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地獄ノ女王  作者: 夜魅
6/35

5人目 真宮 紗羅


 幼なじみに好きな人が出来た。

 私は幼なじみの水田(みずた)(つかさ)といつも一緒だった。

 生まれた時から家が近かったし、親同士が仲がいいというのもあり、小さい頃からなんでも一緒にするのが当たり前になっていた。

 あの日までは──…




─────────…




紗羅(さら)、俺…好きな人ができた」

 赤面しながら幼なじみの水田司が私に言ってきた。司の好きな人は後藤(ごとう)立夏(りっか)という子だった。私とは正反対のおしとやかな子だった。

 司は立夏ちゃんにすぐ告白した。返事はオッケーでその日から付き合い始めた。私の心の中にポッカリと穴が空いてしまった。




───────────…




「紗羅ー、親戚の人からとうもろこしいっぱいもらっちゃったから、司くんの家に届けてきてー。」

「えっ」

 司と立夏ちゃんが付き合うようになってから司の家になんか行かなくなっていた。付き合う前は頻繁に行ってたけど…。

「やだよー。お母さんいってきなよー」

 お母さんは「夕飯の支度あるから無理よー」と言った。

 結局行く羽目になった。まぁ、すぐ渡して帰ろう。




─────────…




 3カ月ぶりに司の家に来た。

(すぐ渡して帰ろう。おばさん居るかな。)

 呼び鈴を鳴らした。

「はーい!」

 足音がどんどん近づいてきた。

 ガチャっと共に司の家のドアが開いた。私は目を疑った。

「あれ、紗羅ちゃん!」

「あ、立夏ちゃん…」

 なんで立夏ちゃんが出てくるの…?

 立夏ちゃんの後ろから足音が聞こえてきた。

「あ、紗羅!どうしたんだ?」

 エプロンをした司が出てきた。

「えっと、親戚の人からとうもろこしいっぱいもらっちゃったから司の家に…ってお母さんが…」

「そうか、ありがとなー。」

「ふ、二人は何してたの?」

 そう私が聞くと司が答えてくれた。

「今日親が帰ってくるの遅いから2人でご飯食べようと思って、だから俺が振る舞うことにしたんだ」

 …男のクセに慣れないことやって。私の時は全部私がやってたのに。

「で、手離せなくて私が出たの!」

 立夏ちゃんが笑顔で答えた。二人とも幸せそうだった。

「そ、そっか。私もそろそろ夕飯だから帰るね。」

「おう!気をつけろよ?」

 前は送ってくれてたのに…。

「うん、またね」

「紗羅ちゃん、またね!」

 立夏ちゃんの笑顔が嫌いになった。




──────────…




 地獄ノ女王ことミヤは大きな水晶を見て、ため息をついていた。

「…執事。女って怖いよね」

「お嬢様も一応、女性ですよ…」

 その言葉にミヤは「一応ってなによー」と答えた。

「でも次の犠牲者は結構いいかも♪」

 



─────────…




 次の日、学校に救急車が来た。みんな、なぜ救急車が来たのかと大騒ぎになっていた。

「ねぇ、紗羅聞いた?」

 同じクラスの友達が話しかけてきた。

「なにが?」

「救急車で運ばれたの…後藤立夏だって。」

 時が止まったような気がした。司はどうしているのだろう。病院に行ったのかな。

「司は…?」

「先生たちと話してる。第一発見者らしいし…可哀想だよね自分の彼女が…」




──────────…




 後藤立夏は意識不明の重体らしい。今日の夜メールで聞いてみたら、そう返ってきた。後藤立夏は人通りの少ない階段の前で倒れていたらしい。

 後藤立夏がトイレに行ってくると言ったきり戻ってくるのが遅過ぎると思い、司が探していたら見つけたと言っていた。

 その次の日から司も学校に来なくなった。何日も何日も休んでる司に対して皆心配し、メールを送ったり家に行ったらしいが素っ気ない態度で対応している司に対して不満を持つ人が出てきて、とうとう誰も司に対して心配しなくなった。私を除いては──。

 そして、私は今日も学校帰りに司の家に寄っていた。

「司」と呼び、司の部屋を二回ノックする。それでも返事は返ってこない。

「…今日のプリント置いとくね」

 私が帰ろうとした時だった。ガチャっと言う音と共に司の部屋のドアが開いた。およそ一ヶ月ぶりに見る司の顔はやつれていた。

「司…」

「紗羅…毎日ありがとう。」

「じゃあ」と言いドアを閉めようとする司に対して「待って!」と私は言った。

「学校行こう…?辛いかもしれないけど、立夏ちゃんもきっとそれを望んでいるはずだよ…」

「立夏が…。」

 立夏ちゃんはまだ意識不明の重体だった。およそ一ヶ月たった今でも意識は戻っていなかった。




──────────…




 次の日、いつものように学校に行こうと思い、玄関を出たら見覚えのある面影が立っていた。

「おはよ、紗羅」

「司…!」

 私は司のとこに駆け寄った。

「今までごめんな」

「ううん!よかった、司が…。」

 司は「ありがとな」と言い、私の頭の上にポンッと手を置いた。

 それから毎日一緒に学校に行くようになった。学校が終わったら、2人で立夏ちゃんの所に行った。

 立夏ちゃんは目を覚まさない。機械音が病室に響くだけだった。

「紗羅、飲み物買ってくるけど、なに飲みたい?」

「お茶で」

 司は飲み物買いに行くといい、立夏ちゃんの病室には私と目を覚まさない立夏ちゃんだけになった。

「……つらいよね?なんで…死ななかったの?」

 ピッピッと音が病室に響く。

「今、楽にしてあげる。そしたら司も幸せになるから…ね?」

 機会のスイッチをoffにしたら、みんな幸せになる。立夏ちゃんは楽になり、司は悲しむかもしれないけど、私がいるから大丈夫───…。スイッチまで後、1cm…



「ダメだよ、お姉さん」



 聞き覚えのない声が響いた。

「だ、誰!?」

「ここだよ」

 私が後ろを振り向くと小さな女の子が立っていた。真っ黒なドレスのようなものを着ていた。まるでどこかのお嬢様みたい…。

「り、立夏ちゃんの妹?それとも親戚?」

「私、ミヤって言うの!まぁ、知り合いかな?」

 ミヤという女の子は、立夏ちゃんの顔を見て「…お姉さん、またねー!」といい病室から出ていった。

 それと入れ替わりに司が戻ってきた。

 面会時間が終わりに近づいてきたので、結局飲み物には口をつけずに帰った。




─────────…




『立夏が目を覚ました…!』

 救急車で運ばれて3ヶ月経っていた。その日の朝一に司からメールが来ていた。内容を見た途端、金づちかなにかで頭を叩かれた気分だった。

 その日の朝も司と登校したが「早く立夏に会いたい」だの「放課後にならないかな」だの浮かれていた。

 私は今日の放課後は用事があるから病院に行けないと嘘を言った。

 なんであのまま死ななかったのよ…!それだけが引っかかる。




────────…




 立夏ちゃんの回復は医者がびっくりするほど早かった。

 目を覚ましてから僅か一週間で学校に登校出来るくらいだった。

 今日の朝からは司は立夏ちゃんと登校していた。とても嬉しそうだった。

「あ、紗羅ちゃん!」

 立夏ちゃんがうちのクラスに来た。

「り、立夏ちゃん。退院おめでとう」

「ありがとう!あのね、ちょっと話しあるんだけどいいかな?」

「いいけど…」

 立夏ちゃんは私を連れて歩いていく。着いた場所は立夏ちゃんが倒れていた人通りの少ない階段だった。

「どうしたの?」

「司くん、好きだったんでしょ?だから私を突き落として殺そうとしたんだよね?」

 立夏ちゃんは微笑む。

「けどね、私も司くんが好きなの。落とされたときはショックだったなー。」

「…」

「病室で私を殺そうとしたもんね?知り合いの子が教えてくれたよ」

 知り合いの子…ミヤって子かな。

「私も同じことをしてあげる」

「え?」

「私と同じ味わいをしてね?紗羅ちゃん!」

 ドンっと階段から突き落とされた。

 最後に見たのは立夏ちゃんの歪んだ微笑みだった──…。




───────────…




 ここはどこ…?

「お姉さん、やっと目が覚めた?」

 聞き覚えのある声…。

「ミヤ…ちゃん?」

「正解♪じゃあ、ここはどこだと思う?」

「わ、わかんない」

「ここはね、地獄なんだよ?」

 地獄…?そっか、私は人を殺そうとしたからだ。だから天国に行けず地獄に来たんだ…。

「でもね、今日はお姉さんだけじゃないんだよ?」

「え?」

 ミヤは「このお姉さんも今日地獄に来たのー!」と言い横たわっている見覚えのある面影を指さした。

「り、立夏ちゃん!?なんで…」

「お姉さんはこのお姉さんを殺そうとした。だから私このお姉さんに協力してたの!お姉さんは二回も殺されそうになったんだよーって!けどね?最終的にはこのお姉さんもお姉さんを殺そうとした…結局お姉さんは打ちどころ悪くて死んじゃったけどね♪」

「じゃあ、立夏ちゃんはなんで死んで地獄に…」

「地獄に来た理由はこのお姉さんは最終的には人殺しになってしまったから。そして死んだ理由は殺されたから」

「立夏ちゃんは誰に殺されたの!?」

「…お姉さんの好きだった水田司だよ」

 司が!?

「お姉さんが殺されたのを見てたみたい。そして、そのままこのお姉さんも殺されてしまった…。どんなに大好きな彼女が大切な幼なじみを殺すのを許せなかったみたい。」

「司はどうなったの…!?」

 紗羅とミヤの隣にある大きな水晶が光る。そこには友達と笑っている司が映っていた。

「お姉さんもこのお姉さんも事故死と判断されてるから、殺人事件とは知らないで世間に伝わってるらしいね。けど、あのお兄さんも死んだら地獄に来るよ。人殺しをしてしまったもの…。」

 司が私の仇をうって人殺しをしてしまったんだ…。

「お姉さん、地獄に来てもいくつかの道があるの。まぁ、大きく分けて二つかな?」

「二つ?」

「一つはなんだかの罪を償い、生き変わる道。もう一つは一生生き変わりも出来ずに苦しみ道。お姉さんは生き変わる道に行けるんだよ。このお姉さんは行けないけど。」

 私、生き変われるんだ。

「このお姉さんの場合。他にもちょっと厄介な事件を起こしてたらしいから。」

「どんなの?」

「それは教えれないよ」とミヤは笑う。

「さぁ、お姉さん。もう少しでお迎えが来るから」

 紗羅は「ありがとう…」とミヤに一言言った。




───────────…




【地獄ノ女王所有物部屋】のプレートが大きく揺れた。

「最初のターゲットと違いますよね?」

 執事の問にミヤは答える。

「どっちかって言うと立夏って言う人の方が醜かったし、紗羅って言う方は私と相性が悪そうだったからやめただけ」

 執事は「そうでございますか」と言い、これ以上の詮索はやめようと思った。

立夏を殺そうとしたが殺せなかった。

本来なら紗羅も犠牲者にするはずのミヤだが立夏の方が犠牲者に向いてると思ったんです。

立夏は大人しそうな子ですが実は何人のもの男の人と付き合ってたという設定になっています(話の中では書きませんでしたが)

その次は立夏が紗羅を殺して…偶然、司が見てしまい、司は大好きだった立夏を殺しました。

立夏の事は大好きだったんですが司の心には紗羅の方がきっと大切だったんでしょうね。

でも、司も地獄行きは免れなくなりました。

司と紗羅はもう会えることはないのだろうか…?

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