導かれる未来
兄はリュードさんと訪問すると言っていたが、やはり色々あったらしく映像で行われる国際会議で各国に説明したらしい。
ディギが突如多数の魔具と人で城を襲い、病床に伏せていた王女を殺害。リュードさんは片腕を失いながらも逃走。リュードさんの側近だったソウエンは、リュードさんを匿いながらもディギに忠誠を誓う仕草を見せて反逆のチャンスを狙っていたそうだ。
国王もリュードさんの生存を願いながらも魔具製造場を握られてしまい部下の安全の為には従う他なかったらしい。
ディギがついにトゥーダナ城に戦いを挑む作戦を立てたとき、これはチャンスだとリュードが指示し、ソウエンが不審な騎士を装い仕掛けの存在をアドバイスをしたらしい。
私の情報については、完全にディギを信用させる為に提供したものであり、妹を利用したといって過言ではない。本当は合わせる顔もない、とソウエンが語ったそうだ。
イ・ダナ国王がリュードさんに国王の座を譲り、平和条約にサインした今となっては少しでも兄の力になれたのかな、と嬉しささえ感じているのだが。
その会議の数日後にアルゼルと私は婚約発表をして正式な仲になった。ざわつく夜会の会場でさらに驚く発表がされた。
未だに髪が少し灰色のフレイがダリアと共にイ・ダナに派遣されるという事だった。
部屋に戻った後ダリアにどういう事か詰め寄ると、イ・ダナの復興などの手伝いをするのに魔力の高いフレイが選ばれて数年派遣される事になったと。
なんでそこに私の侍女のダリアが行くの?と聞くと、求婚されました、と赤い顔で白い誓いの刻まれた右手首を見せてくれた。
実は印を刻まれたのは大分前で、今回派遣の話が出たときに付いてきて欲しいと改めて申し込まれたそうだ。
大分前って…白いせいか全然気付かなかった…元々腕輪を着けていた位置でもあったのだが。
ダリアの手料理を食べられなくなるのは残念だが、彼女に幸せになって欲しい。おめでとう、行ってらっしゃいと言葉をかけた。
二年後
「わぁ、リオン待って!」
私はオリヅルの製作とリオンの子守りを担当している。
二歳になったリオンは既に走り回り、油断するとチョロチョロと中庭に紛れて消えてしまう。
「リオン!部屋に戻ってお菓子食べようよ。リオーン!」
ガサッと草むらが揺れたのでそちらを見ると、アルゼルがリオンの首根っこを掴んで持ち上げていた。
「んー!離せ、離せ!」
パリパリッと静電気が走ったのかアルゼルの髪が少し逆立つ。
「詩子を困らせるな坊主」
ポスッと私の腕にリオンを下ろす。抜け出そうとする彼を優しく抱き直すと大人しく収まった。
「最近すぐいなくなっちゃうの。もう私だけじゃ見れないかな~」
「お姉ちゃんがいい!」
「人を増やすって話だ。侍女長に話しておく」
「でも、もうお姉ちゃん取られちゃう」
「取られちゃう?誰に?」
「赤ちゃん」
アルゼルと私が固まる。
リオンは口を尖らせて拗ねている。
「…そういえば今月、来てないだろ」
「…うん。最近胃もたれ気味なのはもしかして…」
アルゼルがリオンを私から取り上げて片腕で抱き、もう片方の手で私を引っ張る。
「あー!お姉ちゃんがいい!」
「うるさい、詩子は安静だ」
「アルゼル、まだ確定した訳じゃ」
「すぐ医師を部屋に呼ぶ。お前はベッドから動くな」
ツカツカと前を歩くアルゼルの耳が少し赤い。
もし、本当に赤ちゃんが出来たならとても嬉しい。アルゼルなら絶対いい父親になれる。
中庭を振り返ると、いつか見た神々しい光のカーテンがフワフワと泳いでいた。
そうね。私もきっと、いい母親になれる。
指輪の光る左手を引かれながら、私は階段を登り始めた。
本編終了です。最後までお読み頂きありがとうございました。
次話にフレイとダリアのお話を上げました。では、また。




