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希望の光

城の裏入り口まで戻ると、大分顔色の良くなったダリアが頭を下げていた。


「ダリア、もう平気?」

「皆様にご迷惑を掛けて本当に申し訳ありません」

「獣人の魔力が低い事を俺らが意識してなかったのが悪いんだよ。ほら、この城にいる獣人は魔力の強いソフィアさんだけだし。だから謝らないで」

「フレイの言う通りだ」


それでも落ち込んでいるダリアにお昼は私が作る、と提案すると一瞬嬉しそうにしたがすぐに、それは私の仕事です!といつものダリアに戻った。

私を部屋まで送る様にアルゼルから指示を受けると姿勢を正して二人に礼をし、城への扉を開けてくれた。


部屋に帰る道中、ダリアにこれから仕事の時は裏口まで送ってくれればいい、と話すとありがとう、と今度は素直に受け取ってくれた。よほど辛かったんだな…


階段を登り始めると降りてきた侍女さんがダリアに何か耳打ちした。深刻な顔をしていたが私と目が合うと小さく手を振りパタパタと小走りで下っていった。


「中庭に行きましょう、こちらへ」

「どうしたの?」

「アルゼル様狙いの貴族がズカズカと偉そうに権力を振りかざして部屋の前まで来てしまった。危ないのでシノにはまだ戻らないで欲しい、と言われました」


おぉ、それは怖いとルートを変えたダリアに付いていく。すれ違う侍女さんは次々とダリアに心配そうに話し掛け、ダリアは指で丸を作り返答していた。


「良かったですね、シノ」

「ん?」

「皆、あなたの身に危険が及ばぬよう配慮してくれています。アルゼル様のお相手として受け入れられてるという事ですよ」


それは嬉しい。けど、ダリアは私に刻まれた誓いを知りながら、誓い会える男性との出会いを優しく願った。あなたはどう思っているの?

花と人に溢れる中庭に着き、空いていたベンチに腰掛けると同時に私はダリアに詰め寄った。


「私はダリアに一番に受け入れて欲しい。ダリアは私とアルゼルの事どう思ってるの?」


勇気を振り絞り聞くと、ぽかんとした顔で固まった。

なんの事だ、という表情なので続ける。


「私にある誓いの事、ダリアは知ってたんだよね?私はアルゼルと誓い合いたい。他の男性は考えられない。アルゼルじゃ駄目かな?」


しばらく無言で見つめ合うと、ダリアがくすくす笑い出した。


「それ、私じゃなくてアルゼル様に言ってあげて下さい。聞いてる私が照れます」


そう言われて確かにとんでもない発言をしたな、と顔が熱くなる。回りの人に私の言語が伝わらなくて良かった…


「誓い合える男性に出会えるといい、と発言した事ですね。一応包帯で隠れていましたし、それを知った態度でアルゼル様との誓いを薦めるのは強制に繋がると思ったのです。他の方との道もある、という意味であってアルゼル様を否定した訳ではありませんよ」


ソフィアさんの言う通りだった。本人から改めて言われると少しもやもやしていた気持ちがパッと晴れた。


「侍女の命を受けてこちらへ飛んでいる途中、城から頂いたアルゼル様の資料を読んでいました。大陸中に絶対零度の騎士として名を轟かせていて、史上最強の魔術師フレイと共にイ・ダナから最も恐れられている存在だと」

「そうなんだ…」


「しかし婚約者はなく、女性との噂も浮上しない。そのせいでフレイさんと親密な関係なのではと一時期大変話題になったそうですよ」


今度は私が呆気に取られ、後に大爆笑した。アルゼルとフレイが!ぜひとも詳しく聞きたい!


「まぁそういう事なので、強くて女性関係も誠実なアルゼル様はとてもオススメです。シノが望むなら死ぬ気で手に入れても損はありません。ここに到着して、手を繋いだシノとアルゼル様を初めて見たときはお似合いすぎて見惚れました」


そう言って涙が出るほど笑っていた私にダリアはハンカチを差し出してくれた。

目頭を抑えて涙を拭きハンカチを返すと、ご心労お掛けしてすみません、と謝られた。

私こそ、いつも気に掛けてもらって…同い年なのにまるで母のように。

後半部分は伝えなかったがダリアは侍女ですからね、と誇らしげだった。


ダリア!と声がして二人で見上げると上層階の廊下の窓から侍女が顔を出し何かを叫んだ。ダリアを見ると、貴族を追い出す事に成功した様です、と立ち上がった。


「部屋に帰って仕事をしましょう」


ダリアは柔らかに微笑み、私もそれに答え立ち上がる。空から注ぐ神々しい光のカーテンを浴びると、仕事も恋もこの世界で上手くやっていける気がしてきた。



最愛の母がいなくても、私の専属騎士と専属侍女の元で、きっと。

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