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TIG〜トップアイドルは地味⁉︎〜  作者: トップアイドル
9/17

たとえ、世界が燃え尽きようとも


太陽の威光――つまり煌炎。

東京を襲う煌炎の波が、恐らい速度で生物を虐殺していく。

世界の終わり。まさにその光景。

地獄と化した東京を救える者はいない。


「助けて……誰か……」


少女が祈る。

ヒーローの救いを。

救世主の登場を。

だが、そんなものは存在しない。

煌炎が少女に迫る。

肌が焦げる。喉が焼ける。

死にゆく己を感じて、少女は瞳を閉じた。


「――大丈夫、聞こえたよ」


温かい声。煌炎のように熱くない。包み込むような温かさが少女の耳朶を撫でる。

瞳を開く。

背中があった。少年の背中が。


「……ヒーロー……」

「ヒーローじゃないよ。僕は――」


少年へ煌炎が襲いかかる。

だが、少年が腕を払っただけで、煌炎は瞬く間に消失する。

少年は少女に笑いかけて、煌炎の源――太陽へ、微笑みかけた。


「暴走しているんだね、太陽ちゃん。でと大丈夫、すぐに楽にしてあげる」


少年が腕を空に掲げた。

東京湾が蠢き、大量の海水が噴き上がる。少年の海水を思うままに操り、東京を覆う煌炎の消化を始めた。


「もう、いいんだ……太陽ちゃん」

『スベテシネスベテシネスベテシネ』

「苦しいよね。辛いよね。ごめんね、僕が君を不老不死にしたばかりに……」

『ァァァァァァァァア!!!!』

「あとは、僕が受け継ぐ。」


少年は詠う。太陽へ、救いの歌を。


〈夜空を見上げて、僕を見下ろす一等星〉


……ありがとう、ずっと見守ってくれて。


〈煌めく永遠の光。瞳を奪い、決して離さない〉


……永遠なんて、無いんだ。


〈あぁ、お姫様。どうして手が届かないの〉


……大丈夫、もう、届く。


『ァァァァァ……ぁ……あ……』


〈出会いはありふれたもの、街角ですれ違った二人。赤い糸を幻視した僕らは70億分の一の奇跡を起こした〉


『やめ……ァァァァァあ……』


〈ドキドキの毎日が愛おしくて、キラキラの毎日が楽しくて〉


『……か、……』


〈触れ合った手の温もりは灼熱の太陽。「僕らの愛が温暖化を加速させてしまうね」なんて冗談を言い合って、深まっていく仲、二人の恋仲〉


『……一、葵……さん……』

「僕と君が愛し合ってしまったから、こんな結果になってしまった……だから、僕が責任を取らなきゃいけないんだ」


少年――、一葵は白銀のマイクを握り締め、愛した太陽へ、想いを伝える。

お疲れ様。ゆっくり、眠ってね。と。


〈夜空を見上げて、僕を見下ろす一等星

潤う涙の光、瞳を濡らし、頬を伝い落ちる。あぁ、お姫様。……どこにも君は居ないんだね〉


そして世界は救われた。



ーーーーカチン、何かを叩く音。


「オッケーー!これで撮影は終わりでーす!一葵さんお疲れ様でした!」

「ふう。ありがとうございます。きっと最高の映画になりますね」


一葵初主演ハリウッド映画《炎を愛した男》はアカデミー作品賞に選ばれ、彼は《神如き者(ゴッドアイドル)》への一歩を踏み出した。



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