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転生妖狐さんのゲームのない生き方  作者: 油揚げ山盛り
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第十三話 無言の別れ

自分は今、たまも達と一緒に広場にいる。狐たちが色々と調べているけど、中々見つからないようだ。

当然だが、外に人は一人もいない。そこら辺の建物に逃げたらしい。窓はカーテンで覆っていて、中を見ることはできない。

自分は、とりあえず広場にいればいいと言われたので、とりあえず、あの剣を貰いに・・・ではなく取りに行くことにした。もしかしたら、たまもはあの剣がどんなものか分かるかもしれないし。

「・・・さてと、確かここに・・・」

自分は探検家の掘り出し物が入っている箱を漁った。しかし、あの剣は見つからなかった。

「あれ、どこいったんだろう。・・・ん、これは?」

自分は掘り出し物の箱の隣に縦長の箱があることに気付いた。1mぐらいある箱が。自分はすかさずその箱を確認した。

「・・・あった。これだね、間違いないな。」

箱の中身はやはり、あの剣だった。呪われそうな雰囲気を醸し出しているような感じがしっかりとある。

自分は箱を閉めて、外に持っていった。たまもは大きな箱を持っている自分をみて、当然ながら、自分に箱の中身について聞いてきた。

「なんじゃ?それは。」

「剣です。」

「ちょっと見せてもらってもいいか?」

そう言ってたまもは自分の持っている箱を開いてその剣を手に取った。

「こ、この剣は・・・!なぜこんなものがここに・・・」

たまもは驚いた表情を見せた。自分は何が何だか分かっていない。

「それ、どういった剣なんですか?」

「・・・これは、魔剣・ガルムという剣じゃ。強力な封印能力をもつ剣じゃ。なぜそんな物をお主が持っているのじゃ・・・」

「探検家さんが見つけた物で、もらったんですよ。」

「いや、そういうことではない。箱に入れてあるとはいえ、なぜ持っていて化けの皮がはがれんのかのう。儂でもその封印には10分も耐えられん。・・・返すぞ。」

たまもは持っていた剣を箱に入れ戻して、箱を閉めた。

・・・なるほど。自分が感じたあの雰囲気は封印の力だったのかな。とても強力な。

「なるほど。強力な封印の力があるんですね。・・・あと、ばれてました?」

「当たり前じゃ、ドアホ。後で説教することがたくさんあるからな。覚悟しておくがよい。」

「・・・はい。」

今日寝れるかな。一晩中説教は勘弁してほしいな。

「まあ、とりあえずその剣は、お主が持っておれ。人間には絶対に渡すなよ。この封印は人間には効かないからな。」

「はい。」

・・・ゲーム序盤で最強の武器手に入れた感じだ。もしこれが本当にゲームだったら、クソゲー確定だな。

現実だと、凄く心強いけど。

それにしても、待ち時間長いな。これだけの数で探してもまだ見つからないとは。

「・・・たまもさん。まだ見つからないんですか?」

「そうじゃな・・・。ちょっと時間がかかりすぎじゃのう。」

そう二人で話していた時だった。

 ・・・じょぼじょぼ・・・ポタ・・・ポタ・・・

いきなり、噴水の水が止まった。そして、時間がたつことに噴水の水の水位が下がっていき、やがて、空になった。空になった噴水の中央にある像の下側に、何かを入れるような場所があった。

たまもはその場所を調べた。その様子を見ていた狐たちが集まってきている。

「・・・見つけたぞ。剣にバッグに、その他諸々・・・。」

たまもは剣とバッグ以外の物を狐たちに持たせた。・・・剣とバッグはなぜかたまもは持つことができないらしい。あれだけの力があるというのに。

「・・・どうしたんですか?」

「持てん。何か不思議な力で持てなくしてあるのじゃ。」

「じゃあ、自分が。」

そう言って自分は噴水の中に入り、剣とバッグを持った。それも軽々と。

「あれ、軽いじゃないですか、これ。」

「じゃあお主が持っていろ。」

たまもはそう言いながら噴水から出た。自分も剣とバッグを持ちながら、外に出る。すると、何事もなかったように、噴水から水が出てきていた。

・・・とりあえず、イザベルの剣は手に入った。あとは、人間たちとの交渉のほうだが・・・。

「とりあえず、自分はラスクさんの所にいったん戻って、翌日別れることにします?」

「馬鹿者。ばれたらどうするつもりなんじゃ。・・・それにお主がいないとその剣とバッグが運べないじゃろ。」

「でも、どうしたら・・・」

「お主が儂らに抵抗したからとでも言っておけばよいだろう。お主がいなくても納得できるじゃろう。」

「自分はどうしたらいいんですか。この町からどうやって抜け出すんですか?」

「狐の姿になって、そこにいる狐たちと一緒に町の外に出ればよい。これなら、剣を口にくわえて、バッグを体にかけていけるじゃろ?バッグはショルダーバッグじゃし。そして、お主が今持っている剣はほかの狐に持たせておく。力を持たないものならばたとえ人外でも封印は効かないからのう。」

「・・・分かりました。でも自分の服はどうします?」

「そこの妖狐に持たせる。布の中にでも隠して。」

「妖狐さん、お願いしますね。」

「う、うん。自分の服に隠しておくから。」

自分は元の姿に戻り、服を脱いで妖狐に渡して、狐の姿に化けた。そして、剣をくわえ、バッグを体にかけて、狐の大群に身を隠した。

そして、塔に戻って行った。

  ~塔の前~

・・・たまも達が塔の前まで戻ってくると、そこにはラスクと団長が先頭に立って、後ろに百人近くの兵士が並んでいた。

「とりあえず、物は確かに受け取ったぞ。ラスクよ。」

「あの子はどこにいるの?見た所いないけど。」

「・・・お主自身で察することじゃ。いない理由はな。」

「ちょ、ちょっとまちなさい!まさか、あなた・・・!」

「・・・さあな。お主の想像にまかせる。」

「・・・・・・なんで・・・・・・どうして・・・」

「もういいか?儂も暇ではないんじゃ。とっととこの町から立ち去らせてもらうぞ。」

「・・・うぅっ・・・」

ラスクはその場に泣き崩れてしまった。大切なものを失ったという大きなショックと、魔物から人の命を守り切れなかったというさらに大きなショックが彼女を襲ったのだ。

自分もそんな彼女の姿を見て、慰めてあげたくなるが、ばれないためには、我慢するしかない。

「おぬしら、行くぞ。」

・・・たまもはラスクを完全に無視して、出口に向かう。自分もたまもについていく狐たちに混ざって、出口に向かった。

そして、自分はラスクにさよならの挨拶もお礼の言葉をいうこともなく、この町を出て行った。

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