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ダナレスの誓い

朝目が覚めると同時にダリアがドアをノックして朝御飯を運んできてくれた。魚の干物、玉子焼き、お漬物、葉物野菜のお浸しにお味噌汁、そして炊きたての白米。あまりにも完璧すぎる和食の再現に拍手した。

ダリアの分はあるのか聞くと、私が食べた後に自室で戴きますよ、と言うので一緒に食べようと誘った。ダリアは嬉しそうに快諾してくれたが、アルゼル様がいらっしゃらない時だけですよ、と付け足された。


「どうやらアルゼル様はシノと食事をするのを楽しみにしてるみたいだから」


え、と固まるとダリアは自分の分の食事を取りに部屋を出ていった。鏡を見ると、起きたてだというのに私の頬は少し赤い。


ダリアはすぐ戻ってきて、いただきましょう、とテーブルについた。ダリアが作った朝食は本当に美味しくて懐かしかった。ほんの数日食べてなかっただけだというのに。涙目で美味しいと言う度、ダリアはとても喜んでいた。




お昼前、第二騎士団のフォルクスさんという方が来て早速案内をしてくれた。だが、正直広すぎるし説明も多いので、早々にダリアにもう通訳しなくていいよ、と白旗宣言をした。

何十ヶ所目になったか、リアーナさんがいる魔石製造場についた。扉を開け私と目が合うと飛び付いて歓迎してくれた。


「****アルゼル*******~~」

「今日はアルゼルがいなくて寂しいわよね」

「**********?」

「私の胸に飛び込んでいいのよ」


リアーナのテンションとダリアの棒読みのギャップが激しくてこれにはかなり笑えた。

落ち着いた私に、仕事について話をしてくれた。

毎朝ソフィアさんとフレイのいる魔術師訓練場に行って魔法を吸収させてもらって、後は自室で折り鶴を折ってダリアに集計してもらうという流れになったみたいだ。

報酬はしばらく製造場の初任給になるけど、量を見てブランド化出来たら跳ね上がるわよ、とニコニコして教えてくれた。

その後も製造場の事を教えてもらっていたら、リアーナが急に窓へ走り出して顔を外に出してゲホゲホと咳き込んだ。背中を擦り様子を伺うと、タオルで口元を拭いながら何か言った。ダリアを見ると、つわりのようです、と心配そうに椅子を運んできた。


「リアーナ、結婚してたんだ!赤ちゃんおめでとう!」


ダリアが訳してくれると


「********♪」


す、と嬉しそうに、誇らしげに差し出した右手首には模様や色は違えど見たことのあるタトゥーのような印。今、まるで結婚指輪を見せるような動きじゃなかった?


「えっ…と、この印って…」


ダリアを見ると、なんだか気まずそうな顔をしている。リアーナはまた少し咳き込み、辛いのか遠くの景色を見てる。

フォルクスさんとリアーナに何か言ったあと、少し話しましょう、と中庭に移動した。



「ねぇダリア。私リアーナの手首にあった印、専属騎士契約って聞いてるんだけど合ってる?」


座りましょう、と花に囲まれた芝に誘われる。


「大体合っています。こちらではダナレスの誓いと言います」

「ダナレス?」

「この大陸を作った女神ダナと、その騎士アレスが交わした誓い。ダナとアレス、ダナアレス、ダナレス、となりました」


ダナって女神の名前だったのか。国名にも入ってるから重要な単語だとは思っていたけど。ファンタジーなこの世界の事だから、お伽噺ではなく本当にあった昔のお話、なのだろう。


「ダナは不老不死の神です。しかし女でもありました。彼女を女性として扱い、決して傷付くことを良しとせず守り抜いたのが大陸一の騎士アレスでした」

「素敵だね」


そうですね、アレスと出会ってからのダナはとても幸せだったと聞きます、とダリアの表情も和らぐ。


「アレスは結婚を申し出ますがダナは不老不死の神。いつか死んでしまうアレスに違う人の元へ行くよう促しました。そこでアレスが血と魔力を込めた誓いをします。


永久にあなたの傍に。私の全てを捧げると約束しよう。


ダナはそれに答えて同じく血と魔力を込め、アレスの右手首に誓いをたてました。」



ダリアからスラスラと話されるお伽噺のような昔話に聞き入る。…まさか。


「アレスが死期を迎えると、ダナも誓いを守り共に昇天しました。この美しい話を称え、この大陸ではダナレスの誓いと名付けた契約を婚姻の際結びます」


意識が右手首に集中する。私はアルゼルからとんでもない印をつけてもらってる…


「アルゼル様が専属騎士契約と言ったのはあながち間違いではありません。あなたの騎士になる、という意味では」


解約出来るのか、なんて聞く勇気がなかった。右手首に触れる左手の指先が震えてる。こんなに大事な印だなんて知らなかった。知らなかったけど…


「この誓いはお互いに印を付け合うことで正式に成立します。シノもいつか誓い合える男性に出会えるといいですね」


優しい笑顔を注ぐダリアに、うん、としか言えなかった。

私はアルゼルの手首に付けてないから今仮契約みたいなものなんだ…魔力ない私でも出来るのかな、と思った所で、なに本契約しようとしてんの私!と自分との葛藤が始まり体育座りした膝に顔を埋めた。



それを不安げに、でも優しく見つめていたダリアの顔を私は見れていない。

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