうして、たまもの説教はこの後2時間ぐらい続いた。

「・・・・・・ということじゃ。分かったか?」

「はい。」

やっぱり長いな。偉い人の話が長いのって自分の体験談や他人の体験談、他人の格言とかいっぱい入れてくるからなあ。もちろんたまももそんな感じの話だった。

・・・ちなみに、たまもが今日の朝から自分に会うまで何をしていたかを簡単にいうと、まず、街にこっそり入って、自分の居場所を探し出したが見つからず、もう処刑の準備が出来てると思ってその処刑場に行って占領したがいなかった。そこに自分が来たということだ。そう、あの塔に。

これだけなら話するのに10分程度で終わると思うんだが、自分と同じことしてばれて処刑された魔物の話だとか、色々と話していたから、2時間もかかった。

・・・今は、話を終えて休憩中である。

「美味しいですね。このお茶。」

「そうじゃろ。いい葉っぱ使っておるからのう。」

やっぱりもともといた世界でなじみのあるものが出てくると、少し安心する。たまもの隣にいる妖狐は『苦い』と言いながら飲んでいる。味覚も子供だな。今の自分が言えることではないけど。

そういえば、自己紹介してないけど、いいんだろうか。

「そういえば、お主の名前はなんというのかのう。説教の事ですっかり聞くのを忘れておったわ。」

「ノワール・クラッセです。」

・・・心配する必要はなかったか。

「なるほど、いい名前じゃの。・・・ん?」

たまもは何かがこっちに来る気配を感じ取った。自分が気配を感じ取れないということは、結構遠くにいるのだろう。

「こっちに来ているのう、3人。多分、魔物じゃな。それも、儂らを襲う気じゃ。」

・・・自分も妖狐も、何かが近づいているのがよく分かった。ガサガサと草木をかき分けてくる音が聞こえたから。どうやら姿を隠す気は無いらしいな。だとすると、力でねじ伏せる気かな、そいつら。確実に相手が悪いだろうな。相手は四天王のうちの一人だし。

そんなことを考えていると、魔物達が草むらから出てきた。たまもが言った通り、3人。

「おい、おまえらが持っているものを全部よこせ。渡さないなら、少し痛い目にあわせてやるぞ?」

「・・・痛い目にあうのはあんた達じゃないかな?見た目と力の強さは比例しないわよ。」

「その通りじゃな。お主らのような弱い魔物に負けるわけ無いじゃろ。」

「どうやら力でねじ伏せないと分からねえらしいな。・・・おい、おまえら!」

「ああ、ボコボコにしてやるよ。」

「ふふっ、また子供の泣き顔が見れるわね。かわいい泣き顔が・・・。」

そう言って、3人は戦闘態勢にはいった。

たまもは自分にこっそり話しかける。

「・・・大丈夫じゃ、大して強くない。」

「妖狐でも勝てますかね?」

「あやつは気持ち的に戦えん。儂ら2人で何とかするしかないのう。」

「・・・自分が2人を相手しますか?」

「いや、クラッセはあの女を相手してくれるか?男と連携を組まれると結構厄介じゃから。」

「分かりました。あと、属性魔法は球状にして投げる以外の使い方ってありますかね。」

「もちろんじゃ。武器の形に変えたり、光線のように出したりとか、広範囲に出したりとか、武器につけて属性攻撃とか、いろいろできるぞ。ただ、武器に変えるのは自分の主属性の魔法でしかできないから、そこは気を付けるのじゃぞ。」

「なるほど、わかりました。」

ちなみに、相手は3人とも竜人族。自分が相手をするのは水属性。まあ、いけるかな。

「へっ、何話し合ってんだ?罠にでもはめようと考えているのか?」

「別に?戦うのに作戦を立てるのは基本でしょ?」

作戦立てないと、強いドラゴンとかだったら伐採失敗しちゃうもんね。伐採系のゲームだと。

「ハッ!餓鬼のくせにいっちょ前に言うじゃねえか。おめえら、いくぞ!」

「「オー!」」

「妖狐は荷物を守るのじゃ!」

「は、はい!」

とりあえず、自分はあの女の気をこっちにむけて、1対1にしなくては。牽制をいれるか。

自分は火の魔法弾を作り、女にギリギリ当たらないぐらいの方向に投げた。

「それ!」

「!?」

勢いよく放った火の魔法弾は、彼女の角にかすったようだ。

「くっ・・・やったわね。」

そう言って、だんだんと距離を詰めてくる女に自分は、たまもから距離を置くように逃げた。

「ねえ、そっちは任せていいかしら。あの子を捕まえてくるわ。」

「ああ、じゃあ任せた。」

女はこっちに向かってきた。どうやらうまくいったな。

「ふふふ・・・。逃がさないわよ。」

そう言って、水の魔法弾を作り自分にめがけて投げてきた。スピードは遅かったので、楽々と躱せた。

「あれれ?こんなもん?」

「あら、躱したのね・・・。でもこれはどうかしら?」

彼女はまた水の魔法弾を投げてきた。今度はスピードをすごく早くして。自分は躱しきれないと思い腕で防御した。

「くっ・・・。・・・・・・あれ。」

自分の腕に魔法弾が当たった感触はあったが、痛いという感覚は全くなかった。

「なっ・・・!効かない!?」

「・・・2発撃ったから、同じ数だけ撃ってあげるよ。」

「ふ、ふふふ・・・。いいわ。受けてあげる。体で。」

・・・人間であれだけ吹っ飛ぶ魔法弾を受ける気なのか。知らないってことがどれだけ怖いかが分かるね。

そう考えながら、自分は光の魔法弾を作って、全力で投げた。その投げた魔法弾は1秒もかからずに30メートル先の女に直撃した。そして、かなり遠くにある木まで吹っ飛んで頭を強打して、気絶した。

「やっぱりこうなったか。たまもさんから教えてもらったことが何の意味もなしてないな。・・・まあいいか。とりあえず、こっちは終了かな。たまもさんは大丈夫かな。」

自分は気絶した女を引きずりながら、たまものいる所に戻った。


たまものいる所に戻ると、この女の仲間が縛られていた。逃げれないように。

「お、戻って来たか。」

「そっちはもう終わってたんですね。」

「合成魔法で一撃じゃ。こやつら、もう何も言えないようじゃの。」

よく見たら、ちゃんと意識あったね。静かだし、ボロボロだから気絶しているかと思ったよ。

「なんか茶番みたいなことしてたら遅くなりました。」

「別に大丈夫じゃ。やられて帰ってこなければな。」

そう言いながら、たまもは気絶している女をそこの二人と同じように縛る。

「ちなみに、こいつら何者なんですかね。」

「知らん。」

「ですよねー」

・・・分からないなら本人たちに聞けばいいよね。

「あのー。」

自分はとりあえずさっきリーダー的な存在をしていた竜人に話しかけた。

「あなたたちは何者ですか?」

「・・・・・・。」

「何で私たちを襲ったんですか?」

「・・・・・・。」

無視しますか。それじゃあ、少し脅してみるか。

「・・・優しく話しかけているうちに話した方がいいですよ。取り返しのつかない事態になる前にね。」

自分は1トーン低い声で話した。それが効果覿面だったみたいで、その竜人は話してくれた。

「べ、別に何者ってもんじゃないです・・・。ただお金が欲しくて、三人で協力していただけです。」

「うん、・・・それで今回は何回目?」

「に、二回目です。」

あー、そういうことか。一度目が成功したから二度目もいけるという算段をしてたんだろうな。

「一回目は誰を襲ったの?」

「に、人間の子供です。怖がって荷物置いて逃げてったんです。」

人間の子供か。逃げて当然だろうな。見た目は結構怖いし。

「人間と魔物は同じ扱いしちゃダメでしょ。」

「えっと・・・。子供だからいけると思ったんです。」

「失礼じゃのう。儂を子供扱いするとは。」

たまもが話に割り込んできた。

「まあ、説教は後じゃ。これからお主たちを連れて行かなければならんからのう。ここの地域の魔王様の所に。」

もしかして、魔王城って地域ごとにあるのかな。監視役的な仕事かな?魔王は。

「狐ども。こやつらを運ぶ準備をするのじゃ。」

たまもがそう言うと、狐たちは縛られて動けない3人の竜人を体の上に乗せた。

「・・・クラッセよ。そろそろお別れのようじゃの。」

「?」

「儂も結構忙しいんじゃ。お主にかまってばっかりいる訳にもいかないのじゃ。」

「・・・はい。今までありがとうございました。」

「まあ、くれぐれも大事は起こすなよ。・・・お主ら、行くぞ。」

たまもは妖狐と狐の大群を連れて、去って行った。

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