初めての買い物3
「ガーティスは場所か背後の警備が多いから先導は慣れてないわよ。追いかけたら?騎士様」
楽しそうなリアーナにそう言われ、こっそり後をつけて正解だった。やはりガーティスは先導して対象者を守る警護は不慣れで、身長差の激しい二人の距離はどんどん遠くなる。
わたわたとしている様子に貧しい子供達に目をつけられたウタは、手に持った焼き菓子と城から配給された高級な帽子を呆気なく取られた。
直ぐ様影から駆け寄り、目立たたぬ様外していたマントを掛けて包み込む。小さく俺の名を呼び、おとなしく収まったウタの背をマント越しに少し叩いた。
落ち込むガーティスと共に自室に戻りウタを降ろす。マントを外すと、ガーティスより落ち込んだ表情をしていたので驚いて言葉が出なかった。
「ガーティスさんごめんなさい、私の不注意で怒られて…」
「何言ってんだ。俺が護衛が下手くそだから怒られたんだぞ。嬢ちゃんが謝る事はない。恐い思いさせちまってごめんな」
侍女のプレゼント置いておくよ、とガーティスはウタの部屋に入っていった。閉まる前のドアからは、やらかしたんでしょ!とフレイの声がした。
「大丈夫か」
「うん。帽子、ごめん」
「そんなのいくらでもあるから平気だ。ダリアへのプレゼント買えて良かったな」
励まそうと良い話題に持って行きたかったんだが、ウタは反して涙目になる。
「初給料でね」
「ん?」
「初めて自分で稼いだお金で、いつもお世話になってるダリアとアルゼルに何か買いたかったの。でもアルゼルのだけ買えなかった。ごめんね」
消え入りそうな笑顔で話すウタにどうしようもない程の愛しさを覚えた。本当に消えてしまわぬよう、優しく抱きしめて彼女の存在を感じる。
「次は俺と行こう。変装でもなんでもするから」
「…どこまで上級騎士のオーラを消せるか楽しみ」
「任せろ」
ふふ、と今度は楽しそうに笑うウタに触れるだけのキスをして彼女の部屋に戻った。
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「いやー凍死するかと思ったね」
「人には適材適所ってもんがあるのよ」
「二人がさっさと婚約発表でもすれば何処でも歩けるのにね~」
「え、二人は両想いなんですか?」
「「「はぁ?!」」」
「想いあってなかったら額にチューなんてしないわよ」
「…」
「フォルクス、まさかシノちゃんの事」
「城案内の時は喋れなかったけど話が通じるようになってから、あ~いいなって」
「お前すごい度胸だな。副団長様と取り合おうってのか」
「度胸があるというか色々感覚鈍いんでしょ。やめときなさい、あんたアルゼルに勝てるところないから」
「…そこまでいいます?」
「シノちゃんはアルゼルのお嫁さんだからダメだよ」
「だな」
「あんたには腐るほど女がいるけどアルゼルにとっての女はシノちゃんだけなの」
「…わかりました」
フォルクスはあっさり諦めるので今後揉めたりはしません。
基本主人公二人はべったりです。




