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山岡高校声優部  作者: 影山蓮人
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プロローグ

  『貴様に何が分かる! なんど努力して挑んでも叩き潰されてずたずたになった時の気持ちが貴様にわかるのか!』


  テレビから昨日放送されたアニメが流れる。


  『・・・・・・お前は努力をしたというが、叩き潰される程度の努力しかしてこなかった結果だろう? それを棚に上げて何を言っているんだ』


  『っー! 貴様・・・』


  『努力というのは自分が満足したから良いと言う物では無い。自分が満足したら、それよりもさらに高い目標を見つけて一万時間以上自分に厳しく、目的の為に勉強をしたり練習した者だけが努力したと言えるんだ。お前がして来たものは努力なんかじゃない。お遊びだ』


  「くーっ! 奏風くん今週もかっこいい!!」

  テレビのリモコンを握りしめて画面を見つめる。

  今、私が見ているのは「無限無双のファントムキル」というアニメだ。ライトノベルが元になっていて、若い男性がターゲットの為、女子が興奮するような恋愛要素はあまり無いがその分戦闘シーンが多い。

  今私が見ていたシーンも主人公である闇屋奏風くんがライバルを倒し、彼に冷たい一言を発しているシーンだ。奏風くんは一見、とても冷たい言葉を発しているようだが彼は彼なりにライバルに前を向いて欲しいからこんな風に言っているんだ。

  要するに、意地っ張りのツンデレと言うことだ。

  そして、奏風くんはなかなかいい言葉を言っているなと感じた。

  「美羽〜! 遅刻するよ〜」

  下の階からお母さんの声が聞こえる。

  テレビの右下にある時間を確認すれば時刻は8時。

  「うわぁあ! こんな時間! 今行きまーす!」

  急いでファントムキルを止めて通学カバンを手に持ち下に駆け下りた。

  そして、階段の中間のあたりまで降りて忘れ物がある事に気づき、降りたばかりの階段を駆け上がる。

  「っとっと、どこだっけ、どこだっけ、」

  高さが床から天井まであり、幅がドアぐらいの少し大きめの本棚を隅から隅まで見る。

  「美羽ー?」

  お母さんが、階段のところで私を呼んでいる。

  「うわぁあ、ごめんなさい! ちょっとまって--」

  ドアから少し顔を出して、お母さんにいうと、お母さんは「またぁ?」と呆れたように言う。

  指で1冊1冊丁寧に背表紙の名前を確認すると

  「あ、あった!」

  ようやく見つけたお目当ての本を手に取る。

  「ごめんなさい、お母さん」

  「早くしなさい? 遅れるわよ?」

  スクールバックを抱きしめてその中にさっき本棚から抜き取ったお目当ての


  ライトノベルという名前の台本と「入部届け」と書かれた紙を入れて私は階段を駆け下りた。


  「美羽ー」

  玄関へ向けて走っているとリビングからお姉ちゃんが私を見て呼び掛ける。

  「はーい!」

  スクールバックを隣において玄関でローファーを履きながら振り返るとお姉ちゃんは

  「後、めくれてるよ?」

  そう言いながら、意地の悪い顔で私を見ていた。



  「美羽は毎週忙しそうだよねー」

  チャイム直前に教室へと走り込んで机の上で軽く死にかけている私を前の席に座る友達の花奈ちゃんがからかった様に言う。

  「・・・・・・」

  もう、彼女の言葉に返す気力も無くただただ机に突っ伏す。

  1キロ近くある道を走って来たのだ。インドア派の私にはキツすぎる。

  「ふんふん・・・・・・・・・あ、奏風が--」

  「奏風くん!?」

  「美羽は面白いなぁ」

  奏風という単語に反応して素早く顔を上げた私を見て花奈ちゃんはケラケラと笑う。

  「騙したなー」

  周りを見渡して奏風くんがいないことが分かると、私は花奈ちゃんをジト目で見る。

  すると花奈ちゃんはお腹を抱えながら笑い転げていた。

  「美羽の奏風依存が凄すぎるんだよー! さっきの、結構ちっさい声で言ったのに聞こえてるとか凄いよ、ほんとあははは」

  「笑い事じゃ、ないもん」

  よく通る綺麗な声で笑う花奈ちゃんは美少女だ。

  だから、クラスの男子が花奈ちゃんを見つめてる。

  羨ましい。

  美貌も持っていて、綺麗な声も持っていて、フレンドリーな花奈ちゃん。私が持っていないものを全部持っている。

  声なんて、私が何よりも欲しいと思っているものだ。

  「やっぱり美羽は私の最高の友達だ!」

  笑い疲れたように少し息を切らして私の目の前にある席に座りながら花奈ちゃんが言う。

  嬉しい。

  花奈ちゃんは私の憧れなんだ。花奈ちゃんは何でも持っている。だから、彼女には私の先を走っていてもらいたい。彼女の背中を追いかけたい。

  だから私は満面の笑みで心のそこから、


  「うんっ!」


  と叫ぶのだった。

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