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転生妖狐さんのゲームのない生き方  作者: 油揚げ山盛り
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第十話 人間も魔物と大して変わらない

とりあえず、今はセントラルタウンの近くまで来ている。村から出て、草むらを駆け抜けて広い道に出て、地図で方向を確認し、全力で走って来た。・・・全力で走ったら電車並みのスピードぐらい速くて少し怖かった。何もない道だからいいけど、森とかだったら確実にぶつかっている。

そうしてここまで来たのはいいんだが、問題があった。・・・護衛がいる。

・・・別に人間に化ければいいと思ったら大間違い。いくら化けるのがうまくても裸では怪しまれて駄目だ。

「・・・どうしよう。早く通りすぎなきゃ朝になっちゃうな。かといって強行突破するわけにもいかないし。・・・どこかにこの町に入れる抜け穴的な物は無いのかな。」

そんなことを言いながら自分は塀の周りを歩く。・・・この町、海に面しているところ以外はすべて塀で覆われていて入れない。海の方にも警備がいきわたっているらしい。・・・あのお兄さんの情報によると。

そんな感じの事を考えながら歩いていると、塀に小さな穴が開いているのを発見した。大きさ的に50センチメートル四方程度だ。

「これ、入れるかな・・・?」

とりあえず頭は入るが、肩辺りからもう、入らなかった。

「イ、イタタ。無理か。うーん・・・」

自分は何とかこの穴から入れるように考えた。そして、一つ方法を、思いついた。

「・・・本物の狐になれば入れるかも。」

そう言ってとりあえず、人間に化けた姿から、いつもの姿に戻った。そして、狐の姿に化けた。今の体の大きさは、穴と同じくらいだった。

「よし!これならいけそう!」

自分はその穴を狐の姿で通り抜けた。・・・尻尾がちょっとつっかがったけど。

「ふう。後は、人に化けて通り過ぎるのみかな。」

そう言って、自分は元の姿に戻り、人間に化けた。

「・・・ここは裏道だね。ちょっと表の様子でも見に行こうかな。時間にまだ余裕があるし。」

自分は裏道からこっそり顔を出して様子を見た。・・・誰もいない。

「ちょっとこの大通り通ってみようかな。・・・おっと誰か来た。」

自分は遠くからこっちに何かがくる気配がしたのでとりあえず置いてあった物の裏に隠れてやり過ごすことにした。

「・・・はぁ~ぁ。見回りめんどくさいな。まあ、明日は勇者イザベルの命日だし、警護を強化するのも当たり前か。何かあったら大変だし。・・・・・・」

そう言いながら、見回りをしている剣士が通り過ぎた。

・・・勇者イザベルか。こんなにたたえられているってことは、相当すごいんだろうな。・・・気になるから少し見ていくか。その勇者の顔写真だけでも。・・・じゃあ、裏道で野宿して明日を待とうかな。ここに大きい毛布あるし。くるまって寝てよう。

自分は大きな毛布に全身をくるんで、外から見えないようにした。そしてぐっすりと深い睡眠についた。お兄さんの言っていたことを完全に無視して。


 ~夜が明けた頃~

「・・・団長、おはようございます。」

「ああ、おはよう。君はいつも早いね。副団長のラスクさん。」

「ええ。いつもの見回りの時間ですし。今日は無いですが。」

「・・・今日は何の日か分かっているよね?」

「ええ。勇者イザベルの命日です。そしてそのイザベルの剣の盗難防止のための警護に任命されています。団長と一緒に。」

「ああ。その通りだ。ただ、準備が終わるまでは自由行動をしていていい。」

「ええ。分かりました。・・・そういえばあの大きな毛布はどうしたんですか?」

「ああ、あれ?もうボロボロだし、焼却炉に捨てようと思って外に置いてあるよ。」

「じゃあ、それ捨ててきますね。置きっぱなしにするのもなんですし。」

「ああ、ありがとう。裏道に置いてあるから。」

「はい。」

そう言って、ラスクはギルドの部屋から出て、裏道に行った。

「あ、これね。・・・? 中に何かあるわね。」

ラスクは毛布を持ち上げようとした時、明らかに毛布の重さではない重さがあった。

「もしかして団長、燃えるゴミも一緒に燃やそうとしていたのかしら。めんどくさがりやなところ、あるんですね、全く。」

そう言って、その毛布を持って、焼却炉に入れようとした時だった。いきなり毛布がもぞもぞと動いた。

「ひゃあ!?」

いきなり毛布が動いたので、ラスクは驚いて毛布をその場に落とした。自分は目をこすりながら、その落とした毛布から顔を出した。

「ん~・・・。何ですか・・・。」

「えっ!?なんでこんなところに子供が・・・。あなた、名前は?」

「まだ寝かせてください・・・・・・ぐぅ。」

そう言って自分はまた寝た。ラスクは自分を毛布にくるんだまま抱えて、走ってギルドの部屋に戻った。

「だ、団長!毛布の中に、子供の女の子が!」

「え!?わ、私じゃないぞ!?」

ラスクの抱えてるものを見て団長は驚く。ラスクはとりあえず毛布にくるんだ自分を長椅子に寝かせた。

そして、話を続ける。

「この子、捨て子なんでしょうかね?服着てないですし。」

「いや。もしかしたら魔物かもしれないぞ?」

「それはないでしょう。魔物が入り込んだなんて報告、一度もなかったですよ?」

「どこかの抜け穴から入ったとかは?」

「ちゃんと2週間前に建設業の人達ですべての場所の壁を確認して、壊れた所はすべて修復済みです!壊れたままのところがあったら大問題ですよ!!」

「そ、そうか。すまない。ただ、捨て子という可能性も無いと思うぞ?・・・もしそうなら入り口で保護して、保護施設にでも連れて行っているはずだし・・・。」

「・・・そうですよね。海から来たとも思えないですし。」

そんなことを話している間に自分は起きて、辺りを見回していた。それに団長が気付いた。

「ん?あの子、起きたぞ?」

「あ、起きましたね。ちょっと話してきます。」

そう言ってラスクは自分に近づいて、話しかけた。

「ねえ、あなたの名前は?」

「・・・・・・」

「どこから来たの?」

「・・・・・・」

「お母さんやお父さんはいるの?」

「・・・・・・」

ラスクの質問攻めに自分はずっと黙っていた。何か言うとボロが出そうで怖い。

すると、団長がラスクの質問攻めを止めて、話しかけてきた。

「・・・あのさ、別に名乗ったりはしなくていいよ。ただ、魔物じゃないかどうかだけは確認してもいい?」

「は、はい・・・。」

自分は団長の要望に応えることにした。・・・ばれたら逃げよう。

「だ、団長・・・。いいんですか?名前聞いておかなくて。」

「名乗れない事情でもあるんだろう。あんまりむやみに聞くのもね・・・。」

「それで、団長。どうやって調べるんですか?」

「・・・魔物には紋章というものが体のどこかについてる。だからもしあったらその紋章の形を教えてくれ。魔物ごとに対処の仕方を変えなければいけないからな。あと、魔物とは関係ない紋章もあるし。」

「分かりました。・・・ちょっとこっち来てもらってもいい?」

「うん」

そう言って連れてこられたところは、脱衣所。そこで毛布をとって確認された。

「ん、あった。・・・これ、何の紋章?」

「分からないです。生まれた時からついていたし・・・。」

「・・・ちょっと団長に聞いてくるから待ってて。」

そう言って、ラスクは脱衣所を出た。・・・正直言って、この紋章は魔物と関係ないと思ったから、団長の要望に応じた。これ、妖狐の紋章じゃないし。

そんなことを考えていると、ラスクが戻って来た。笑顔で。

「どうやら、魔物とは関係ないって。よかったね。」

「はい。」

「・・・とりあえず、服着ようか。裸でいるのもなんだしさ。」

「で、でも借りるのはちょっと。汚したら迷惑かかりますし・・・」

「じゃあ、あげるわ。小さくて入んない服はたくさんあるから。・・・ね?」

「あ、は、はい。」

ラスクの強い押しに、自分はいいえと答えることができなかった。そして、自分は着せ替え人形のように何十着も着せ替えられた。

そして、一時間後・・・。

「うん。これがいいね。ぴったりだし。」

「じゃあこれにします。」

・・・やっと決まった。今の格好は、とあるゲームのミニスカートさんのような格好である。もう少し地味なものでいいんだけど、そんなこと言ったら、また何十着も着せられるだろう。それが嫌だから、これで妥協した。・・・それ以前に文句言える立場でもないし。

「じゃあ、団長の所に戻ろうか。」

「はい。」

自分達は脱衣所を出て、団長のいる部屋に戻った。

「団長。この子の服装、どうですか?」

「なかなかかわいいね。よかったね、服着せてもらって。今、ご飯用意しているから、ちょっと待っててね。」

「は、はい。」

・・・なんか、魔物の時と大して変わらないな。対応の仕方。服着せて、ご飯食べさせて。だから次は町の案内でもするのかな?あの村でも温泉とかに案内してくれたし。

そう考えていると、女の人がこっちに料理を持ってきてくれた。

「はいどうぞ。全部食べていいからね。」

そう言って置かれた料理は、すべて山盛りだった。しかも全部、肉料理。

「・・・余ったら、仲間たちに食べさせるから、心配はいらない。好きなように食べていいよ。」

「はい。・・・いただきます。」

自分はイスに座ってその料理を食べた。・・・・・・4分の1も減らずにお腹はいっぱいになった。

「・・・もうお腹いっぱいです。」

「そうか。じゃあ少し休んだら、町を観光してくるといいぞ。今日は祭りの日だしな。色々な出店があると思うぞ。」

「・・・あれ?今日は勇者さんの命日って誰かが言っていましたが?」

「ああ、そうだよ。その勇者さんが楽しい気持ちになれるようにだよ。」

「そうなんですか。でも場所が分からない・・・」

「案内は私がするね。私の名前はラスク・イルフィス。ラスクって呼んでね。」

「はい。ラスクさん。・・・自分、お金持ってないですけど・・・。」

「私が払うわ。欲しいものがあったら私に言ってね。買ってあげるから。」

「でも・・・。」

「子供に働いて返してなんて、言わないわ。さ、いきましょ。」

「は、はい。ありがとうございます。」

自分とラスクは少し休んでから、ギルドの部屋から出て、広場に行った。

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