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自覚

アルゼルside

隣から随分と楽し気な声が聞こえる。ウタが明るくなって素直に嬉しい。異世界人が来た時に真っ先に注意するのが憂鬱になってしまう病だと資料で見た。俺以外の、同姓で気兼ねなく話せる相手が出来て本当に良かった。


フレイが処理してくれた書類に間違いがないか軽く確認し、明日は早いので侍女に軽食を頼み寝る準備をした。

月に一度ガーティスとペアを組んで五人一組の騎士達と稽古を取る。昇進に繋がる稽古でもあるから騎士は張り切る上、人数もかなりいるので朝から晩まで掛かるのが常だ。フレイは審査と俺達の回復を担当する。

本当は俺がウタの城内案内をしたかったのだが、こればかりは仕方がない。第二の団長に通信機で話をつけ、侍女が持ってきた軽食を食べる。サンドイッチの様なものだが、パンではなく何か弾力のある生地で色んな具が挟まっている。城下町で流行ってるんですよ、と言われ一口食べると確かに上手かったので店を聞いてから下がらせた。

自然とウタの顔が浮かび連れていく事を想像していた。吊られて先程つい口付けしようとしてしまった事を思い出し、食べていた手が止まる。


俺は、ウタが好きなんだろう。


好きとは何かが違う気がするが、体と頭は彼女を求める。これで好意を持っていないとは言えるはずもない。

そうなると異世界人の彼女にダナレスの誓いをわかりやすく専属騎士契約と説明したのは失敗だったかもしれない。

いつウタに本当の事を話すか…そう考えているとノックの音が響き、ダリアです、と声がした。入室させると、ウタが入浴中だそうで明日の俺の予定を聞きに来たそうだ。明日は一日城下町にある競技場を貸し切っての稽古で早朝から夜まで城にはいない、と話す。


「そうですか、残念です。朝食や昼食をアルゼル様と共に、と思ったのですが。」


ぴく、と反応する。

それと、とダリアの質問が続く。


「ダナレスの誓いをシノ様に刻んだようですが、どの様なご心境で」


ぐ、と食べ物が喉に詰まりそうになり飲み物で押し流す。


「っ何故わかった」

「一応獣人ですので血の匂いに敏感でして。契約から日数が経っていないと包帯をしていても手首から香ります。それで?」

「…ダナレスの誓い通りに俺は事を進めた。それだけだ。ただ異世界人の彼女に理解するのはまだ難しいと判断して誓いの話はしていない」


それを聞くと少し呆れた様子だったが誓い通りの想いで進めたなら良いのです、と微笑みダリアは部屋を出た。

それとほぼ同時にウタの部屋に繋がるドアからノックが聞こえたので歩みより開ける。火照った顔でにこっと微笑まれ胸が高鳴る。差し出された手をとると、ダリアいる?と言われ求めてたのは自分じゃなかったか、と少し残念に思う。


「ダリアなら今部屋を出た」

「そっか。お風呂から出たら声掛けてって言われてたから外に顔出したら他の侍女さんにアルゼルの部屋を指差されたから…ありがとう」

「いや。明日なんだが早朝から夜まで俺は城にいないから案内してもらったらなるべく部屋に居てくれ」


わかった、と返事をしたウタを引き寄せ額に口付けをする。顔を更に赤らめて少しムッとしたウタはかなり可愛い。


「朝早いので寝る。おやすみ」

『…おやしみ』


手を離してそう言うとウタは扉の奥へと戻っていった。少しすると喋り声が聞こえカチャカチャと食器の音がし始めたのであちらは夕食なのだろう。

いつも静寂の中仕事のことを考えながら寝に落ちていたが、彼女の存在を感じながら寝に入るのはなかなか悪くない。そう思いながら明かりを消し、目を閉じた。

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